代表取締役の選定方法と株主総会議事録のひな形を紹介

役員変更
投稿日:2024.12.06
代表取締役の選定方法と株主総会議事録のひな形を紹介

代表取締役の選定は、会社経営における重要な手続きのひとつです。しかし、「どのような選定方法があるか知りたい」「議事録の書き方がわからない」という人も多いのではないでしょうか。

この記事では、代表取締役の選定方法や、株主総会で選定する場合の具体的な手続きについて解説します。また、登記申請に不可欠な株主総会議事録の作成方法や記載例、ダウンロードできる議事録のテンプレートも紹介します。

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代表取締役とは?

代表取締役は、取締役会や株主総会で選定される会社の代表者です。ここでは、代表取締役の役割などについて解説します。
 

代表取締役の必要性と役割など

代表取締役は、会社運営において重要な権限となる業務執行権と代表権を有しています。

業務執行権は、会社の日常的な業務運営について実行する権限です。たとえば、従業員への指揮命令や取引先との契約締結の判断など、取締役会や株主総会で決定された方針に従って業務を遂行します。

一方、代表権は、会社の代表として行う権限です。たとえば、会社を代表して契約締結したり、会社の代表者として訴訟に関わったりなど、対外的な法律行為を行います。

また、会社の形態によって、代表取締役の役割に違いが出ることがあります。取締役会設置会社の場合、代表取締役は、業務執行の中心的な役割を担います。一定の重要事項を除くと、取締役会からの委託を受けて業務執行の決定を行うことも可能です。

非取締役会設置会社では、代表取締役を含む各取締役がそれぞれ業務執行を担当します。各取締役に業務執行権と代表権が与えられており、定款や取締役間の合意によって、その権限の範囲を調整することができます。
 

代表取締役の選定方法は複数ある

代表取締役の選定方法は、おもに取締役会設置会社と非設置会社とで選定の手続きが異なります。

選定方法には、直接、定款で定める方法のほか、「取締役会での選定」、「株主総会での選定」、「取締役の互選による選定」の3つのパターンがあります。それぞれの方法には特徴があり、会社の形態や状況に応じて適切な選定方法を選択する必要があります。

取締役会設置会社では原則として取締役会での選定となりますが、定款の定めによって株主総会での選定も可能です。一方、取締役会非設置会社では、原則として各取締役が業務執行権と代表権を有しますが、代表取締役を定める場合は、取締役の互選や株主総会での選定が一般的です。

このように、会社の機関設計によって選定方法が異なるため、自社に適した方法を理解しておくことが重要です。

代表取締役選定の方法を理解することが、企業運営において重要

代表取締役の選定手続きを正しく理解することは、企業運営をスムーズに進め、安定化するために重要となります。

適切な手続きを踏むことで代表取締役の選定を有効に行うことができ、のちのちの経営に支障をきたすリスクを回避できます。また、正しい知識があれば、手続きのやり直しによる無駄な時間やコストの発生を防ぎ、タイミングよく迅速に選定することができます。 

このように、代表取締役の選定手続きを正しく理解しておけば、事務的な手続きで遅れを取ることなく、企業の意思決定を迅速に実現することができます。

代表取締役の選定方法は主に3パターン

代表取締役の選定方法には、取締役の互選による選定、株主総会での選定、取締役会での選定の3つがあります。それぞれについて詳しく解説します。
 

互選による選定

取締役会非設置会社においては、定款の定めに基づき、取締役同士の話し合いによって代表取締役を選ぶ「互選」という方法があります。互選では、取締役たちが話し合いを行い、そのなかから代表取締役を選定します。

この互選による選定は、取締役間の合意形成を重視する点にあります。 

一般的に、互選による代表取締役の選定には過半数の賛成が必要です。具体的には、取締役が2名の場合は全員の賛成(満場一致)が、3名の場合は過半数である2名以上の賛成が必要です。

互選は比較的シンプルな手続きですが、取締役間の信頼関係や協力関係が基盤となる選定方法といえます。選定後は実務上の手続きとして、選定を証する書面(互選書)の作成や登記申請などの対応が必要となります。
 

株主総会での選定

株主総会での代表取締役の選定は、会社の所有者である株主の意思を直接反映させる方法です。株主総会において、株主が保有する議決権を行使して代表取締役を選出します。

具体的な手続きとしては、まず株主総会の招集手続きを行い、代表取締役選定を議案として提出します。この議案は、通常の決議事項として出席した株主の議決権の過半数をもって可決されます。ただし、定款で特別の定めを置くことで、より厳しい要件を設定することも可能です。

株主総会での選定は、おもに取締役会非設置会社で採用される方法です。株主の意思を直接反映できる一方で、株主総会の開催や招集手続きなど、一定の時間と手続きが必要となります。

なお、取締役会設置会社においても、定款に定めを置くことで株主総会による代表取締役の選定が可能です。
 

取締役会での選定

取締役会設置会社における代表取締役の選定は、取締役会の決議によって行われます。これは会社法上の原則的な選定方法であり、取締役会のメンバーによる協議と決定を通じて代表取締役を選出します。

選定の手続きとしては、まず取締役会を開催し、代表取締役選定を議案としてはかります。取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その出席取締役の過半数をもって行われます。たとえば、取締役が5名いる場合、最低3名の出席が必要で、出席した3名のうち2名以上の賛成があれば選定が可決されます。ただし、定款でより厳しい要件を定めることも可能です。

この方法の特徴は、経営の専門家である取締役たちの判断により、会社の代表者を選出できる点です。取締役会は会社の業務執行に関する意思決定機関であり、経営の実態を熟知したメンバーによって代表取締役を選定することで、より実務に即した判断が可能となります。

