取締役の退任・辞任・解任の違いと必要書類・手続きを解説

役員変更
投稿日:2026.08.18
取締役の退任・辞任・解任の違いと必要書類・手続きを解説

「退任」「辞任」「解任」は、日常会話ではどれも「役員を辞める」という意味で使われます。しかし登記手続きの上ではまったく別の扱いで、必要書類も株主総会決議が不要か必要かも変わります。
 
たとえば辞任には株主総会の決議が不要ですが、解任には必要です。任期満了による退任では定時株主総会議事録を添付しますが、辞任では辞任届を添付します。ここを取り違えると、法務局で補正を求められることになります。
 
この記事では、4つのケースの違いを一覧表で整理したうえで、それぞれの手続きと必要書類を解説します。

目次

取締役の退任・辞任・解任の違い【一覧表】

まず全体像です。どのケースにあたるかを確認してください。

項目

任期満了による退任

辞任

解任

死亡

きっかけ

任期の満了

本人の意思表示

会社側の意思

本人の死亡

効力が生じるとき

定時株主総会の終結時

辞任届が会社に到達した時

株主総会の決議時

死亡時

株主総会の決議

不要

不要

必要

不要

主な添付書類

定時株主総会議事録・株主リスト

辞任届

臨時株主総会議事録・株主リスト

死亡届

登記の原因

退任

辞任

解任

死亡

取締役の辞任とは

任期の途中で、本人の意思により役員を辞めることです。業績不振、経営陣との対立、個人的な事情など理由はさまざまですが、理由を問わず辞任できます。

辞任は本人の一方的な意思表示で効力が生じるため、株主総会の決議は必要ありません。会社の承諾も不要です。

意思表示そのものは口頭でも成立しますが、登記申請には辞任の事実を証明する書面が必要になります。実務では辞任届を作成します。

取締役の退任とは

任期が満了して、役員の地位を失うことです。取締役の任期は原則2年(監査役は4年)で、選任後その任期の最終年度に関する定時株主総会の終結をもって満了します。

退任には本人の意思も会社の決議も必要ありません。任期が来れば自動的に地位を失います。

同じ人が引き続き役員を務める場合は「役員重任」の手続きが必要になります。

取締役の解任とは

会社側の意思により、役員の職を解くことです。辞任が本人の意思であるのに対し、解任は会社からの一方的な措置である点が異なります。

解任には株主総会の決議が必要です。決議要件は役員の種類によって異なります。

  • 取締役の解任 … 株主総会の普通決議(会社法339条1項、341条)
  • 監査役の解任 … 株主総会の特別決議(会社法309条2項7号)

 

取締役の解任は普通決議で足りますが、定款で定足数を3分の1未満に引き下げることはできません。監査役の解任に特別決議が求められているのは、監査役の地位の独立性を守るためです。

なお、旧商法では取締役の解任も特別決議とされていました。現在も「特別決議が必要」と記載しているWebサイトが見られますが、会社法では普通決議に改められています。

取締役の死亡・資格喪失の場合

役員が死亡した場合も、地位を失うため登記が必要です。株主総会の決議は不要で、死亡の事実を証明する書面(死亡届)を添付します。

破産手続開始の決定を受けたり、法律上の欠格事由に該当した場合も、役員の地位を失います。

どのケースでも共通すること

役員変更登記の申請期限は2週間以内

役員に変更が生じたときは、2週間以内に変更の登記を申請しなければなりません(会社法915条1項)。

 

期限を過ぎてからの申請は「登記懈怠(とうきけたい)」にあたり、代表者個人に対して100万円以下の過料が科される可能性があります(会社法976条1号)。過料は会社ではなく代表者個人に科される点に注意してください。

起算日はケースによって異なります。

 

ケース

起算日

任期満了による退任

定時株主総会の終結日

辞任

辞任届が会社に到達した日

解任

株主総会の決議日

死亡

死亡日

役員変更登記の登録免許税は1万円

役員変更登記の登録免許税は、資本金1億円以下の株式会社で1万円、1億円を超える場合は3万円です。

複数の役員に変更があっても、同時に申請すれば1申請あたり1万円で済みます。退任と就任を同時に申請する場合も同様です。

納付方法は、登記申請書に収入印紙を貼付する方法が一般的です。金融機関で納付し、その領収証書を貼付することもできます。

役員変更登記申請書の書き方

登記申請書の記載事項は、4つのケースでほぼ共通です。

  • 会社法人等番号 … わかる場合のみ記載
  • 商号 … 会社名
  • 本店 … 会社の住所
  • 登記の事由 … 「取締役の変更」
  • 登記すべき事項 … 資格・氏名・原因年月日(下記参照)
  • 登録免許税 … 1万円(資本金1億円超は3万円)
  • 添付書類 … ケースにより異なる(次章参照)
  • 申請人 … 会社の本店・商号・代表取締役の住所氏名を記載し、法務局に登録した会社実印を押印
  • 申請先 … 本店所在地を管轄する法務局

ケースによって変わるのは、「登記すべき事項」の原因年月日の末尾だけです。

 

