株式会社における役員変更といえば一般的に想起されるのは「就任(新任)」「退任」「重任(再任)」「辞任」といった種類でしょう。
ただし、変更の種類としてはこれらの他に「解任」というものがあります。
解任は上記の役員変更の手続きの中では発生頻度が低く、手続きの手間を考えるとできればやりたくない手段なだけに、いざ発生するとどうしたら良いかわからないという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、解任の場合も他の役員変更と同じように変更が生じたら2週間以内の法務局への登記申請が必要です。
本記事では、役員のうち、取締役解任に伴い役員変更の登記が必要になった場合に、どんな手続きが必要なのか調べている方向けに役員解任の基礎知識から手続きの詳細、かかる費用や時間を紹介します。
監査役については別記事でご紹介します。
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株式会社における役員(取締役)の解任とは?
会社の役員(取締役)は従業員とは異なり、定められた任期の期間中にその責任を果たすために株主に委任されています。任期中に何らかの理由で、委任した側からその任を解くことを「解任」といいます。
任期中に役員でなくなるという点では「辞任」に近いですが、本人の同意や申し出は不要で、取締役の場合は株主総会の普通決議(議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う)すれば解任できます。そこまでして解任する必要があるという点で、トラブルや特殊な理由が背景にある場合もあります。
どちらにしても、任期満了による退任や、役員本人の申し出による辞任に比べると、理由や背景が複雑で後々にトラブルとなってしまう可能性もあり役員変更の中でももっとも注意が必要な手続きといえます。
役員(取締役)を解任する理由、背景
上述したとおり、解任は株主総会で決議ができれば、解任される役員の同意や申し出は不要です。ただし、手続きやコミュニケーションの手間や、正当な理由なく解任することで役員本人からの損害賠償リスクなどを考えると明確な理由が必要です。
会社法第339条2項でも「解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。」と定められています。
では正当な理由とはどんなことなのでしょうか?
以下のようなものが考えられます。
- 健康上の理由で役員が続けられず、役員本人から辞任の申し出もできない
- 不正な行為や法令違反をした場合(横領などの不正はもちろん、セクハラやパワハラのような行為も該当する場合があります)
- 会社に大きな損害を与えてしまった場合
- 経営方針が対立してしまい、会社の決めた方向性でのマネジメントやコントロールが効かなくなってしまい、改善の見込みがない
- 役員としての能力不足により期待された成果が発揮できない
- 急激な外部環境や業績の変化により、事業内容や役員体制を迅速に見直す必要がある
これらを踏まえると以下のような理由だけでは正当な理由とみなされない可能性があります。
- 役員体制、人選を間違ってしまったと感じたので入れ替えたい
- 代表と一時的な口論になってしまった。他の役員ともそりが合わない。
- 短期的に業績が下がってしまったので、役員を減らして報酬にかかる費用を減らしたい
いずれにしても解任できる条件や理由そのものが法律で定められているわけではありませんので、過去の例や個別事情なども含めて検討が必要です。
解任以外の役員(取締役)変更の種類
役員変更には、解任のほかにも様々な種類があります。株主総会の決議が必要となる場合が多いですが、役員変更の種類によっては手続きが異なりますので注意しましょう。
就任(新任)
今まで役員でなかった人が新しく役員になることをいいます。
「就任」と「新任」は似たような単語で同じ意味合いで使われることも多いです。
関連記事:株式会社の役員就任(新任)登記申請ガイド〜役員変更の種類から申請方法、必要書類、費用までを完全解説します
重任(再任)
任期満了後に再び就任するケースで再任とも呼ばれます。取締役は通常2年、監査役は通常4年の任期(ともに非公開会社の場合は10年までの伸長が可能)と定められており、任期満了後も再び就任する場合は重任の登記が必要になります。
関連記事:株式会社の役員重任ガイド~役員重任の基礎知識から役員重任登記までの必要手続きを徹底解説します
退任(任期満了)
当初の任期を満了して役員から外れるケースです。取締役は通常2年、監査役は通常4年の任期(ともに非公開会社の場合は10年までの伸長が可能)と定められており、任期が満了し、再度選任されないと退任することになります。
関連記事:株式会社の役員退任ガイド~役員退任の基礎知識から役員退任登記までの必要手続きを徹底解説します
辞任
