株式会社の役員は、会社法によって任期が定められています。任期満了を迎える方を、再び役員にするためには、株主総会で「重任」の決議を行い、法務局への登記申請が必要です。
取締役重任の決定をした際には、議事録の作成が必須となります。議事録は、重任手続きの添付書類となるだけでなく、会社法で作成や保管が義務付けられています。
本記事では「取締役重任と株主総会の関係性、議事録の具体的な書き方」などを詳しく解説します。一人会社の場合についても触れているので、ぜひ参考にしてください。
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取締役の重任と株主総会
取締役の任期満了に伴い、同じ取締役が引き続き職務を遂行する場合には、「重任」の手続きが必須となります。株主総会での決定、議事録の作成、法務局への申請など手続きを詳しく解説します。
取締役の重任(再任)とは?
株式会社では、取締役や監査役などの役員は、会社法によって任期が定められています。任期満了を迎えた役員が、引き続き同じ役職に就く場合に「重任」の手続きを行います。
「重任」は「再任」と呼ばれることもあり、役員改選時などに、任期満了した役員が再び同じ役職に就任し、その立場を継続していくことを指します。
会社法では、株式会社の取締役の任期は原則2年、監査役は原則4年と定められていますが、定款で定めることによって最長10年まで延長できます。この任期が経過した後も、同じ役員が引き続き職務を行う場合に「重任」の手続きを行います。なお、有限会社の場合は、通常、役員の任期が定められていないため、「重任」という概念は存在しません。
関連記事:
・役員(取締役)の重任登記とは?登記簿の記載変更・申請方法を解説
・役員(取締役)重任登記の必要書類
役員重任は株主総会で決議される
役員の重任は、他の選任(就任、退任、辞任など)と同様に、株主総会における決議事項となります。会社法第332条では、取締役の任期について「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と規定されています。
株主総会において重任を決定した場合、その内容を議事録として記録・保存することが法律で義務付けられています。議事録は、決定事項を正式に記録した書類であり、会社の重要な意思決定を証明する証拠となります。
重任の場合、任期満了を迎えると自動的に再任になると誤解されているケースが見受けられますが、実際にはそうではありません。重任の手続きとして、株主総会での決定、議事録の作成、そして法務局への申請を適切に行うことで効力が発生します。
重任したら役員変更の登記申請が必要
役員が重任した場合、他の役員変更と同様に、2週間以内に法務局へ申請を行います。これは、登記事項証明書に「役員に関する事項」として、重任した役員の氏名または名称と重任日が記載されるためです。
申請書に加えて、議事録や就任承諾書などの書類を添付して法務局に提出します。添付書類が不足していると、申請が受理されない場合があるため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
取締役の重任を決議したら議事録の作成が必要な理由
取締役重任の議事録は、法務局への申請に必須なだけでなく、会社法でも作成が義務付けられています。議事録の作成は、会社の適正な運営を証明する上で非常に重要です。
登記申請のために議事録の提出が必要
役員を重任する場合、株主総会での議決と、法務局への申請が必須となります。この手続きの際に、議事録の提出が求められます。
議事録は、重任手続きが適正に行われたことを証明する重要な書類です。議事録がないと、申請が受理されず、会社の実態と公的記録の内容が一致しない状態になってしまいます。
これは、会社法違反に該当する可能性もあり、会社の信用問題にも発展しかねません。また、金融機関からの融資や取引先との契約に影響が出る可能性もあります。
役員就任について株主総会で決定したら、原則として2週間以内に、法務局で役員変更の申請を行います。この期限を過ぎると「登記懈怠(けたい)」となり、過料の支払いを命じられる可能性もあるため注意しましょう。
会社法で作成が義務付けられている
会社法第318条第1項では、株主総会議事録の作成が義務付けられています。議事録は「開催日時、場所、出席者、議題、内容」などを記録した公式な書類であり、会社の重要な意思決定を証明する証拠となります。
株主総会の内容に基づいて、正式に再任をしたことの証拠として、議事録を作成し保存します。議事録は、後々、株主や取引先、従業員などから、総会の内容について確認を求められた際に、重要な証拠資料となります。
適切な議事録の作成と保管は、会社のコンプライアンス遵守、透明性確保、そして信頼性向上に不可欠です。
一人取締役の会社でも重任の株主総会議事録は必要?
