事業譲渡とM&Aの違いを解説

商業登記の基礎知識
投稿日:2024.08.14
事業譲渡とM&Aの違いを解説

大企業が事業拡大に向けて行うM&Aは、日頃ネットニュースや新聞で良く見るワードとして認識している方も少なくないのではないでしょうか。M&Aの手法はさまざまですが、特に活用されるのが事業譲渡と株式譲渡です。

中小企業でも近年は後継ぎ問題の解消方法として活用されるM&A。2023年8月1日に中小企業庁が公開している「中小M&A推進計画」の主な取組状況によると、中小企業M&Aは年間3〜4,000件ほど実施しており、年々増加傾向にあります。 

将来的にM&Aを行う可能性も決して低くありませんし、今のうちに基礎的な知識を身に付けていたほうが賢明でしょう。この記事では、混同しがちな事業譲渡とM&Aの違いや、事業譲渡以外のM&A手法を紹介します。

自分で変更登記をするなら司法書士監修のGVA 法人登記が便利です

必要情報をフォームに入力するだけでかんたん書類作成
費用と時間を抑えて変更登記申請したい方におススメです

【各リンクからお進みください】
①会員登録前に利用方法を確認できる無料体験実施中
②GVA 法人登記の料金案内(専門家に依頼する場合と比較できます)
③オンラインサービスを利用して登記手続きを検討されている方はこちら

事業譲渡とは?

事業譲渡とは、営んでいる事業の一部または全部を他社へ譲渡(売却)する手法です。譲渡する事業には資産も含み、土地や建物、従業員に加えて商標権や特許、取引先契約などの無形資産も売却対象に含みます。
なお、事業譲渡は「営業譲渡」とも呼ばれる場合がありますが、同義語と認識していただいて構いません。ここでは、事業譲渡が向いているケースや注意点を解説します。

事業譲渡に向いているのはどんな時?

事業譲渡が向いているケースとしては、下記があります。

・譲渡企業は経営戦略として、企業を存続させながら再建していきたい場合

・譲受企業は簿外債務を引き継ぐリスクを回避したい場合
 
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
 
〇譲渡企業は経営戦略として、企業を存続させながら再建していきたい場合
譲渡企業でメイン事業とは別に事業を持つ企業の場合、経営のスリム化を目的として事業譲渡を選ぶケースがあります。不景気のなか増加する人件費や運転資金によって経営状況が悪化し続けている状況なら、うまくいっていない事業を切り離す方が有効な場合もあるでしょう。
 
売却対象を自由に選択できる事業譲渡では、特定の資産やノウハウは残しつつ、譲渡して得た対価をもとに経営再建や新規事業の立ち上げも可能です。

〇譲受企業は簿外債務を引き継ぐリスクを回避したい場合
譲受企業にとっても、譲受する事業を選べるため、簿外債務を引き継ぐリスクを回避できます。簿外債務とは、貸借対照表上には計上されていない債務を指します。

後述する株式譲渡とは異なり、事業譲渡は特定の事業のみを引き継ぐスキームですので、買取資金を抑えつつシナジーのある事業を獲得したい場合に向いている手法です。

事業譲渡を行う際の注意点

事業譲渡を実際に行う際には下記の点に注意しましょう。

  • 従業員の処遇が変わる可能性や雇用契約を再度結ぶ必要がある


  • 商号や屋号を続用する場合、免責登記をするかどうか確認する必要がある


  • どれだけ譲渡するのかを明確にしておく必要がある


それぞれ解説します。

〇従業員の処遇が変わる可能性や雇用契約を再度結ぶ必要がある
事業譲渡によって譲渡企業に在籍していた従業員が譲受企業へ移る場合、雇用契約を締結し直す必要があります。譲受企業での処遇が従来より悪くなってしまうと、従業員が雇用契約の締結を拒む可能性もあるでしょう。

雇用契約に限らず、不動産を譲渡する場合には不動産登記や、譲渡事業に関わる取引先との契約なども譲受企業は締結し直さなければなりません。従業員数や譲渡企業に関わる取引先の数が多いほど手続きに時間がかかります。

スムーズに手続きを進めるためには、譲渡企業が事前に従業員や取引先へ事業譲渡の説明をして、不満が起こらないようにする対策が大切です。

〇商号や屋号を続用する場合、免責登記をするかどうか確認する必要がある
通常、譲受企業が譲渡企業から商号や屋号を引き継ぐと、譲渡企業の事業によって生じた負債を弁済する責任が生じます。ただし、免責の登記をすることでその責任を負わないこともできます。

免責登記とは、譲受企業が譲渡企業の債務を弁済する責任を負わない旨を管轄の法務局で登記する手続きです。なお、免責登記には登録免許税として3万円かかります。

トラブル防止のためにも、相手方と免責登記をするかどうか明確に決めておきましょう。

〇どれだけ譲渡するのかを明確にしておく必要がある
譲渡事業を明確化しておくこともトラブルを避けるために大切です。事業譲渡における売却対象となる事業は、不動産や人材、ブランド、取引先などさまざまです。
 