役員本人からの辞任の申し出により役員から外れます。役員自らの意思で辞任できるため、辞任の場合は株主総会での決議は不要です。(ただし、辞任により役員の員数に不足が出る場合は新しい役員の就任が必要となることがあります。)
関連記事:株式会社の役員辞任登記申請ガイド〜基礎知識から辞任届、必要書類、費用までを詳しく解説します
死亡
役員が任期中に死亡するケースも中にはあります。その場合は死亡による登記が必要となります。存命中であれば健康悪化等を理由に辞任することも多いですが、急病や事故といった場合に死亡による登記が必要となることがあります。
役員(取締役・監査役)の解任にともなう損害賠償に注意。可能なら「辞任」にしたほうが良い
役員の解任においてもっとも注意が必要なのが、損害賠償リスクです。
会社と取締役の関係は民法上の委任関係とされており、民法では委任の解除を不利な時期にしたときは、損害を賠償しなければならないと規定されています。そのため、解任のタイミングや理由によっては解任した役員から損賠賠償を請求される可能性があります。
これらを踏まえると、可能であれば解任ではなく本人からの申し出による辞任にする方が有利です。
辞任であれば役員本人からの申し出のみで株主総会の決議も不要、本人からの申し出なので納得感もあります。また、登記簿謄本(登記事項証明書)にも「解任」か「辞任」は記載されますので社外からの見られ方や印象にも影響します。
解任後の役員の員数にも注意しましょう
役員(取締役)の解任や辞任はいつでもできますが、辞任後の役員構成にも注意が必要です。会社の定款には取締役の員数が定められていることが多く、辞任によって欠員が出る場合、後任の取締役を決める必要があるからです。
もし員数以上の取締役がいるなら問題ありませんが、欠員が出てしまうことがわかっている場合は、事前に会社に相談するなど後任の人選も合わせて検討する必要があります。
以上の点から、現実的には役員の解任は代表者や株主の一存で行われるというよりは周囲への共有や準備も必要な手続きともいえます。
役員(取締役・監査役)を解任したら変更登記申請が必要です
役員の解任を株主総会で決議したら登記申請が必要になります。
後任を決めたり、解任に伴う引き継ぎなどで慌ただしくなりますが、登記申請は解任後2週間以内に行う必要があるので失念してしまわないよう注意しましょう。
解任に関しても、他の役員変更と同じように決議をしただけでは対外的に効力発生を主張できない場合があります。登記申請することで登記簿に反映され、社外からでも役員変更があったことを確認できるようになります。
登記申請は、解任はもちろん、役員就任(新任)、重任(再任)や退任、辞任など、役員変更であれば必ず必要なので忘れずに手続きしましょう。
役員(取締役)解任の登記申請に必要な書類
役員(取締役)解任の登記申請では、登記申請書を含め以下の添付書類が必要です。
※なお、役員変更の登記申請書様式(フォーマット)は法務局のWebサイトからダウンロードできます。
- 役員変更の登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 委任状(代理人である司法書士が申請する場合)
解任のみの場合は上記書類のみですが、後任の役員の就任の就任(新任)登記を同時に行う場合、以下の書類が必要になります。
役員(監査役)解任の登記申請に必要な書類は別記事で紹介します。
後任の役員(取締役)就任の登記申請に必要な書類
取締役会非設置会社の場合
- 役員変更の登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 印鑑証明書
- 委任状(代理人である司法書士が申請する場合)
取締役会設置会社の場合
- 役員変更の登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 本人確認証明書
- 委任状(代理人である司法書士が申請する場合)
上記書類が準備できたら登録免許税納付のための収入印紙を貼付して書類の準備は完了です。
※登録免許税の金額はこの記事内で後述します。
役員(取締役・監査役)解任登記の申請期限は2週間
役員の解任決議後、管轄の法務局に2週間以内に登記申請する必要があります。
解任した日の翌日を起算日として2週間以内に申請が必要です。辞任以外でも役員変更であれば、新任、退任、重任(再任)、解任など、原則はどれも同じ期間計算の方法になります。
※「起算日」は民法140条では「初日不算入」と定められています。期間を定める時は、変更が生じた日の翌日から計算するのが原則です。
なお、役員変更以外の登記申請も原則として変更後2週間以内の登記申請が必要です。2週間はすぐ過ぎてしまうので、登記申請の必要があるならできるだけ早く登記申請する、くらいの感覚で良いと思います。
2週間を過ぎても登記申請は可能ですが、過料という制裁金が発生する場合も
万が一、登記せずに2週間を過ぎてしまったらどうなるのでしょうか?