会社法は、会社の規模や形態に関わらず、すべての株式会社に適用されます。そのため、代表取締役一人のみの会社(一人会社)であっても「重任の決定、議事録作成、法務局への申請」は必須です。
たとえ代表者であり株式を持つオーナーであっても、会社と個人は法的に別個の存在であるため、会社の意思決定として重任の手続きを行い、議事録作成が必要になります。
一人会社の場合でも、議事録は会社の意思決定を記録し、外部に対して透明性を示すための重要な書類となります。
ただし役員の任期を定款で定めることによって最大10年まで延長できます。下記がその要件です。
・株式の譲渡制限がある非公開会社である ・定款に任期伸長に関する規定を設ける |
10年を過ぎても法務局への申請をしないままでいると、みなし解散となり、解散の登記がされてしまうことがあります。また、違反者は、裁判所から最大100万円の過料に処される可能性があるので、十分にご注意ください。
取締役重任の株主総会議事録の書き方
重任の議事録は、法務局に提出する重要な書類です。記載事項や添付書類を理解し、正確な書類を作成しましょう。
取締役重任の株主総会議事録の記載事項
重任の議事録には、以下の事項を漏れなく正確に記載する必要があります。
①議事録タイトル
開催時期(第○回)、株主総会の種別(定時または臨時)を明記します。
②開催日時・場所
開催した日時と場所を具体的に記入します。
記入例) 令和○年○月○日午前○時○分から、当会社の本店において定時株主総会を開催した。 |
③議事の経過要領・決議内容
議事の経過と内容を詳細に記録します。特に、役員の任期満了と重任に関する事項については明記しましょう。
記入例) 定款の定めにより代表取締役社長○○○○は議長席につき、本定時総会は適法に成立したので、開会する旨を宣し、直ちに議事に入った。 第○号議案 取締役及び監査役の任期満了に伴う改選に関する件 議長は、取締役及び監査役の全員が本定時総会の終結と同時に任期満了し退任となるので、その改選の必要がある旨を述べ、その選任方法を諮ったところ、出席株主中から議長の指名に一任したいとの発言があり、一同これを承認したので、議長は下記の者をそれぞれ指名し、これらの者につきその可否を諮ったところ、満場異議なくこれに賛成したので、下記のとおり再選重任(※新任者の場合は就任)を可決確定した。 取締役 ○県○市○町○丁目○番○号 ○○○○ 同 ○県○市○町○丁目○番○号 ○○○○ 同 ○県○市○町○丁目○番○号 ○○○○ 監査役 ○県○市○町○丁目○番○号 ○○○○ なお、被選任者は、いずれも席上その就任を承諾した。 |
④特定の意見・発言内容
会社法に定められた一定の事項や、重要と思われる意見や発言について記入します。
記入例) 計算書類等に関する意見 株主○○○○は、計算書類について、売上高の計上基準に関する疑義を呈し、詳細な説明を求めた。これに対し、監査役○○○○は、売上高は適切な基準に基づき計上されており、会計監査人からも適正との意見を得ている旨を説明した。 |
⑤出席取締役等の氏名または名称
出席した取締役、監査役などの氏名または名称を記入します。
⑥議長の氏名
議長がいる場合は、議長の氏名を記入します。議長について法令の決まりはないものの、定款で定めておくのが一般的です。
⑦作成に関わる取締役の氏名
議事録の作成者は取締役であることが求められます。作成に関わる職務を行った者の氏名を記入しておきましょう。
記入例) 出席取締役 ○○○○(議長) ○○○○(議事録作成者) ○○○○ 出席監査役 ○○○○ |
取締役重任の登記申請の必要書類
重任の手続きには、上記の議事録に加えて、就任承諾書などを添付します。また、申請書には、添付書類をリストアップして記載しますので、正確に把握しておきましょう。
被選任者が就任を承諾し、その旨の記載が議事録にある場合には、就任承諾書は不要となります。この場合、申請書には「就任承諾書は、株主総会議事録の記載を援用する。」と記入しておきましょう。
これらの添付書類を漏れなく準備し、正確にとり行うことで、取締役重任の申請をスムーズに実行できます。
必要書類(取締役会設置会社で役員全員が重任する場合)の参考例
変更登記申請書 | 役員変更の登記の申請書 |
株主総会議事録 | 株主総会で役員の重任を決議したことを記載 |
株主リスト | 株主総会の開催日における株主について記載、会社実印を押印 |
取締役会議事録 | 取締役会設置会社の場合に必要。代表取締役を選定した旨を記載、代表取締役は会社実印・その他役員は認印を押印 |
就任承諾書 | 重任する役員の認印を押印。株主総会や取締役会の席上で、就任承諾した旨を、議事録に記載している場合は省略可能 |
委任状 | 代理人に依頼する場合に必要 |
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取締役の重任においても「株主総会、議事録作成、法務局への申請」が必要なことに注意
役員の重任は、株式会社において、任期満了を迎えた役員が引き続きその職務を担う際に必須な手続きです。株主総会での決定、議事録の作成、法務局への申請という一連の流れを正しく理解し、適切に行うことが重要となります。
本記事では、重任の手続きについて、株主総会議事録を中心に詳しく解説しました。議事録は、法務局への申請に必須なだけでなく、会社法で作成が義務付けられている重要な書類です。会社の規模や形態に関わらず、すべての株式会社において、正確な作成と保管が求められます。
重任の手続きをスムーズに進めるために、本記事で解説した内容を参考にしていただければ幸いです。
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役員が重任する場合、これまでの役員が次の任期も継続することになるため、役員変更登記は必要ないと勘違いされることがありますが、重任する場合でも役員重任登記の必要がありますのでご注意ください。
また、任期が切れていた場合、役員重任の手続きはできませんのでご注意ください。この場合は一度役員退任手続き後、再度役員就任の手続きが必要になります。
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・目的変更
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- 取締役決会議事録
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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