代表取締役が任期中に辞任の意思表示をした場合には登記申請が必要になります。
この場合、会社の特定の機関の有無や取締役の辞任の意思表示の有無によって手続きの内容が異なってきます。
この記事では代表取締役の辞任に伴う社内手続きや登記申請方法について解説していきます。
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代表取締役が辞任したら登記申請が必要になる
会社法第915条第1項では、以下のように規定されています。
会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
上記に掲げる事項には、取締役や代表取締役、監査役などの役員である旨が含まれています。
役員の就任や辞任などによって変更が生じた場合には、変更があった日から2週間以内に登記手続が必要になります。登記申請を忘れていると、100万円以下の過料を科されることがあります。
つまり、代表取締役の辞任には登記が必要になります。登記手続は、本店所在地を管轄する法務局で登記申請書と添付書類を提出することによって行います。
添付書類となる辞任を証する書面は状況に応じて異なりますので後述します。
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代表取締役の辞任申請は、登記申請書のほかに株主総会議事録や株主リストなど必要書類が多く、これらの書類を自力で正確にすべて作成することは手間や労力がかかる作業です。
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代表取締役の辞任に必要な手続きとは
代表取締役のみ辞任(取締役としては留まる)の場合、代表取締役の選任方法により、辞任の意思表示のみで辞任できるケース、代表取締役のみの辞任ができないケース、株主総会の決議が必要なケースがあり、それぞれ必要な手続きをおこないます。また代表取締役が1人しかいない場合や、定款で定められた員数が欠ける場合は後任者の選定が必要となり、後任者が決まるまでは権利義務代表取締役としてその職に留まる必要があります。後任者が決まり次第、辞任と就任の登記を行います。
代表取締役の地位のみ辞任したい場合
代表取締役の地位のみ辞任したい場合には、取締役会設置会社と取締役会非設置会社で手続きや登記申請の内容が異なります。
取締役会設置会社
取締役会設置会社では、株主総会において取締役を選任し、取締役会において代表取締役を選定します。そのため、代表取締役と取締役の地位は分離しているので、代表取締役の地位のみ辞任することが可能です。この場合は、会社に代表取締役の辞任届を提出することで辞任できます。
取締役会設置会社において、代表取締役の地位のみ辞任した場合の登記手続きで提出する辞任を証する書面は、辞任届となります。
取締役会非設置会社
取締役会非設置会社では、さらに状況に応じて以下のケースに分かれます。
- 代表取締役が取締役の互選によって選定される
- 定款や株主総会の決議によって、代表取締役を選定する
代表取締役が取締役の互選によって選定される場合には、代表取締役を辞任する意志表示によって代表取締役の地位のみ辞任することが可能です。この場合は、取締役会設置会社と同様に、代表取締役と取締役の地位は分離しているからです。
登記申請に際して提出する辞任を証する書面は、辞任届と「代表取締役は取締役の互選によって選定する」旨を規定した定款が必要となります。
一方、定款や株主総会の決議によって、代表取締役を選定する場合には、代表取締役の意思表示のみで代表取締役の地位のみ辞任することができません。
定款や株主総会で代表取締役に選定された場合には、定款や株主総会の決議によって代表権を有する取締役として選任されており、この場合には代表取締役の地位と取締役の地位が一体となっていますので、代表取締役の地位を辞任する意思表示のみでは、代表取締役の地位のみを辞任することができません。
この場合には、定款で選定された代表取締役は定款の変更によって、株主総会の決議によって選定された代表取締役は株主総会の承認によって、代表取締役の地位のみ辞任することができます。
登記申請に際しての辞任を証する書類は以下のとおりです。
・定款で選定された代表取締役
定款変更決議をした株主総会議事録
・株主総会の決議によって選定された代表取締役
代表取締役のみの辞任を決議した株主総会議事録
代表取締役が辞任した際の議事録テンプレート
代表取締役の辞任を決議した株主総会議事録は法務局のページからダウンロードができます。
法務局の代表取締役辞任の株主総会議事録のひな形
代表取締役と取締役の地位を辞任したい場合
代表取締役の地位だけではなく、取締役の地位を同時に辞任したい場合には取締役会設置会社と取締役会非設置会社を問わず、また代表取締役の選定方法にかかわらず、取締役及び代表取締役を辞任する意思表示で足ります。
登記申請に際しての辞任を証する書類は取締役の辞任届となります。
代表取締役の辞任届のひな型はこちらで確認ください。
関連記事:代表取締役の辞任届の書き方・ひな形を紹介
権利義務取締役は辞任の登記をすることができません
会社法第346条第1項には以下のとおり規定されています。
役員(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役又は会計参与。以下この条において同じ。)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。
原則として、取締役や代表取締役の地位の辞任については、委託者と受任者という関係上いつでも可能です。しかし、取締役の員数を欠くことによって、会社の円滑な運営が停滞したり、株主・取引先に不測の事態を与えないために上記のように権利義務取締役を規定しています。
この場合、権利義務を有する取締役がその地位を辞任したいと意思表示をしたとしても、取締役の員数を満たす新しい取締役が就任するまでは職務を果たす必要があり、辞任登記もすることができません。
この点について、最判昭和43年12月24日は以下のように判示しています。
株式会社の取締役または監査役の任期満了または辞任による退任により法律または定款に定める取締役または監査役の員数を欠くに至つた場合においては、右退任による変更登記は、あらたに選任された取締役または監査役の就職するまで許されない。
このように取締役の地位を辞任することで権利義務取締役となる場合には、後任となる取締役の就任が必要です。取締役の選任は株主総会の普通決議の決議事項ですので、出席した株主の議決権の過半数が必要になります。
また、代表取締役についても取締役と同様に、その地位について辞任の意思表示をした場合でも代表取締役を欠く場合には、代表取締役としての権利義務を有するものと解されています。
まとめ
代表取締役や取締役、監査役などの地位は会社法で規定されている地位です。地位に変更が生じた場合には株主総会など会社内での手続きや法務局での役員変更登記の申請が必要になります。役員変更登記を失念すると、最大で100万円の制裁金(過料)を科されることがありますので、注意が必要です。
役員変更登記は登記申請書と添付書類を本店所在地を管轄する法務局に提出して行います。添付書類については取締役会の設置の有無や代表取締役の選定方法によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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