取締役社長とは?代表取締役社長や執行役員社長との違いを解説

商業登記の基礎知識
投稿日:2025.07.27
取締役社長とは?代表取締役社長や執行役員社長との違いを解説

会社の成長に伴い、創業期には曖昧だった役員の役割分担を明確にし、組織体制を再構築する必要に迫られる経営者の方も多いのではないでしょうか。特に、ボードメンバーの構成を考える上で、「取締役」と「代表取締役」の違いは、組織の意思決定や対外的な責任において重要です。
本記事では、「取締役社長」と「代表取締役社長」の違いについて、権限や役割、法的な位置づけ、そして変更手続きの手間を分かりやすく解説します。

取締役社長とは

まず、「取締役社長」という肩書きを分解して理解することが重要です。これは、「取締役」という会社法で定められた役職と「社長」という社内での序列や役割を示す職位(肩書)を組み合わせたものです。

「取締役」の法的役割

会社法において、「取締役」は株式会社に必ず置かなければならない役員です(会社法326条1項)。取締役は、会社の業務執行に関する意思決定を行う機関である「取締役会」(設置している場合)の構成員となります。取締役会に出席し、会社の重要な業務執行について議決権を行使することが、その主たる役割です(会社法362条)。
つまり、取締役であるということは、会社の経営方針や重要事項の決定に参画する権限と、それに対する責任(善管注意義務や忠実義務など)を負います。

「社長」という社内の肩書き

一方、「社長」という名称は、会社法には規定がありません。これは法律上の役職ではなく、あくまで会社が内部的に定めた職制上の呼称です。一般的には、会社の業務執行における最高責任者として、従業員を指揮監督する立場にある人物が「社長」となるケースが多いでしょう。

「取締役社長」の権限と役割

以上を踏まえると、「取締役社長」とは、取締役として会社の経営の意思決定に参画しつつ、社内的には社長として業務執行のトップを担う人物と定義できます。
しかし、ここで最も重要な点は、「取締役社長」は、原則として会社を代表する権限(代表権)を持っていないということです。単独で会社の名において契約を締結したり、重要な財産の処分を行ったりすることはできません。これらの行為は、後述する「代表取締役」の専権事項です。

取締役社長と代表取締役社長の違い

「取締役社長」と「代表取締役」の最大の違いは、前述の通り「代表権」の有無です。以下がその比較表となります。

比較項目

代表取締役社長

取締役社長

法的根拠

会社法に定められた機関

「取締役」は会社法上の役員、「社長」は社内の職位

代表権

あり(会社を代表して法律行為を行う権限)

なし

主な役割

・対外的な会社の代表
・契約締結などの最終的な意思決定
・会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為

・取締役会での議決権行使
・社内における業務執行の指揮命令

登記

氏名・住所が商業登記簿に登記される

「取締役」としては登記されるが、「社長」の肩書きや代表権がないことは登記されない

選任方法

取締役会または株主総会などで取締役の中から選定される

取締役として株主総会で選任され、社内規定に基づき「社長」の職位に就く

取締役社長と代表取締役社長がいるケースはある?

理論上は、「代表取締役A」と、代表権のない「取締役社長B」という二者が併存することは可能です。例えば、創業者である会長が代表取締役として対外的な活動や大局的な経営判断を行い、後継者である社長が取締役として社内の実務を取り仕切る、といったケースが考えられます。
しかし、実務上、このような体制を採用する企業は稀です。その理由は、対外的・内的な混乱を招くリスクがあるためです。

一般的に「社長」という肩書きは、会社のトップであり、代表権を持つ人物だと認識されています。そのため、代表権のない「取締役社長」がいると、取引先が「契約の相手方は一体誰なのか?」と混乱する可能性があります。
また、社内においても、「代表取締役の指示」と「社長の指示」が異なった場合に、どちらを優先すべきか従業員が迷い、指揮命令系統が乱れる恐れがあります。

こうした混乱を避けるため、通常は「代表取締役社長」を一人(または複数人)置き、業務執行を分担する他の役員には「取締役副社長」「専務取締役」「常務取締役」といった、序列が分かりやすい肩書きを与えるのが一般的です。
なお、会社法では「代表取締役」を複数人置くことも可能です。この場合、各代表取締役が単独で会社を代表する権限を持つのが原則です。

「取締役社長」と「執行役員社長」の違い

会社によっては「執行役員社長」という役職を置くケースがありますが、これはどう違うのでしょうか?
「取締役社長」と「執行役員社長」は、どちらも会社のトップを示す肩書きですが、会社法における法的な立場が根本的に異なります。

執行役員社長は、会社法上の役員ではなく、あくまで業務執行の最高責任者である「従業員(労働者)」のトップという位置づけです。会社との関係は「雇用契約」またはそれに準ずる契約で、取締役会で決定された経営方針を実行に移す役割を担います。経営の意思決定そのものには、取締役を兼務しない限り関与しません。

