法人登記に必要な書類を会社設立から変更登記までまとめて解説

商業登記の基礎知識
投稿日:2024.10.28
法人登記に必要な書類を会社設立から変更登記までまとめて解説

法人登記は、企業活動において重要な手続きです。必要な書類や手続きの複雑さに戸惑いを感じている人も多いのではないでしょうか。

この記事では、会社設立登記、本店移転、役員変更、目的変更、増資、減資など、さまざまな法人登記の種類とそれぞれに必要な書類を詳しく解説します。また、登記申請の基本的な流れや、自身で行う場合と司法書士に依頼する場合のメリット・デメリットについても触れ、みなさんが登記申請するのに必要な情報を提供します。

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目次

そもそも法人登記とは?

会社を設立するときの手続きに加え、本店移転や役員変更などの変更登記を、まとめて法人登記といいます(会社設立の登記のみを法人登記とよぶこともあります)。ここでは法人登記の種類を簡潔に紹介します。

会社設立

会社設立とは、新たな法人を創設する手続きです。会社設立のための登記を特に会社設立登記(法人登記)とよびます。

定款の作成、出資金(資本金)の払い込み、設立登記などを経て、会社として正式に活動できるようになります。会社設立の登記は、設立手続きが終了した日または発起人が定めた日から2週間以内に行わなければなりません。

本店移転

本店移転とは、会社の主たる事務所の所在地を変更する手続きです。

東京23区・市町村(最小行政区画)までしか定款に記載しておらず、同じ区画に移転する場合は、定款の変更は不要です。取締役会設置会社なら取締役会議事録を必要書類として提出します。一方、最小行政区画を超えるなどの移転を行う場合は、定款の変更として株主総会の特別決議が必要です。

移転の効力発生日から2週間以内に法務局へ登記申請を行います。

役員変更(就任、辞任、退任、重任についてそれぞれ解説)

役員変更とは、役員の異動を登記する手続きです。役員には、代表取締役、取締役、監査役、会計参与があります。また、役員の異動には、次のような種類があります。

  • 就任(新任):新たに役員として選任され、その職務に就くこと。


  • 辞任:役員が自らの意思で職を辞すること。


  • 退任:任期満了や資格喪失により役員の地位を失うこと。


  • 重任:任期満了後、再度同じ役職に就くこと。


これらの変更は、株主総会等の決議や就任承諾により生じ、登記が必要となります。

目的変更

目的変更とは、会社の事業内容を変更する手続きです。新規事業の開始や既存事業の廃止などに伴い行われます。

目的変更する場合は、株主総会の特別決議による定款変更が必要で、変更後2週間以内に登記申請を行います。

増資(募集株式の発行)

増資(募集株式の発行)とは、会社が新たに株式を発行して資本金を増やす手続きです。

増資をする場合は、株主総会や取締役会の決議、株式引受の申込みなどを経て、払込金額の払込みが完了したあと、2週間以内に登記申請を行います。

減資

減資とは、会社の資本金を減少させる手続きです。会社の欠損補てんのためや税制の優遇措置を受けるためなどに行われます。

減資をする場合は、株主総会の特別決議が必要です。また債権者保護の手続きを行わなければなりません。減資の効力発生日から2週間以内に登記申請を行います。

商号変更

商号変更とは、会社の名称を変更する手続きです。一般的には社名変更といいますが、登記申請においては商号変更とよばれています。

商号変更する場合は、株主総会の特別決議による定款変更が必要で、変更後2週間以内に登記申請を行います。

代表の住所変更

代表の住所変更とは、代表取締役や代表社員の住所が変わった場合の登記手続きです。

代表が住所を変更した場合、株主総会や取締役会の決議は不要ですが、変更後2週間以内に登記申請を行わなければなりません。

役員の氏名変更

役員の氏名変更とは、結婚などにより役員の氏名が変わった場合の登記手続きです。代表取締役だけでなく、取締役や会計参与、監査役、執行役なども対象です。

役員の氏名変更には株主総会や取締役会の決議は不要ですが、変更後2週間以内に登記申請を行わなければなりません。

持分譲渡(合同会社)

