会社役員に就任するメリット・デメリットを解説

役員変更
投稿日:2025.07.08
会社役員に就任するメリット・デメリットを解説

会社員としてキャリアを積んできた方にとって、「役員(取締役)に就任する」という機会は、嬉しさやチャンスであると同時に、その重い責任や労働者としての保護がなくなる点に不安を感じる方もいるかもしれません。単なる昇進とは異なり、立場、役割、そして責任が根本的に変わるキャリアの転換点だからです。

本記事では、会社員と会社役員の法的な違いを明確にし、就任がもたらすメリットとデメリットを中心に解説します。

会社役員とは?従業員や社員との違い

まず、最も重要な「会社役員と従業員の違い」から確認しましょう。

役員は「委任契約」、社員は「雇用契約」

両者の決定的な違いは、会社と結ぶ契約の種類にあります。

  • 会社役員(取締役など):委任契約 役員は、株主から会社の経営を「任される」立場です。そのため、会社とは「委任契約」を結びます。これは、弁護士や税理士に業務を依頼するのと似たような契約で、経営のプロフェッショナルとして、自らの裁量で業務を遂行し、会社全体の利益を最大化することが期待されます。
  • 従業員:雇用契約 従業員は、会社の指揮命令下で労働力を提供し、その対価として賃金を受け取る立場です。会社とは「雇用契約」を結び、労働基準法をはじめとする労働関連法規によって手厚く保護されます。

この契約形態の違いに加えて、以下のような待遇や責任などの違いがあります。

会社の役員と従業員の決定的な違い


項目

会社役員(取締役)

従業員

契約形態

委任契約

雇用契約

根拠法

会社法、民法

労働基準法、労働契約法など

関係性

株主・会社から経営を任される経営者

会社の指揮命令下で働く労働者

選任/採用

株主総会での選任

採用試験・面接などによる採用

解任/解雇

株主総会決議による解任(正当事由なく解任されれば損害賠償請求可)

解雇(解雇権濫用法理で厳しく制限)

任期

あり(原則2年(監査役は4年)、非公開会社は最長10年)

なし(無期雇用の場合)

報酬/給与

役員報酬(定款または株主総会決議で決定)

給与・賃金(労働の対価)

労働時間

原則として裁量(労働時間の概念なし)

労働基準法による規制あり

労働法の適用

適用されない

適用される

責任の範囲

会社や第三者に対する重い法的責任

職務上の限定的な責任

会社役員に就任するメリット

上記の違いを踏まえて、役員に就任するメリットを解説します。


メリット1:経営の意思決定に直接関与できる

最大の魅力は、会社の経営に主体的に関与できることです。従業員時代は組織の方針に従う立場だったのが、役員になることで事業戦略、予算配分、人事方針といった会社の未来を左右する重要な意思決定の場に参加することになります。まさしく「責任も大きいがチャンスも大きい」と言えるでしょう。


メリット2:高い報酬を得られる可能性がある

役員報酬は、従業員の給与体系とは全く異なります。会社の業績や個人の貢献度に応じて、**高い報酬を得られる可能性があります。**また、ストックオプション(新株予約権)などの株式報酬を付与されれば、会社の株価が上昇した際にキャピタルゲインを得るチャンスもあります。


メリット3:広範な裁量と自由な働き方

役員は労働基準法の労働時間規制を受けません。いつ、どこで、どのように働くかは、基本的に自らの裁量に委ねられます。会社の利益を最大化するという目的のために、最も効率的で生産的な働き方を自分でデザインできる自由度があるといえますが、これは重い結果責任と表裏一体の関係にあることも理解しておきましょう。


メリット4:社会的信用の向上とキャリアの拡大

「株式会社の取締役」という肩書は、一般的には社会的な信用の高い立場です。ボードメンバーの一人として会社全体の視点から物事を考え、重要な意思決定を繰り返す経験は、自身のビジネスパーソンとしての市場価値を高める機会になり得ます。

会社役員に就任するデメリット

メリットがあれば当然デメリットもあります。特に法的責任の重さは、社員の時には意識することも少ないため、就任前に必ず理解しておきましょう。


デメリット1:重い法的責任を負う(任務懈怠責任)

