役員変更登記(就任・重任・新任)における印鑑の使い分け方を解説

役員変更
投稿日:2024.11.19
役員変更(就任・重任・新任)登記に必要な印鑑をまとめて解説

登記申請、なかでも役員変更においては複数の押印が必要になることがあります。

そして、令和3年1月29日法務省民商第10号通達により、押印規定が見直され、法令上の根拠があるものを除き、押印については審査の対象にならなくなりました。これにより押印すべき印鑑はどのように変わるのでしょうか?

本記事では、上記通達を受けて、株式会社の役員変更登記で使う印鑑の使い分けについて、それぞれ解説します。

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目次

役員の変更が発生したら2週間以内に登記申請をしましょう

取締役(代表取締役を含む)や監査役の役員変更をしたら、管轄の法務局に2週間以内に登記申請することが法律(会社法第915条第1項)で定められています。

2週間後の期日を過ぎてしまった場合、登記懈怠(けたい)に該当し、過料(かりょう)という100万円以内の制裁金(罰金のようなもの)の支払いが科される可能性があります。GVA 法人登記なら変更する情報を入力すれば最短7分で書類を自動作成し、自分で申請できます。

役員変更の登記申請で用いられる印鑑

株式会社の役員変更登記で登記申請書や必要書類に押印される印鑑には、次のものがあります。

・法務局(登記所)に提出している印鑑(会社代表印や会社実印ともいいます)
・市区町村に登録している印鑑(個人実印)
・個人認印

令和3年1月29日法務省民商第10号通達により、押印規定が見直され、法令上の根拠があるものを除き、押印については審査の対象にならなくなりました(同通達第4,3(4)等)。


この通達により、印鑑の使い分けにどんな変化が生じるか解説します。

登記申請書に押印する印鑑

登記申請書に押印する印鑑は、会社代表印(登記所に提出している印鑑)です。
ただし、代理人が申請する場合には代理人が認印を押印するため、会社代表印の押印は不要です。
そのかわり、代理権限を証する書面(委任状等)に会社代表印を押印します。

株主総会議事録に押印する印鑑

株主総会議事録に押印する印鑑は使い分けが必要です。


ケース1:役員(取締役・監査役)が重任する場合


重任とは、役員が任期満了退任すると同時に再び役員に就任することをいいます。
ケース1の場合、株主総会議事録の押印については、法令上の根拠や制約はありませんので、押印する際は認印でも個人実印でも可能です。



ケース2:取締役会を設置している会社で新たな取締役・監査役が就任する場合

この場合、株主総会議事録の押印については、法令上の根拠や制約はありませんので、押印する際は認印でも個人実印でも可能です。
なお、株主総会議事録に新たに就任する役員の住所氏名を記載し、「なお、被選任者は、いずれも席上その就任を承諾した。」と記載することで就任承諾書を省略することができます。



この場合も、株主総会議事録の押印については、法令上の根拠や制約はありませんので、押印する際は認印でも個人実印でも可能です。
なお、新たに就任する取締役および監査役は本人確認証明書を法務局に提出する必要があります。この本人確認証明書は印鑑証明書でも問題ありません。


ケース3:取締役会を設置していない会社で新たな役員(取締役・代表取締役・監査役)が就任する場合

ケース3では、さらに次の①②③に場合分けされます。
 
①取締役の互選で代表取締役を選定する会社で新たな取締役が就任する場合(新任)
この場合、株主総会議事録の押印については、法令上の根拠や制約はありませんので、押印する際は認印でも個人実印でも可能です。
 
②株主総会で新たな代表取締役を選定する場合(新任)
この場合、株主総会議事録に押印する印鑑は次のとおりです。
 
②‐1(原則)
議長および出席した取締役 → 個人実印(市町村に登録している印鑑)
出席した監査役      → 押印について法令上の根拠や制約はありませんので、押印する際は認印でも個人実印でも可能です。
 
②‐2(例外)変更前の代表取締役が株主総会に出席し、会社代表印を押印している場合
変更前の代表取締役     → 会社代表印(登記所に提出している印鑑)
出席した取締役および監査役 → 押印について法令上の根拠や制約はありませんので、押印する際は認印でも個人実印でも可能です。
 