譲受企業は譲渡企業が抱える負債も引き継ぐ可能性がありますので、どの事業・資産を売却対象とするのかは契約書に記載し、しっかりと互いに認識している状態を作りましょう。
 

事業譲渡の種類

事業譲渡には、全部譲渡と一部譲渡の2種類あります。全部譲渡は譲渡企業が保有する事業を全て譲渡する方法で、一部譲渡は特定の事業のみを手放す方法です。
 

ステークホルダーからの同意はお早めに

事業譲渡は譲渡企業は経営難に苦しむ企業の存続に役立ち、譲受企業は事業拡大のスピードを加速できる手段と言えます。なお、事業譲渡において譲渡企業と譲受企業では、互いに株主総会の特別決議(総議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要となる場合があります。

株主への説明はもちろん、従業員や取引先の同意を早めに得ることがスピーディーな事業譲渡を行う成功のコツと言えるでしょう。

M&Aとは?

M&Aとは「Merger and acquisition」の略称であり、日本語に訳すると「合併と買収」を意味します。企業間において、2社以上の企業がひとつに合併したり、一社が複数の企業を買収したりする行為を指します。

M&Aは狭義的に企業間の合併や買収を指す言葉ですが、広義的には資本提携や業務提携も含む手法です。

●M&Aには6つの手法がある
M&Aには大きく分けて、下記に記載している6つの手法に分類できます。
 

  • 株式譲渡


  • 第三者割当増資


  • 株式交換


  • 合併


  • 事業譲渡


  • 会社分割

 
それでは、ひとつずつ解説します。
 

株式譲渡

株式譲渡とは、株主が保有する株式の過半数を譲受企業へ譲渡する手法です。後継ぎ問題が深刻化している中小企業のM&Aで活用するケースが多く、経営権を譲受企業へ渡す代わりに対価を得るスキームとなります。

中小企業における株式譲渡では基本的に保有株式の100%を譲渡するケースが一般的であり、創業者の出口戦略として用いる場合が多い手法のひとつです。
 

第三者割当増資

第三者割当増資とは、新株の発行により資金調達する手法です。株主に関わらず、法人・個人を問わない第三者を対象に新株の付与を行います。
 
M&Aにおいては、譲受企業から資金調達をするとともに株式を付与することで支配権が委譲されます。既存の株主も会社に残ることから、会社の100%が譲渡されるわけではありません。
 

株式交換

株式交換とは、親会社が子会社の発行済株式を100%取得し、完全子会社化を目指す際に行う手法です。事業拡大や新規事業を始めるうえで、少数株主による反対が経営判断を鈍らせる場合があります。
 
そこで、株式交換によって少数株主を経営方針を決める場面から排除し、グループ企業全体の経営資源を一本化して経営力の底上げを図ります。
 

合併

合併とは、複数ある企業をひとつにまとめる手法です。合併に参加した全企業が消滅し、新たに設立した企業に権利を移す新設合併と、合併に参加したひとつの企業以外の全企業が消滅する吸収合併の2種類あります。
 
合併を行う目的としては、グループ企業の経営統合や業績不振の企業救済、節税対策などがあります。
 

事業譲渡

事業譲渡は、保有する事業の一部または全部を譲渡する手法です。保有する事業を売却して対価を得るスキームが、株式を売却する株式譲渡と似ており混同しがちですので、後ほど相違点を解説します。
 

会社分割

会社分割とは、事業の一部を切り離して譲受企業へ渡す手法です。会社分割には、企業が持つ事業の一部または全てを新規企業に引き継ぐ新設分割と、既存の企業へ相手企業が持つ事業の一部または全てを引き継ぐ吸収分割があります。
 
一見、事業を切り離すスキームは事業譲渡と似ていますが、従業員や取引先への個別手続きが必要な事業譲渡に比べて、包括承継の会社分割では個別に同意を得る作業が不要です。
 

事業譲渡と株式譲渡の違い

事業譲渡と株式譲渡の大きな違いは、売却対象です。事業譲渡は譲渡企業が保有する事業を譲受企業に売却しますが、株式譲渡では譲渡企業が保有する株式を譲渡企業へ売却します。
 
事業の取得が目的の事業譲渡に対して、経営権の取得が目的なのが株式譲渡です。
M&Aには6つの手法があり、それぞれ特徴が異なります。実施する理由が資金調達なのか、後継ぎ問題解消なのか、事業拡大なのか、目的によって適したM&A手法が異なります。

