事業の拡大に合わせて役員を増やしたり体制変更を検討することは、経験の浅い経営者にとっては重要な問題です。
本記事では役員変更において発生頻度の高い意思決定を例にそのメリット・デメリットを紹介したいと思います。実際の意思決定をするシーンで少しでも参考になれば幸いです。
※役員変更においては正確には監査役や会計参与といった役職も含みますが、本記事では「取締役」を対象にします。
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役員(取締役)変更にまつわるお悩み
事業の拡大に合わせて役員を増やしたり体制変更の検討している場合、こんな悩みや考え事はありませんか?
- 役員陣はどんな人数構成にするべき?誰を役員にすべき?
- 役員変更ってどのタイミングで実行するべき?
- 役員報酬の決め方は?
- 社外取締役ってよく聞くけど、どんなときに必要になる?
- 役員変更の登記はいつやるべき?
周囲に経験豊富な先輩経営者がいるならともかく、これらは重要な上に、一度決めたら戻すのが難しいという特性があります。これらを検討する上でどんなポイントを押さえるべきか紹介します。
役員(取締役)変更に関わる意思決定の種類
ひとことで「役員変更」といっても変更しようと思ってから完了するまでにはいくつかのステップがあります。まずこのステップの中で生じる意思決定のタイミングについて整理してみました
大きく分けると以下の2つに分けられます。
1)誰を役員(取締役)にするか?
取締役(社外取締役も含む)の人選、人数、報酬、など
2)役員(取締役)変更をどうやるか?
役員(取締役)変更のタイミング、任期、社内での手続きや役員変更登記のやり方について
特徴としては、2)は過去の事例などテクニック面で参考にできる情報があります。その反面、1)は個々の会社の状況に即した決定が必要で、特に人選については一度決めたら一定期間は後戻りできないという要素があります。
では、この2つに沿って具体的な意思決定ポイントと注意点を紹介します。
誰を役員(取締役)にするか?
役員の人選について
仲のいい人、気心知れた人を役員(取締役)にする
メリット:会社設立の前提や価値観、今までの経験を共有できていることが多く、コミュニケーションコストが少なく済む。
デメリット:代表取締役(社長)と取締役の立場の違い、権限や会社の意思決定のルール、などを初期段階から合意しておかないと方針や考え方に相違が出てきたときに揉めてしまう可能性がある。最悪の場合会社が分裂してしまう可能性もある。
先輩やお世話になった人を役員にする
メリット:問題や困難な状況に直面したときに経験量を背景にしたアドバイスや解決方法が得られる可能性がある。
デメリット:今までの関係性を引きずってしまい、会社における位置関係が定まらない。最悪の場合、決めた方針を実行してくれなかったり、統制が取れなくなる可能性がある。辞任や退任などの出口のコントロールが難しくなる。
後輩やイエスマンを役員にする
メリット:代表取締役(社長)が決めた方針に対してすぐ動き出せる。大きな決定をする場合の説得などのコストが少なくて済む。辞任や退任などの出口のコントロールがしやすい。
デメリット:代表取締役(社長)が言っていること以上の意見の多様性がなくなり役員全体の能力の限界(=会社の限界)を迎えやすくなってしまう。事業が順調なときは問題ないが、大きな方針転換が必要なときに問題になりやすい。
家族を役員(取締役)にする
メリット:会社を設立したばかりでどうなるかわからないタイミングでも、家族としての信頼があるので役員(取締役)を引き受けてもらいやすい。特に設立時の出資と合わせて役員(取締役)になってもらうのはスピーディに会社を立ち上げられる。
デメリット:特に経営の経験があるわけでない家族の場合は、会社経営においてバリューが発揮できない可能性がある。
役員(取締役)の人数について
役員(取締役)の人数を多くする
メリット:役員間の議論などにおいて多様性が持てる。得意分野やバックグラウンドがさまざまなメンバー構成にすることで、事業内容に幅を持たせたり、新規事業が進めやすくなる。
デメリット:役員(取締役)の人数分、さまざまな費用がかかってしまう。経営方針の浸透、決めたことの実行段階で時間や手間がかかってしまう可能性がある。ひとりあたりの責任が薄れてしまい緊張感がなくなる。
役員(取締役)の人数を少なくする
メリット:会社の方針決定に合わせて迅速に実行に移せる。役員以下従業員への意思の浸透が早い。担当領域の責任をそれぞれの役員にもたせやすい。
デメリット:人材の流動性がなくなり、役員(取締役)の立場を維持するために社長(代表取締役)のイエスマンが増えてしまう可能性がある。
役員(取締役)の解任について
成果の芳しくない役員(取締役)を解任する
メリット:解任する役員(取締役)の代わりとなる従業員を昇進させられる。組織の若返り感や信賞必罰のイメージを社内に与えられる。
デメリット:解任による会社のイメージダウン、解任後に訴訟や損害賠償を求められる可能性がある。
役員報酬について
役員報酬を高く設定する
メリット:役員本人のモチベーションが上がり、社員からみてもモチベーションが上がる可能性がある。
デメリット:役員報酬は一度設定するとその事業年度中は変更できない(ただし、事業年度の開始日から3ヶ月以内は変更可能)ため、業績に合わせた機動的な報酬や社員の評価制度と連動させづらい。
役員(取締役)の任期について
役員(取締役)の任期を長くする(最長10年まで延長できる)
メリット:任期満了後、重任(再任)する時の登記が不要になる。役員本人から見ると任期に合わせて長期的な視点で経営に当たることができる。
デメリット:一度任期を設定したら基本的にはその期間は全うしてもらう前提になる。解任や自主的な辞任も可能だが、本人との間で紛争や損害賠償を求められるといったリスクも増加する。
また、役員陣が固定されすぎてしまい、従業員からみて風通しの悪さや昇進の可能性が低いと思われてしまう可能性がある。
社外取締役について
社外取締役を設ける
メリット:社外の第三者が役員(取締役)になることで、社内とは違った視点で経営の妥当性の判断ができる。
取引先や株主に対して、会社が客観的な視点を持っていることや、ステークホルダーに留意した経営をしているという印象を与えられる。
デメリット:役員(取締役)の人数が増える分、報酬や手続きなどで手間や費用がかかってしまう。
取締役会について
取締役会を設置するか
取締役会は公開会社や取締役会設置会社において必要な意思決定機関です。取締役会設置会社では3名以上の取締役を置く必要があります。将来上場を視野に入れている会社では基本的に取締役会の設置が必要になります。
メリット:会社の方針や業務執行の意思決定が早くなり、対外的にもガバナンスが効いている会社とみなされ信用度が上がる。将来想定される機関変更(上場や監査役会設置会社への変更)時にスムーズに手続きができる。
デメリット:役員(取締役)の総数が増える場合は報酬の負担が増える。会社の重要な決定について、取締役会と株主の決定権が変わるため、株主から見て決議できる事項が制限される。
参考)役員変更時の社内手続きについて
役員変更の社内における手続きは法律で定められており、他の意思決定と違い基本的には他の選択肢はありません。
取締役や監査役:株主総会の決議で決定する
代表取締役:取締役会の決議で決定する
法律上の役員ではない執行役員などは特に決まりはありません。
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