株式会社では、会社の役員に変更が生じることは、少なくないことでしょう。
では、たとえば「現在の取締役を解任して、別の人を取締役として会社に迎えたい」といった場合には、どのような手続きをとればよいのでしょうか?
また、取締役の選任・解任が行われたときの役員変更の登記申請は、どのような形で進める必要があるのでしょうか。
本記事では、取締役の選任・解任の手続きと登記申請方法について、解説していきます。
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取締役の選任とは?
まず、取締役の選任の意味と選任手続きについて、ご説明していきます。
1-1.取締役の選任とは
取締役は、会社の業務執行の決定に関与し、業務執行を行う重要な会社の機関です。
取締役の選任とは、株主総会の決議で取締役を選ぶことです。取締役を決める方法にはいくつかありますが「選任」という場合は株主総会での決議を指します。
なお、取締役の人数は、取締役会非設置会社では1名以上、取締役会設置会社では3名以上が必要となります。
1-2.取締役の選任手続き
取締役は、株主総会の決議で選任されます。取締役選任権付種類株式を発行している非公開会社では、種類株主総会の決議で選任します。そして、就任の効力が生じるためには、選任された人の就任承諾も必要になります。
株主総会の普通決議は、原則として、議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、その出席株主の議決権の過半数の賛成(必要賛成数)があることが必要になりますが、株主総会の普通決議の定足数については、定款で軽減したり完全になくしたりすることも可能です。
しかし、役員選任の場面では、定款によっても、定足数を株主の議決権の3分の1未満にすることはできないとされています。
なお、2人以上の取締役を同時に株主総会で選任する場合には、定款に別段の定めがない限り、株主の請求があれば、少数派の株主の意向を反映しやすい累積投票の方法による選任が行われる場合もあります。
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取締役の解任とは?
続いて、取締役の解任の意味と解任手続きについて、ご説明していきます。
2-1.取締役の解任
取締役の任期は、原則として、選任後2年以内の最終の事業年度に関する定時株主総会までとされます。
取締役の解任とは、取締役の任期の途中で、会社が取締役を辞めさせることをいいます。
取締役と会社は委任関係にあり、正当な理由がなくても、会社は取締役を解任することができます。もっとも、正当な理由がなければ、会社は、解任によって生じた損害について賠償する責任はあります。
2-2.取締役の解任手続き
取締役の解任は、原則として、株主総会の普通決議で行います。解任の普通決議では、選任時と同様に、定款によっても定足数を株主の議決権の3分の1未満にすることはできないとされています。
例外として、次のケースでは、取締役の解任に関して株主総会の特別決議が必要とされます。
・累積投票で選任された取締役を解任するケース
・監査等委員になっている取締役を解任するケース
これらのケースでは、累積投票制度の趣旨や監査等委員になっている役員の地位の独立性を守る必要があるためです。
また、取締役の解任は、株主からの解任の訴えが認容・確定することによっても可能です。なお、解任の訴えは、取締役の職務執行に不正行為や法令・定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、解任の議案が株主総会で否決されたときに提起が可能になります。
取締役の選任に関する登記申請方法
取締役の選任・解任が生じた場合には、登記事項に変更が生じるため、役員変更登記の申請が必要になります。では、取締役の選任に関する登記申請について、見ていきましょう。
3-1.取締役の選任に関する登記申請書
取締役の選任による役員変更の登記申請書には、次のような記載が必要になります。
「登記の事由 取締役の変更」
「登記すべき事項 令和〇年〇月〇日取締役△△就任」
「登録免許税 金3万円(資本金の額が1億円以下の会社は1万円)」
「添付書面
株主総会議事録 1通
株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト) 1通
就任承諾書 1通
本人確認証明書(または印鑑証明書) 1通
委任状 1通」
登記すべき事項には、取締役の氏名と就任した旨と就任年月日の記載が必要になります。就任年月日は、選任決議と就任承諾の効力発生日のいずれか遅い方です。
登録免許税は、申請件数1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社が申請するときには1万円)です。
3-2.取締役の選任登記の添付書面
取締役の選任による役員変更登記では、添付書面で「選任の事実」と「就任承諾」について証明する必要があります。
そのため、上記の申請書にも添付書面で記載があるように、「(種類)株主総会議事録」と「取締役の就任承諾書」の添付が必要になります。
もっとも、取締役の就任承諾の事実が株主総会の議事録の記載から明らかになる場合には、議事録の記載を援用して就任承諾書とすることができる場合もあります。
なお、取締役会非設置会社であれば、再任の場合を除いて、就任承諾書に押印した印鑑についての市区町村長の作成した「印鑑証明書」の添付が必要です。
この「印鑑証明書」の添付が不要なケースなどでは、取締役の「本人確認証明書」の添付が必要になります。
また、取締役の選任に関する登記では、「株主リスト」や代理人申請であれば「委任状」の添付も必要です。
取締役の解任の登記申請方法
取締役が解任の訴えによって解任された場合には、登記は嘱託でなされるので申請は必要ありません。一方、株主総会決議によって解任された場合には、登記申請が必要です。
4-1.取締役の解任に関する登記申請書
取締役の解任による役員変更の登記申請書には、次のような記載が必要になります。
「登記の事由 取締役の変更」
「登記すべき事項 令和〇年〇月〇日取締役△△解任」
「登録免許税 金3万円(資本金の額が1億円以下の会社は1万円)」
「添付書面
株主総会議事録 1通
株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト) 1通
委任状 1通」
登記すべき事項には、取締役の解任には本人等の承諾は必要ないので、株主総会で解任決議された年月日を記載します。
4-2.取締役の解任登記の添付書面
取締役の解任登記には、「株主総会議事録」と「株主リスト」、代理人による申請の場合は「委任状」の添付が必要になります。株主総会議事録は、取締役が解任された事実を証明するために添付する必要があります。
まとめ
本記事では、取締役の選任・解任の手続きと登記申請方法について、解説していきました。取締役の選任や解任は、基本的に株主総会の普通決議によって行うことができますが、定足数に注意して手続きを進める必要があります。
また登記申請についても、変更が生じたときから2週間以内が登記期間となっているので、できるだけ速やかに行うことが大切です。
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