取締役などの役員は、会社に対して「善管注意義務(善良な管理者の注意をもって職務を行う義務)」と「忠実義務(会社の利益を犠牲にして自己の利益を図らない義務)」を負います。 これらの義務に違反し、あるいは任務を怠った(任務懈怠)ことで会社に損害を与えた場合、役員は個人として会社に対して損害賠償責任(任務懈怠責任)を負います。
例えば、不適切な投資判断で会社に多額の損失を与えたり、情報漏洩対策を怠って顧客データが流出し、会社に損害が生じたり、部下の法令違反行為を知りながら放置したりした場合、その損害額を個人で賠償するよう求められるリスクが考えられます。もちろん、役員賠償責任保険(D&O保険)に加入するなどの対策も可能です。


デメリット2:労働者としての保護がなくなる

役員は労働者ではないため、労働基準法をはじめとする労働関連法規による保護を受けられません。代表的なのが以下の点です。

  • 残業代・休日出勤手当がない 労働時間の概念がないため、いくら働いても時間外手当は支給されません。
  • 雇用保険に加入できない 業績不振や株主との対立で役員を解任されても、失業手当は受け取れません。
  • 労災保険が適用されない 業務中に怪我をしても、原則として労災保険は適用されません。(※従業員としての側面も持つ「使用人兼務役員」などの例外あり)


デメリット3:収入が不安定になるリスク

メリットとして高い報酬の可能性を挙げましたが、その逆もあり得ます。会社の業績が悪化すれば、役員報酬は減額されたり、場合によってはゼロになったりすることもあります。従業員のように最低賃金が保障されているわけではないのは大きな違いです。

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家族・親族が役員に就任するケースの論点


役員への就任を検討するケースで、特に中小企業にあるのが家族や親族に役員に就任してもらうケースです。この場合は、上述したメリット・デメリットももちろん該当しますが、家族ならではの論点があり、慎重な検討が必要です。

メリット

節税面では、役員報酬を家族に分散することで所得税の累進課税を緩和し、世帯全体の手取り額を増やせる可能性があります。将来、役員退職金を支給できる点も税制上有利です。 意思決定面では、気心の知れた家族間でのコンセンサス形成が速く、経営判断や株主総会などの決議が迅速かつ安定します。事業承継の準備として経営経験を積ませる効果もあります。

デメリット

勤務実態に見合わない役員報酬は、税務調査で否認されるリスクがあります。意思決定においては、公私混同に陥りやすい点に注意が必要です。親族関係や相続といった背景がある場合、役員間で一度対立してしまうと解決が難しい問題になる可能性があります。 また、能力や実績のない家族役員への厚遇は、会社を私物化していると見られたり、他の従業員のやる気を低下させる原因にもなります。

会社員・役員それぞれの違いを見極めて判断しましょう

会社員から役員への就任は、単なる「出世」ではなく、会社員から経営者へと「職業が変わる」ほどの大きな変化を伴います。求められるのは、指示された業務を的確にこなす能力から、自ら課題を発見し、リスクを分析し、最終的な責任を負う覚悟で決断を下す能力が求められることになります。
役員という立場は、重い責任と引き換えに、やりがいと成長のきっかけとなり得ます。メリットと、デメリットとして解説したリスクと責任を比較し、ご自身のキャリアにとって最善のチャンスを活かすべきか判断しましょう。

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GVA 法人登記が対応している登記種類

・本店移転(管轄内移転・管轄外移転)
・役員変更(新任、辞任、重任、退任)
・役員の住所変更
・募集株式の発行
・商号変更
・目的変更
・株式分割
・剰余金等の資本組入れ
・ストックオプション

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GVA 法人登記で作成できる変更登記書類(役員就任の場合)

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 就任承諾書
  • 取締役会議事録
  • 取締役決定書
  • 登記申請書
  • 定款
  • 印鑑届書


※役員就任・重任・退任・辞任で作成される処理が異なります。上記は役員就任の場合です。

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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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