この制度は、経営の「意思決定」と「業務執行」を分離し、迅速で効率的な経営を実現するために導入されています。最大の違いは、経営の意思決定者である「役員」か、業務執行の責任者である「従業員」かという法的な立場の差にあります。

役員の変更手続き

役員の肩書きを考える上では、その変更手続きの手間とコストも無視できません。

  • 取締役・代表取締役の変更
    • 手続き:取締役の選任・解任には株主総会の決議が、代表取締役の選定・解職には取締役会の決議(または定款の定め等)が必要です。これらは会社法に定められた厳格な手続きです。
    • 登記:選任や退任、氏名・住所の変更があった場合、2週間以内に法務局へ役員変更の登記申請が義務付けられています。
    • コスト:登記申請には登録免許税(資本金1億円以下の会社で1万円、それを超えると3万円)や、司法書士への報酬が発生します。

なお、GVA 法人登記なら、Web上で必要情報を入力するだけで取締役・代表取締役の変更登記書類を自動作成。専門知識がなくても最短7分で準備でき、あとは印刷・押印して法務局へ郵送するだけ。手続きの手間と時間を大幅に削減します。

  • 「社長」という職位の変更
    • 手続き:法律上の手続きは不要です。取締役会の決議や社内稟議など、会社が定めた内部ルールに従って変更できます。
    • 登記:登記は不要です。
    • コスト:法的なコストは発生しません。

このように、会社法上の役員の地位を変更するには法的な手続きとコストが伴いますが、社内の職位である「社長」の変更は比較的柔軟に行えます。

目的に必要な役割・権限を見極めて組織設計しましょう

ここまで見てきたように、「取締役社長」と「代表取締役社長」は、名前が似ているだけで、その法的な権限と責任は大きく異なります。代表権の有無という一点が、会社の対外的な信用や内部のガバナンスに決定的な影響を与えるのです。

会社のステージが上がり、ボードメンバーの増員や役割の見直しを行う際には、単に響きの良い肩書きを割り振るのではなく、それぞれの役職の法的な意味を正しく理解し、戦略的な組織設計を行いましょう。

【最短7分5000円~】GVA 法人登記なら法人の変更登記の必要書類をカンタン作成できます

法人の変更登記は、手続きごとに必要書類が異なるため、どの申請に何の書類が必要なのかを探すだけでも多くの時間が取られてしまいます。GVA 法人登記なら、変更情報を入力するだけで最短7分・5000円から、オンラインで変更登記に必要な書類の作成ができます。

GVA 法人登記は、株式、合同、有限会社の役員変更や本店移転登記など、10種類以上の変更登記に対応しており、複数の書類作成も可能です。



GVA 法人登記が対応している登記種類

・本店移転(管轄内移転・管轄外移転)
・役員変更(新任、辞任、重任、退任)
・役員の住所変更
・募集株式の発行
・商号変更
・目的変更
・株式分割
・剰余金等の資本組入れ
・ストックオプション

各登記種類の料金は、以下で説明しています。

\ 最短7分5000円~必要書類を作成 /





ステップに沿って入力するだけで必要書類の作成ができます

登記書類を作成する為には、現在の登記情報を確認し正確に入力する必要があります。

本来であれば、法務局にて有料で書類を取得し確認する必要がありますが、GVA 法人登記の、「登記情報自動反映サービス」をご利用いただきますと、システム内で現在の登記情報を無料で取得し、会社基本情報が書類作成画面に自動反映されます。登記知識のない方でもステップに沿って変更情報を入力するだけで簡単に登記書類の作成ができます。



GVA 法人登記で作成できる変更登記書類(例)

・登記申請書
・株主総会議事録
・株主リスト
・印鑑届出書
・就任承諾書(役員就任・重任)
・辞任届(役員辞任)
・準備金・剰余金の額に関する証明書(剰余金の資本組み入れ)
・総社員の同意書(合同会社)
・業務執行社員の同意書(合同会社)

さらにGVA 法人登記で登記書類を作成していただいた方全員に「登記申請手続きマニュアル」をお渡ししております。作成した登記書類の製版方法や、押印する場所についてすべてまとめておりますので、流れの通りに進めるだけで手続きを終えることができます。

オプションのかんたん郵送パックを利用すれば、書類作成後、押印し郵送するだけで登記申請ができるため、法務局に行かずに登記申請が可能です。仕事が忙しく法務局に行く時間がない方や、効率的に手続きを進めたい方におすすめです。

【期間限定】1,000円OFFクーポン配布中!

クーポン利用手順

GVA 法人登記の会員登録(無料)
②購入前のクーポンコード入力画面で【 Ug3JNAS7sB 】を入力





\Webでカンタン自分で変更登記/


執筆者

執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

本Webサイト内のコンテンツはGVA 法律事務所の監修のもと、BtoBマーケティングおよび司法書士事務所勤務経験者が所属する編集部が企画・制作しています。

GVA TECH株式会社では、「GVA 法人登記」だけでなくAI契約書レビュー支援クラウド「GVA assist」などのリーガルテックサービスを提供しています。

サービス詳細を見る