③新たな監査役が就任する場合(新任)
この場合、株主総会議事録の押印については、法令上の根拠や制約はありませんので、押印する際は認印でも個人実印でも可能です。
 
なお、個人実印の押印が要請されている場合は印鑑証明書も必要となります。こちらはセットで覚えましょう。
 
ケース3の場合でも株主総会議事録の記載を就任承諾書として援用することで就任承諾書を省略することができます。ケース4で解説します。



ケース4:取締役会を設置していない会社で新たに就任する役員が株主総会議事録の記載を就任承諾書として援用する場合(新任・援用)


①新たに就任する取締役が株主総会議事録の記載を就任承諾書として援用する場合(新任)
この場合、ケース3に加えて、新たに就任する取締役が株主総会議事録に個人実印(市町村に登録している印鑑)を押印し、印鑑証明書を法務局に提出する必要があります。
 
②新たに就任する監査役が株主総会議事録の記載を就任承諾書として援用する場合(新任)
この場合、株主総会議事録の押印については、法令上の根拠や制約はありませんので、押印する際は認印でも個人実印でも可能です。



ケース5:取締役会を設置していない会社において株主総会で重任する代表取締役を選定する場合(重任)

この場合、株主総会議事録に押印する印鑑は次のとおりです。

①(原則)
議長および出席した取締役 → 個人実印(市町村に登録している印鑑)
出席した監査役      → 押印について法令上の根拠や制約はありませんので、押印する際は認印でも個人実印でも可能です。
 
②(例外)重任する代表取締役が株主総会に出席し、会社代表印を押印している場合
重任する代表取締役     → 会社代表印(登記所に提出している印鑑)
出席した取締役および監査役 → 押印について法令上の根拠や制約はありませんので、押印する際は認印でも個人実印でも可能です。

株主リスト(株主の氏名又は名称,住所および議決権数等を証する書面)に押印する印鑑

株主リストは、株主総会議事録を法務局に提出する際に必要となる書類です。
株主リストの押印については、法令上の根拠や制約はありませんので、押印は不要です。認印などを押印して提出することも可能です。
 

取締役の互選書に押印する印鑑

取締役の互選書は、取締役会を設置していない会社において、定款の定めに基づいて取締役の互選により代表取締役を選定する場合に必要となります。こちらの書類に押印する印鑑は次のとおりです。


ケース1:代表取締役が重任する場合

ケース1の場合、取締役の互選書には、互選した取締役全員が個人認印を押印します。
 
なお、重任する代表取締役は、取締役の互選書の記載を就任承諾書として援用することで就任承諾書を省略することができます。この場合も印鑑は認印で問題ありません。


ケース2:新たな代表取締役が就任する場合(新任)

ケース2では、さらに次の①②に場合分けされます。
 
①(原則)
互選した取締役全員 → 個人実印(市町村に登録している印鑑)
 
②(例外)変更前の代表取締役が互選に出席し、会社代表印を押印している場合
変更前の代表取締役 → 会社代表印(登記所に提出している印鑑)
その他の取締役   → 個人認印
 
なお、新たに就任する代表取締役は、取締役の『互選書』の記載を就任承諾書として援用することで就任承諾書を省略することができます。この場合の印鑑も上記と同じです。

互選書とは?

主に株式会社において、取締役会を設置していない会社で代表取締役を選定する際に、その選定の過程を証明するための書類です。


取締役会議事録に押印する印鑑

取締役会議事録に押印する印鑑は使い分けが必要です。


ケース1:取締役会で代表取締役を選定する場合(重任)

出席した取締役および監査役 → 個人認印

なお、重任する代表取締役は、取締役会議事録の記載を就任承諾書として援用することで就任承諾書を省略することができます。この場合の印鑑も上記と同じです。


ケース2:取締役会で代表取締役を選定する場合(新任)

ケース2では、さらに次の①②に場合分けされます。
 
①(原則)
出席した取締役および監査役全員 → 個人実印(市町村に登録している印鑑)
 