各M&A手法の特徴をきちんと理解したうえで、自身に合った選択を選びましょう。

事業譲渡とM&Aの違い

M&A手法のひとつである事業譲渡ですが、同義語ではありません。ここでは、事業譲渡とM&Aの違いを図を用いて分かりやすく説明します。
 

事業譲渡とM&Aは、対象とする範囲とプロセスが異なる

事業譲渡はひとつの企業を対象とする手法なのに対して、M&Aはグループ企業全体を対象としてプロセスを進めます。事業譲渡の場合、売却対象となる事業を決めて、承認議決を行い、株主や債権者の保護手続きを終えた後に事業譲渡が完了となります。

一方で、M&Aは大きく6つある手法から適した手法を選択し、ひとつの企業もしくはグループ全体を範囲として手順を進めていくのです。

どちらの手法も企業戦略や目的に応じて選ばれることが多い

事業譲渡とM&Aはともに、企業戦略や目的に応じて選ばれることが多い手法です。譲渡企業が手放したくない資産がある場合は事業譲渡を選び、グループ企業全体の経営課題を抜本的に解説したい場合は広義の意味を持つM&Aが向いていると言えるでしょう。

項目

事業譲渡

M&A

対象

企業が保有する事業

企業の一部または全部

目的

・企業存続

・企業再編

・経営課題の解決

・グループ再編

移転内容

保有する事業の一部または全部の売却

保有する株式や事業の買収や合併、提携

事業譲渡はM&A手法のひとつ

この記事では、事業譲渡とM&Aの意味やスキーム、特徴の違いを解説しました。事業譲渡はM&A手法のひとつに過ぎません。

一般的にM&Aと聞くと企業売却をイメージする方も多いかもしれませんが、実際には合併や提携、株式の交換などさまざまな手法が存在します。これから事業拡大を目指す経営者や将来的にキャピタルゲインで多額の資金を得たい方はぜひM&Aも視野に入れておくべきです。
 
M&Aには専門知識を有するため、実際に気になる方や今後行おうか検討している方はM&A仲介会社や弁護士などプロにまずは相談してみてください。

【最短7分5000円~】法人の変更登記の必要書類をカンタン作成できます

法人の変更登記は、手続きごとに必要書類が異なるため、どの申請に何の書類が必要なのかを探すだけでも多くの時間が取られてしまいます。GVA 法人登記なら、変更情報を入力するだけで最短7分・5000円から、オンラインで変更登記に必要な書類の作成ができます。

GVA 法人登記は、株式、合同、有限会社の役員変更や本店移転登記など、10種類以上の変更登記に対応しており、複数の書類作成も可能です。



GVA 法人登記が対応している登記種類

・本店移転(管轄内移転・管轄外移転)
・役員変更(新任、辞任、重任、退任)
・役員の住所変更
・募集株式の発行
・商号変更
・目的変更
・株式分割
・剰余金等の資本組入れ
・ストックオプション

各登記種類の料金は、以下で説明しています。

\ 最短7分5000円~必要書類を作成 /





ステップに沿って入力するだけで必要書類の作成ができます

登記書類を作成する為には、現在の登記情報を確認し正確に入力する必要があります。

本来であれば、法務局にて有料で書類を取得し確認する必要がありますが、GVA 法人登記の、「登記情報自動反映サービス」をご利用いただきますと、システム内で現在の登記情報を無料で取得し、会社基本情報が書類作成画面に自動反映されます。登記知識のない方でもステップに沿って変更情報を入力するだけで簡単に登記書類の作成ができます。



GVA 法人登記で作成できる変更登記書類(例)

・登記申請書
・株主総会議事録
・株主リスト
・印鑑届出書
・就任承諾書(役員就任・重任)
・辞任届(役員辞任)
・準備金・剰余金の額に関する証明書(剰余金の資本組み入れ)
・総社員の同意書(合同会社)
・業務執行社員の同意書(合同会社)

さらにGVA 法人登記で登記書類を作成していただいた方全員に「登記申請手続きマニュアル」をお渡ししております。作成した登記書類の製版方法や、押印する場所についてすべてまとめておりますので、流れの通りに進めるだけで手続きを終えることができます。

オプションのかんたん郵送パックを利用すれば、書類作成後、押印し郵送するだけで登記申請ができるため、法務局に行かずに登記申請が可能です。仕事が忙しく法務局に行く時間がない方や、効率的に手続きを進めたい方におすすめです。

【期間限定】1,000円OFFクーポン配布中!

クーポン利用手順

GVA 法人登記の会員登録(無料)
②購入前のクーポンコード入力画面で【 Ug3JNAS7sB 】を入力





\Webでカンタン自分で変更登記/

執筆者

執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

本Webサイト内のコンテンツはGVA 法律事務所の監修のもと、BtoBマーケティングおよび司法書士事務所勤務経験者が所属する編集部が企画・制作しています。

GVA TECH株式会社では、「GVA 法人登記」だけでなくAI契約書レビュー支援クラウド「GVA assist」などのリーガルテックサービスを提供しています。

サービス詳細を見る