結論としては、登記申請できなくなるわけではないので、気付き次第できるだけ早く登記申請を行ってください。登記のみの懈怠でなく、後任の役員の選任手続きも懈怠している場合は臨時株主総会の開催と役員選任の決議も必要です。
登記懈怠したまま放置した場合、その期間に応じて、代表取締役に対して過料(かりょう)という制裁金が科される場合があります。さらに懈怠を続けると、休眠会社とみなされ解散手続きになってしまう「みなし解散」の対象になる可能性もあります。役員変更は任期に差はあれど定期的に発生するので確実に手続きしておきましょう。
役員(取締役・監査役)解任登記申請を行う方法
登記申請というと司法書士にお願いするしかない、と思われる方も多いと思いますが、実は自分でやるという選択肢もあります。
①ゼロから調べて自分で申請する
参考書籍やインターネット上の申請例を参考に自力で書類を作成、印刷して申請する方法です。登記申請は少しでも書類の記載にミスがあると受理されませんので難易度が高い方法です。
②司法書士に書類作成および申請を依頼する
司法書士に依頼する方法です。申請したい登記種類と変更内容を伝えて、必要書類を作成してもらい申請まで行ってもらうのが一般的です。丸投げできるとはいえ、事前の見積もりや依頼内容のすり合わせなど、それなりにコミュニケーションの時間はかかります。司法書士が直接稼働するという面からも、数万円程度の専門家報酬が掛かります。
どちらの方法を選択するかは、コストと労力のバランスで決まります。
ただし、登記申請は頻度も少ない割に申請の難易度が高く、自分で申請するというのはよっぽど頻度が多かったり興味が無い限りは現実ではありません。自分の労力を抑えることは大前提として、どの方法が自分に適しているか検討しましょう。
役員(取締役・監査役)解任の登記申請にかかる費用・料金
登記申請にかかる費用の内訳は3つに分かれています。
①申請書類、必要書類の準備:1万円〜数万円
※司法書士に依頼する場合、報酬の平均額は28,851円(出典:平成30年の日本司法書士連合会による報酬アンケート)
②役員変更登記申請に必要な登録免許税:1万円(資本金が1億円を超える会社の場合、3万円)
※役員変更の各種類(新任・退任・辞任・重任(再任)・解任)はどれも同じ金額です。複数の役員変更でも1回の登記申請であればかかる費用は1回分のみです。
③法務局に申請するためにかかる郵送費や交通費:数百円
たいていの方は低額なのでほぼ考慮しなくてもいいでしょう。
仮に司法書士に依頼した報酬が3万円とすると総額で約4万円(資本金が1億円以下の場合)程度の費用となります。
②の登録免許税はどんな方法を使っても必ずかかりますので、登記申請の費用を安くするなら①をどこまで節約できるかがポイントになります。
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役員の就任・重任・退任・辞任が発生した場合は、役員変更登記の申請が必要です。決議後(辞任の場合は辞任の意思が会社に到達した時点から)2週間以内に申請をしなければなりませので、予め役員変更登記の申請方法を準備しておくと良いでしょう。
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・商号変更
・目的変更
・株式分割
・剰余金等の資本組入れ
・ストックオプション
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- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 取締役会議事録
- 取締役決定書
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※役員就任・重任・退任・辞任で作成される処理が異なります。上記は役員就任の場合です。
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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