②(例外)変更前の代表取締役が取締役会に出席し、会社代表印を押印している場合
変更前の代表取締役     → 会社代表印(登記所に提出している印鑑)
出席した取締役および監査役 → 個人認印
 
なお、新たに就任する代表取締役は、取締役会議事録の記載を就任承諾書として援用することで就任承諾書を省略することができます。ケース3で解説します。


ケース3:新たに就任する代表取締役が取締役会議事録の記載を就任承諾書として援用する場合(新任・援用)

この場合、ケース2に加えて、新たに就任する代表取締役が取締役会議事録に個人実印(市町村に登録している印鑑)を押印する必要があります。


就任承諾書に押印する印鑑

就任承諾書に押印する印鑑は使い分けが必要です。


ケース1:役員(取締役・代表取締役・監査役)が重任する場合

ケース1の場合、就任承諾書の押印について、法令上の根拠や制約はありませんので認印なども可能です。



ケース2:取締役会を設置している会社で新たな取締役が就任する場合(新任)

ケース2の場合、就任承諾書の押印について、法令上の根拠や制約はありませんので認印なども可能です。


ケース3:取締役会を設置していない会社において取締役が新たに就任する場合(新任)

就任承諾書に個人実印(市町村に登録している印鑑)を押印し、印鑑証明書を法務局に提出する必要があります。


ケース4:監査役が新たに就任する場合(新任)

ケース4の場合、就任承諾書の押印について、法令上の根拠や制約はありません。


ケース5:取締役会を設置していない会社において、定款の定めにより取締役の互選で新たな代表取締役が就任する場合(新任)

ケース5の場合、就任承諾書の押印について、法令上の根拠や制約はありません。ただし、取締役に新たに就任する就任承諾書と兼ねる場合は、ケース3のとおり、個人実印(市町村に登録している印鑑)を押印し、印鑑証明書を法務局に提出する必要があります。


ケース6:取締役会で新たな代表取締役を選定する場合(新任)

就任承諾書に個人実印(市町村に登録している印鑑)を押印し、印鑑証明書を法務局に提出する必要があります。
 

 
なお、ケース1~6の場合であっても、就任承諾書を省略することができる場合があることは既述のとおりです。
 

取締役・代表取締役の辞任届に押印する印鑑は?

辞任届に押印する印鑑は、一般的に「実印」が必要です。実印は市区町村に登録された印鑑であり、法的な効力を持つ文書に使用されます。
辞任届は正式な文書であり、辞任する役員の意思を明確にするために信頼性の高い実印が求められます。。


ケース1:登記所に印鑑を提出している取締役または代表取締役が辞任するとき

ケース1の場合、辞任届に①②いずれかの押印が必要です。

①会社代表印(登記所に提出している印鑑)
②個人実印(市町村に登録している印鑑)


ケース2:登記所に印鑑を提出している者がいない場合において、代表取締役が取締役を辞任するとき

ケース2の場合、辞任届に個人実印(市町村に登録している印鑑)の押印が必要です。


ケース3:登記所に印鑑を提出していない取締役または監査役が辞任するとき

ケース3の場合、辞任届の押印について、法令上の根拠や制約はありません。


押印規定による実務上の取り扱い

定款に押印規定がある場合

法令上押印する必要がない書類でも、定款に押印規定がある場合は、それに従う必要があります。会社の定款をご覧いただき押印規定の有無をご確認ください。


定款に押印規定がない場合

定款に押印規定がない場合でも、紛争防止の観点から、会社の重要書類には役員が署名または記名押印することをお勧めします。
役員の署名または記名押印がないと、文書の真正な成立が推定されず、紛争時の証明が困難になるおそれもあります。

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・本店移転(管轄内移転・管轄外移転)
・役員変更(新任、辞任、重任、退任)
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GVA 法人登記で作成できる変更登記書類(役員就任の場合)

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 就任承諾書
  • 取締役会議事録
  • 取締役決定書
  • 登記申請書
  • 定款
  • 印鑑届書


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執筆者

執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

本Webサイト内のコンテンツはGVA 法律事務所の監修のもと、BtoBマーケティングおよび司法書士事務所勤務経験者が所属する編集部が企画・制作しています。

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