役員変更登記は、企業の経営体制の変更を法的に反映させる重要な手続きです。役員の新任や退任、再任など、役員の異動が生じた際には、速やかに登記を行う必要があります。
会社の変更登記の中では比較的頻度の高い手続きですが、どの程度の予算を見込めばよいのか、どんな費用項目があるのか、専門家への依頼は必要なのかなど不明という方もいらっしゃると思います。
この記事では、役員変更登記にかかる費用を種類ごとに、登録免許税、専門家への報酬、その他の関連費用など一覧形式で紹介します。
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役員変更登記の対象となる登記種類
役員変更登記は、役員に関するどんな変更が対象かについて解説します。
株式会社や有限会社の役員に関わる登記申請が対象
役員変更登記は、おもに株式会社や有限会社の役員に関する変更を対象としています。基本的には取締役の就任、辞任、退任、重任などの役員変更を指します。監査役を置いている会社であれば、監査役も役員として登記しなければなりません。
任期の規定が異なる役員の種類によって、登記の発生頻度は変わります。任期については、伸長できる場合もあれば、有限会社のように任期がない場合もあるなど、会社の種類によってルールが異なります。
なお、合同会社には「役員」という概念はありません。しかし、役員に相当する経営上の役割として代表社員や業務執行社員が設けられており、これらの変更は変更登記の対象となります。
役員変更の多くは株主総会の決議を経て決定されますが、辞任や死亡など、決議を経ないケースもあります。
役員変更の種類
役員変更登記の対象は、代表取締役と取締役が中心となります。監査役を置いている会社の場合は、監査役も対象に含まれます。具体的な変更の種類には、次のようなものがあります。
1. 就任(新任):新たに役員が就任する場合
2. 辞任:役員が自ら職を辞する場合
3. 退任:任期満了などにより役員を退く場合
4. 重任:任期満了後に再び同じ役員に就任する場合
5. 解任:株主総会の決議などにより役員の職を解く場合
6. 死亡:役員が死亡したことにより退任となる場合
7. 住所変更:代表取締役の住所が変更された場合(有限会社では代表でない取締役も住所表示の対
象)
8. 氏名変更:役員の氏名が変更された場合
これらの変更は、会社の運営や対外的な関係に重要な影響を与えるため、発生後は2週間以内に登記を行う必要があります。適切な登記手続きを行うことで、会社の信頼性を維持し、スムーズに事業を継続できます。
役員変更登記にかかる費用一覧
役員変更登記にはさまざまな費用が発生します。費用の目安を把握しておけば、スムーズに手続きを進められます。
役員変更登記の費用の構成
役員変更登記にかかる費用には、おもに「法務局までの交通費や郵送費」「司法書士など専門家への報酬」「登録免許税」に分けられます。一般的な費用としてまとめます。
①法務局までの交通費や郵送費
これらは全ての登記申請で共通して発生する費用ですが、比較的少額です。数百円〜数千円程度を見込んでおくといいでしょう。
②司法書士など専門家への報酬
専門家に依頼する場合、その報酬が必要となります。報酬額は、依頼する専門家や、一度に申請する登記の内容によっても変わることがあります。日本司法書士会連合会が司法書士の報酬に関するアンケートをまとめているので紹介します。
このアンケートでは、全国を8地区に分けて集計されています。役員変更に関する報酬の全体の平均値は、27,029円~31,335円で、3万円程度となっています。また、低額者10%の平均は14,216円~18,800円、高額者10%の平均は40,735円~58,185円となっていることから、司法書士によって幅があることがわかります。
役員変更に関する報酬
地区 | 全体の平均値 | 低額者10%の平均 | 高額者10%の平均 |
北海道地区 | 27,029円 | 18,378円 | 40,735円 |
東北地区 | 27,921円 | 17,308円 | 47,775円 |
関東地区 | 28,851円 | 14,216円 | 47,506円 |
中部地区 | 30,109円 | 18,800円 | 58,185円 |
近畿地区 | 30,343円 | 17,329円 | 50,997円 |
中国地区 | 30,978円 | 18,262円 | 54,525円 |
四国地区 | 31,335円 | 18,571円 | 51,856円 |
九州地区 | 28,303円 | 17,577円 | 45,952円 |
※取締役3名,代表取締役1名,監査役1名の取締役会設置会社たる株式会社において定時株主総会終結により役員全員が任期満了し改選した場合の変更登記手続の代理業務を受任し株主総会議事録,取締役会議事録等の全ての書類を作成し,登記申請の代理をした場合
※出典:日本司法書士会連合会「司法書士の報酬」
このアンケート結果は目安です。実際の費用は案件の複雑さや地域によって大きく異なる可能性があります。なお、自分で書類を作成し申請する場合は、司法書士への報酬は不要になります。
③登録免許税
登録免許税は、資本金1億円以下の場合1万円、1億円超の場合3万円となります。役員変更の種類(就任、新任、辞任、退任、重任、解任、死亡、代表取締役の住所変更、氏名の変更)に関わらず、同額となります。
なお、登録免許税は、「登録免許税納付用台紙」に収入印紙を貼って納付する方法などがあります。
上記のほか、変更登記の他に役員変更後に必要となる手続きに関連して、「コーポレートサイトの情報更新・お知らせ」「名刺の修正」などが発生します。
株式会社の役員変更登記にかかる費用