ケース

記載例

任期満了による退任

令和〇年〇月〇日 退任

辞任

令和〇年〇月〇日 辞任

解任

令和〇年〇月〇日 解任

死亡

令和〇年〇月〇日 死亡

代理人に申請を依頼する場合は、代理人の住所氏名を記載して認印を押印します。この場合、代表取締役の押印は不要です。

ケース別の必要書類

添付書類はケースごとに異なります。

書類

任期満了退任

辞任

解任

死亡

変更登記申請書

必要

必要

必要

必要

定時株主総会議事録

必要

不要

不要

不要

臨時株主総会議事録

不要

不要

必要

不要

株主リスト

必要

不要

必要

不要

辞任届

不要

必要

不要

不要

死亡届

不要

不要

不要

必要

委任状

代理人申請の場合のみ

代理人申請の場合のみ

代理人申請の場合のみ

代理人申請の場合のみ

後任の役員を選任する場合は、いずれのケースでも株主総会議事録・株主リスト・就任承諾書が別途必要になります。

取締役が任期満了で退任する場合

定時株主総会で任期が満了するため、その総会の議事録を添付します。議事録には、任期満了により退任した旨を記載します。

株主総会議事録を添付する場合は、株主リストもあわせて必要です。議決権数の上位10名または議決権割合が3分の2に達するまでの株主を記載します。

取締役が任期途中に辞任する場合

添付するのは辞任届です。株主総会議事録も株主リストも必要ありません。

辞任届には、辞任する日付・会社名・辞任する取締役の氏名を記載し、押印します。

取締役を解任する場合

臨時株主総会議事録と株主リストを添付します。議事録には、解任を決議した旨を記載します。

前述のとおり、取締役の解任は普通決議、監査役の解任は特別決議です。議事録に記載する決議の要件を取り違えないよう注意してください。

取締役が死亡した場合

死亡届を添付します。会社宛に提出された死亡届のほか、戸籍謄本や死亡診断書の写しでも差し支えありません。

法務局の公式様式をダウンロードする

法務局が登記申請書のひな形と記載例を公開しています。自分で申請する場合は、こちらを使うのが確実です。

議事録や辞任届のひな形はGVA 法人議事録でも無料配布しています。

辞任届の書き方

辞任届に記載するのは次の項目です。

  • 提出日
  • 宛名(会社名・代表取締役名)
  • 辞任する旨と辞任日
  • 辞任する本人の氏名・押印

書式に法律上の決まりはありませんが、辞任日が明確に読み取れることが重要です。登記申請書に記載する原因年月日と一致させます。

書き方の詳細とひな形は役員の辞任届の記載項目・書き方とひな形(テンプレート)を解説をご覧ください。代表取締役の辞任届については代表取締役・役員の辞任届の書き方・テンプレートを紹介で解説しています。

代表取締役が辞任する場合は印鑑証明書が必要になることがあります

代表取締役が辞任する場合、辞任届に法務局へ登録している会社実印を押印していないときは、辞任する本人の個人実印を押印したうえで、市区町村長が作成した印鑑証明書の添付が必要です(商業登記規則61条8項)。

取締役の辞任とは扱いが異なる点なので、事前に確認しておくと補正を避けられます。

退任後に必要な手続き

後任を選任する場合は就任登記もセットで必要

退任・辞任により空席が生じ、新たに役員を選任する場合は、退任の登記と就任の登記を同時に申請します。

就任登記には、株主総会議事録・株主リスト・就任承諾書が必要です。新任の取締役については本人確認証明書、代表取締役については印鑑証明書が求められる場合もあります。

詳しくは取締役の新任・就任登記の必要書類は?選任方法についてもわかりやすく解説していますをご覧ください。

取締役が法定の人数を下回る場合は注意が必要です

辞任や退任によって、取締役が会社法や定款で定める人数を下回ることがあります。取締役会設置会社では3名以上、取締役会非設置会社では1名以上が必要です。

この場合、後任者が就任するまでの間、辞任した取締役が引き続き取締役としての権利義務を負います(会社法346条1項)。これを「権利義務取締役」といいます。

 

権利義務取締役にあたる場合、辞任の登記は受理されません。後任者の就任登記と同時に申請することになります。

一人取締役の会社で辞任を検討している場合につまずきやすいポイントです。

よくある質問

Q. 「退任」と「辞任」はどちらを使えばよいですか

登記手続きでは明確に使い分けます。任期満了で地位を失う場合が「退任」、任期の途中で本人の意思により辞める場合が「辞任」です。登記申請書の原因年月日にもこの区別が反映されます。

なお「退職」は雇用関係を前提とした言葉で、役員には使いません。慣習的に「役員の退職手続き」と呼ばれることはありますが、登記上は退任または辞任となります。

Q. 辞任届に押す印鑑は実印と認印のどちらですか

取締役の辞任届については、法律上の定めはありません。ただし代表取締役が辞任する場合は、法務局に登録した会社実印を押印するか、個人の実印を押印して印鑑証明書を添付する必要があります(商業登記規則61条8項)。

Q. 登記申請の期限である2週間を過ぎてしまいました

期限を過ぎても申請自体は可能です。ただし登記懈怠として過料の対象になり得ます。放置するほどリスクが高まるため、気づいた時点で速やかに書類を準備して申請することをおすすめします。

Q. 複数の役員が同時に退任する場合、登録免許税は人数分かかりますか

同時に申請すれば、人数にかかわらず1申請あたり1万円(資本金1億円超は3万円)です。退任と就任を同時に申請する場合も変わりません。

Q. 監査役の場合も手続きは同じですか

基本的な流れは同じですが、任期が原則4年である点と、解任に特別決議が必要である点が異なります。詳しくは監査役の退任・辞任登記の必要書類をご覧ください。

まとめ

取締役の退任・辞任・解任で押さえるべきポイントは3つです。

  • 4つのケースで添付書類が変わる。 辞任は辞任届、解任は臨時株主総会議事録と株主リスト、任期満了退任は定時株主総会議事録と株主リスト、死亡は死亡届
  • 株主総会の決議が必要なのは解任だけ。 取締役の解任は普通決議、監査役の解任は特別決議
  • 申請期限は2週間以内。 過ぎると代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性がある

登記申請書そのものは4ケースで共通しており、変わるのは原因年月日の末尾だけです。まずは自社がどのケースにあたるかを確認するところから始めてください。

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執筆者

執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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