なお、選定後は取締役会議事録の作成や登記申請など、必要な法的手続きを進めなければなりません。

株主総会で代表取締役を選定する場合の株主総会議事録の作成

株主総会で代表取締役を選定する場合の、株主総会議事録の作成方法について解説します。法律上の規定や必要書類も紹介します。
 

株主総会にて代表取締役選定を証明するために必須な株主総会議事録の重要性

株主総会議事録は、代表取締役の選定が適法かつ有効に行われたことを証明する重要な文書です。

この議事録は、法務局への登記を申請する際に、必ず添付しなければならない書類です。代表取締役の選定を登記簿に反映させるためには、その選定が有効に行われたことを証明する必要があり、その証明手段として株主総会議事録が不可欠です。

また、議事録には株主総会の開催日時、場所、決議事項、議決権行使の状況など、選定の有効性を裏付ける重要な情報が記載されます。これらの情報は、将来的に選定の有効性が問われる場合の証拠として機能し、会社運営の適法性を担保する重要な役割を果たします。
 

会社法で作成が義務付けられている

株主総会議事録の作成は、会社法第318条により法的な義務として定められています。具体的には、次のように規定されています。
 
1.    作成義務

  • 株主総会の議事について、法務省令で定める方法で議事録を作成しなければならない


2.    保管義務

  • 本店:株主総会の日から10年間保管
  • 支店:株主総会の日から5年間保管


3.    閲覧・謄写請求権

  • 株主および債権者は、営業時間内であればいつでも議事録の閲覧・謄写を請求できる

 
これは、株主総会で行われた決議や報告の内容を正確に記録し、証明するための重要な規定です。議事録は、単に会社の判断で作成するものではなく、法律上の要件として必ず作成しなければなりません。
 

役員変更登記申請の必要書類として必要

代表取締役の選定後は、2週間以内に役員変更登記を行う必要があります。この登記申請には、選定の事実を証明するための複数の書類が必要です。

必要書類

概要

登記申請書

変更内容や会社情報を記載した申請書

株主総会議事録

代表取締役選定を決議した内容を証明する議事録

株主リスト

議決権を行使した株主を証明する書面

印鑑証明書

株主総会に出席した取締役の印鑑証明書

本人確認証明書

住民票の写しや運転免許証、マイナンバーカードのコピーなど

委任状

登記申請を司法書士に依頼する場合に必要


これらの書類は、代表取締役の選定が適法に行われ、選定された本人がその就任を承諾していることを証明するために重要です。書類の不備があると登記が受理されないため、漏れのないよう準備しましょう。

株主総会議事録の作成ポイント

ここでは、具体的に株主総会議事録を紹介するための、記載事項をまとめます。議事録作成の際の参考にしてください。
 

代表取締役選定の株主総会議事録の記載事項

代表取締役選定の株主総会議事録には、次の事項を記載する必要があります。記載例とともにまとめます。
 
1.   基本情報

  • 開催日時:「令和○年○月○日午前○時○分から」
  • 開催場所:「当会社の本店において」


2.   株主の状況

  • 株主総数:「株主の総数 ○○名」
  • 発行済株式総数:「発行済株式の総数 ○○○○株」
  • 自己株式数(ある場合):「(自己株式の数 ○○○○株)」
  • 議決権保有株主数:「議決権を行使することができる株主の数 ○○名」
  • 総議決権数:「議決権を行使することができる株主の議決権の数 ○○○○個」


3.   出席状況

  • 出席株主数:「出席株主数(委任状による者を含む) ○○名」
  • 出席株主の議決権数:「出席株主の議決権の数 ○○○○個」
  • 出席役員:「出席取締役 ○○○○(議長兼議事録作成者)」


4.   決議事項

  • 議案名:「第○号議案 取締役及び監査役の任期満了に伴う改選に関する件」
  • 選定理由の説明
  • 選定方法(指名方法)
  • 決議結果:「満場異議なくこれに賛成したので、下記のとおり再選重任することに可決確定した」


5.   選定された役員情報

  • 役職名と氏名:「取締役 ○県○市○町○丁目○番○号 ○○○○」
  • 就任承諾:「なお、被選定者は、いずれも席上その就任を承諾した」


6.   閉会

  • 閉会時刻:「午前○時○分閉会した」
  • 議事録作成日:「令和○年○月○日」
  • 署名:議長、出席取締役及び出席監査役の記名押印

 
議事録は、見やすさとわかりやすさに注意しながら、法定の記載事項を漏れなく含めることが重要です。さらに、次章のひな形・テンプレートも参考にしてください。

代表取締役選任の株主総会議事録ひな形・テンプレートのダウンロード

代表取締役選任の議事録について、定時株主総会議事録のひな形を用意しました。実務ですぐに活用できる内容になっていますので、ダウンロードいただき、状況に合わせて修正してご利用ください。


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代表取締役選任の定時株主総会議事録のテンプレートダウンロードフォームはこちら
代表取締役選任の定時株主総会議事録のテンプレート

代表取締役の選定方法には3つのパターンがある

代表取締役の選定方法について、3つの選定パターンを解説しました。
 
取締役会設置会社の場合は、原則として取締役会の決議による選定となります。取締役会のメンバーによる協議と決定を通じて、代表取締役を選出します。ただし、定款に定めがあれば株主総会での選定も可能です。
 
取締役会非設置会社の場合は、株主総会での選定か取締役の互選による選定が一般的です。株主総会での選定は株主の直接的な信任を得られる一方、互選は取締役間の合意に基づく比較的シンプルな方法です。
 
いずれの選定方法でも、適切な手続きを踏んで議事録を作成し、必要な登記申請を行うことが重要です。会社に合わせて最適な選定方法を選択し、法令に則った手続きを実施することで、スムーズに選定できるでしょう。

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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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