前述のアンケート結果からだけでは、株式会社の特定の役員変更ごとにかかる費用は読み取れませんが、役員変更の種類(就任、新任、辞任、退任、重任、解任、死亡、代表取締役の住所変更、氏名の変更)によって報酬額が変わる可能性があります。
前述のアンケート結果から、3万円を目安に、2万円~6万円程度の幅が出る可能性があります。依頼内容によっても異なりますので、検討している司法書士がいれば、問い合わせてみることをおすすめします。
有限会社の役員変更登記にかかる費用
有限会社についても、前述のアンケート結果から、役員変更登記にかかる費用について知ることはできません。しかし、司法書士のサイトを個別に調査しても、会社の種類によって費用を区別している事務所は少なく、司法書士の手間を考えると、株式会社の場合と同水準になる可能性が高いと思われます。
このことから、有限会社の役員変更登記にかかる費用についても、3万円前後かかると考えられます。サービス内容や依頼内容の違いを確認して、依頼先を絞り込むといいでしょう。
役員変更後に必要な手続き
役員変更時には登記申請以外にも手続きが必要です。
役員が変更となるため、コーポレートサイトの変更や取引先へのお知らせをする必要があります。コーポレートサイトには必要に応じて、新任役員のあいさつ文や経歴を掲載します。またおもな取引先に役員変更の案内を送付します。
役員変更が代表取締役なら、署名や印鑑の変更もしなければなりません。法人税や地方税、健康保険、雇用保険などに関する変更届出を行います。銀行印の変更手続きや許認可等の変更手続きについても確認しておきましょう。
役員変更にかかる費用と役員変更登記に必要な書類を表にまとめましたので、参考にしてください。
<役員変更にかかる費用一覧>
費用項目 | 金額 |
法務局までの交通費や郵送費 | 要確認(数百円〜数千円程度) |
司法書士など専門家への報酬 | 約3万円(1.4万円〜5.8万円の幅あり) |
登録免許税 | 資本金1億円以下:1万円 資本金1億円超:3万円 |
コーポレートサイトの情報更新費用 | 案件により変動 |
取引先への通知費用 | 案件により変動(郵送料、印刷代等) |
印鑑変更関連費用(代表取締役変更時) | 個別に見積もりが必要 |
各種変更届出費用 | 変動あり(無料〜数千円程度) |
<役員変更登記に必要な書類>
書類名 | 内容 |
登記申請書 | 会社法人等番号、商号、本店、登記の事由、登記すべき事項などを記載 |
登録免許税納付用台紙 | 登録免許税の納付を証する書類 |
※登記申請書のひな形や記載例は、法務局のサイトからダウンロードすることもできます。
※登録免許税は、収入印紙を登録免許税納付用台紙に貼り付けて納付します。
添付書類 | 通数 | 備考 |
株主総会議事録 | 1通 | |
株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト) | 1通 | |
取締役会議事録 | 1通 | |
就任承諾書 | ー | 新任役員の数に応じて |
定款、株主総会議事録又は監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあることを証する書面 | 1通 | いずれか1つ |
委任状 | 1通 | 代理人に申請を委任した場合のみ |
※会社の形態(株式会社、有限会社)によって、必要書類が異なる場合があります。
※変更の内容(就任、退任、再任など)によっても、必要書類が変わってきます。
※実際の登記申請の際には、管轄の法務局に事前に確認するか、司法書士などの専門家に相談することをお勧めします。
役員変更登記の費用のうち、司法書士報酬は3万円が目安
役員変更登記の費用には、おもに法務局への交通費・郵送費、専門家への報酬、登録免許税があります。司法書士に依頼する場合、報酬として3万円ほどかかるとみられます。専門家への依頼は、案件の複雑さや地域によって異なり、アンケート結果から、1万4千円から5万8千円まで幅があることがわかりました。
自身で変更登記を行う場合は、専門家への報酬については抑えられます。ただし、法的な知識や経験が必要となり、また時間もかかります。専門家に依頼すれば、確実性が高まり、自社の業務に集中できるメリットがあります。費用対効果を考慮し、自社の状況に合わせて判断することが大切です。
GVA 法人登記なら、役員変更登記に必要な書類を10,000円で作成、法務局に行かずに申請できます
役員の就任・重任・退任・辞任が発生した場合は、役員変更登記の申請が必要です。決議後(辞任の場合は辞任の意思が会社に到達した時点から)2週間以内に申請をしなければなりませので、予め役員変更登記の申請方法を準備しておくと良いでしょう。
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※GVA 法人登記では役員退任のみの書類作成は行っていませんのでご了承ください。
GVA 法人登記が対応している登記種類
・本店移転(管轄内移転・管轄外移転)
・役員変更(新任、辞任、重任、退任)
・役員の住所変更
・募集株式の発行
・商号変更
・目的変更
・株式分割
・剰余金等の資本組入れ
・ストックオプション
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- 株主総会議事録
- 株主リスト
- 就任承諾書
- 取締役会議事録
- 取締役決定書
- 登記申請書
- 定款
- 印鑑届書
※役員就任・重任・退任・辞任で作成される処理が異なります。上記は役員就任の場合です。
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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