代表取締役を解任する方法とは?注意点や登記手続きを解説

商業登記の基礎知識
投稿日:2025.07.27
代表取締役を解任する方法とは?注意点や登記手続きを解説

株主や社外取締役として経営に関与する中で、代表取締役の不正行為、深刻な経営判断の誤り、あるいは経営者としての能力不足といった問題に直面することがあります。このような場合に会社の利益を守るための最終手段の一つとして「代表取締役の解任」が選択肢に上がることがあります。

しかし、代表取締役の解任は、会社組織の根幹を揺るしかねない極めて重大な行為です。手続きを誤れば、解任が無効になったり、会社が多額の損害賠償責任を負ったりするリスクを伴います。
本記事では、代表取締役の解任に必要な基礎知識、具体的な手続き、実行時の注意点を解説します。

代表取締役と取締役の解任の違いを理解する

解任を検討する上で最も重要な、「代表取締役の解任」と「取締役の解任」の違いを正確に理解する必要があります。両者は似て非なるもので、解任のための手続きも異なります。

  • 取締役は株主総会で選任され、会社の業務執行に関する意思決定機関である取締役会(取締役会非設置会社の場合は業務執行そのもの)を構成する役員です。

  • 代表取締役は取締役の中から選定され、会社を代表して業務を執行する権限(代表権)を持つ役員です。

この違いから、解任の意味合いにも以下のような違いがあります。
取締役の解任
「取締役」という会社の役員としての地位そのものを剥奪する手続きです。これにより、その人物は会社の経営から完全に離れることになります。
代表取締役の解任
「代表権」を剥奪し、代表取締役という役職から解くことを指します。この手続きを行っても、その人物は「取締役」としての地位には留まります。「社長」の肩書を外す手続きです。
つまり、代表取締役を経営から完全に排除する場合は、「代表取締役の解任」と「取締役の解任」の両方、あるいは後者の手続きが必要となります。

代表取締役を解任する手続き

まず、代表取締役から「代表権」のみを剥奪する手続きについてです。
自社がどのような方法で代表取締役を選んでいるかを確認することが最初のステップになります。必ず会社の定款を確認してください。

取締役会設置会社の場合

多くの会社では、取締役会が代表取締役を選定します。この場合、取締役会の決議によって代表取締役を解任することができます。
取締役会で代表取締役の解任議案について審議し、決議を行います。会社法上、決議要件は「議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行う」と定められています(会社法第369条第1項)。解任対象の代表取締役も議決に加わることができますが、自らの解任に賛成することは考えにくいため、実質的には自身を除く他の取締役の賛成が必要となります。

取締役会非設置会社の場合

取締役会がない会社では、定款の定めによって選定方法が異なります。

  • 株主総会で選定する場合:株主総会の決議によって解任します。
  • 取締役の互選で選定する場合:取締役の過半数の一致によって解任します。
  • 定款で直接指名されている場合:このケースでは、代表取締役の地位を解くためには定款変更が必要となり、株主総会の特別決議という極めて重い手続きが求められます。

いずれのケースにおいても、まずは定款の規定を確認することが不可欠です。

取締役を解任する手続き

代表権を剥奪するだけでは不十分で、その人物を会社の経営から完全に排除したい場合は「取締役」の地位そのものを解任する手続きに進みます。
取締役の解任は、株主の最も重要な権利の一つであり、株主総会の決議によってのみ行うことができます。取締役会には取締役を解任する権限はありません。
取締役の解任は、株主総会の普通決議によって行います(会社法第339条第1項)。

普通決議は定款に別段の定めがない限り、「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う」決議です(会社法第309条第1項)。
つまり、株主の過半数の賛成が得られれば、取締役をその地位から解任することが可能です。

代表取締役の解任にあたっての注意点

役員の解任、特に会社の顔である代表取締役の解任には、法務・経営の両面で重大なリスクが伴います。

損害賠償請求のリスク

会社法第339条第2項は、「解任された役員は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる」と定めています。

「正当な理由」とは

法令・定款への重大な違反行為、心身の故障により職務執行が不可能な状態、あるいは経営能力の著しい欠如などがこれにあたります。しかし、単なる経営方針の対立や、期待されたほどの業績を上げられなかったというだけでは、「正当な理由」とは認められない可能性が高いのが実情です。

賠償額

「正当な理由」なく解任した場合、会社は、その役員の残存任期中に得られるはずだった役員報酬の全額を賠償する義務を負う可能性があります。

経営上・対外的なリスク

損害賠償などの直接的な影響の他にも、以下のようなリスクが考えられます。これらは時間の経過とともに表面化することもあるため、継続的なチェックや予防策も必要になります。

  • 対外的な信用の失墜;突然の代表交代、特にそれが内紛を想起させる「解任」であった場合、金融機関、主要取引先、顧客からの信用が大きく損なわれる恐れがあります。資金調達や取引の継続に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 社内の混乱と士気の低下:経営トップの強制的な交代は、従業員に大きな動揺を与えます。解任された代表に近しい役員や従業員が大量に離職するなど、組織が分裂・弱体化するリスクも無視できません。


代表取締役の解任に伴う登記手続き

役員の解任が行われた場合、その旨の登記手続きが必要です。解任のケースによって必要な登記が異なることを知っておきましょう。
代表取締役の地位のみを解任した場合は、「代表取締役の資格喪失による退任登記」と「新代表取締役の就任登記」を行います。添付書類として、解任を決議した取締役会議事録や、新代表取締役の就任承諾書・印鑑証明書などが必要になります。

取締役の地位を解任した場合は、株主総会で取締役の地位を解任した場合、「取締役の解任による退任登記」を行います。添付書類として、株主総会議事録が必要です。
代表取締役解任後、本人が取締役を辞任した場合は、代表取締役を解任された後、本人が取締役の地位を自ら辞する場合、これは「解任」ではなく「辞任」の扱いになります。この場合、「取締役の辞任による退任登記」となり、添付書類は本人の辞任届となります。

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役員解任では専門家のアドバイスなど含め慎重な検討を

これまで見てきたように、代表取締役の解任は、法務・経営の両面で極めて高いリスクを伴う経営判断です。理想は、解任という強硬手段に出る前に、対象者と十分に話し合い、自主的な「辞任」を促すことです。穏便な形で経営陣の交代が実現できれば、会社が受けるダメージを最小限に抑えることができます。

解任が不可避であると判断した場合でも、決して独断で進めず、弁護士などの法律専門家に相談しましょう。会社の未来を守るための重要な決断だからこそ、感情的な対立を避け、適法性を担保し専門家の知見を活用しながら慎重に進めることが重要です。

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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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