持分譲渡とは、合同会社の社員が自身の持分を他者に譲渡する手続きです。

持分を譲渡する場合には、原則として社員全員の承諾が必要ですが、登記事項ではありません。しかし、代表社員や業務執行社員の入退社とともに持分譲渡を行う場合は、登記事項を変更しなければなりませんので、登記申請が必要です。変更が生じた日から2週間以内に登記申請を行います。

社員の変更(合同会社)

社員の変更とは、合同会社において社員の加入や脱退が生じた際の手続きです。

社員の加入には原則、社員全員の同意が必要です。社員の加入に伴い代表社員や業務執行社員の変更を行った場合は、2週間以内に登記申請を行います。

変更登記の期限と罰則

変更登記は、変更事由が生じてから2週間以内に行う必要があります。この期限を過ぎると登記懈怠(けたい)となり、法人の代表者個人に対して100万円以下の過料が課される可能性がありますので、迅速な手続きが重要です。

法人の登記申請までの流れ・申請方法

ここまで会社設立登記や変更登記の概要について解説しました。登記申請の流れは両者で大きく異なります。ここでは、それぞれの流れを紹介し、具体的な申請方法についても触れていきます。

会社設立登記の基本的な流れ

会社設立登記の基本的な流れは、次のとおりです。

1. 定款作成・認証

2. 出資金払込

3. 登記申請書作成と必要書類準備

4. 法務局への申請

定款作成するためには、社名や事業目的、所在地などを決めておく必要があります。法務局に申請した日が会社設立日となりますので、早めに必要書類などの準備を進めておきましょう。

変更登記の基本的な流れ

変更登記の基本的な流れは、次のとおりです。

1. 変更する事項を決定する

2. 必要に応じて株主総会や取締役会の決議を行う

3. 必要書類を準備する

4. 登記申請書を作成する

5. 法務局への申請する

変更登記の内容によって必要な書類は異なります。ひととおり準備を終えたら、法務局へ申請を行います。なお、変更登記は、変更事由の発生から2週間以内に行わなければなりません。

法務局の窓口に直接持参するか、郵送でも申請が可能

登記申請には、おもに法務局の窓口に直接持参する方法と郵送で申請する方法があります。オンラインで申請することもできますが、申請ソフトや電子証明書、ICカードリーダなどの事前準備が必要になります。

会社設立登記で設立日を特定したい場合は、窓口申請が確実です。会社設立日は「設立登記を管轄の法務局に申請した日」となり、希望日があれば日にち指定も可能です。より確実に希望の設立日にしたい場合は、法務局窓口での申請をお勧めします。

郵送で申請する場合、普通郵便で送付することも可能ですが、郵便事故防止のため書留での送付をお勧めします。郵送先は管轄の法務局で、法務局の公式ページで管轄法務局を調べてから郵送を決めましょう。不動産登記管轄区域と商業・法人登記管轄区域のエリアが異なるケースもあるので注意が必要です。

法人登記申請は、司法書士に依頼するか自分で調べて申請する方法の大きく2パターンある

法人登記は、司法書士に依頼してお任せする方法と自身で行う方法があります。

司法書士に依頼すれば、時間と労力を節約でき、専門的な知識と経験で適切な手続きを行ってくれます。複雑な案件でも安心でしょう。ただし、司法書士への報酬が必要になります。

一方、自分で調べて申請する場合は、費用を抑えられ、法人登記の仕組みや役割を理解できるようになります。しかし、この方法には時間と労力がかかり、誤った手続きをしてしまうリスクがあります。

どちらにするかは、会社の状況、案件の複雑さ、時間・金銭的余裕などを考慮して判断するとよいでしょう。

法人登記に必要な書類一覧

法人登記には、登記申請書のほかに提出しなければならない書類があります。ここでは、登記の種類ごとに必要な書類をまとめます。

会社設立に必要な書類

会社設立にはおもに次のような書類が必要です。

必要書類

概要

登記申請書

会社設立の登記を申請する書類

定款

会社の基本規則を定めた書類

出資金払込証明書

出資金が払い込まれたことを証明する書類

設立時取締役の就任承諾書

取締役就任の意思を示す書類

印鑑証明書

設立時取締役の印鑑証明書

印鑑届出書

会社の実印登録するための書類

上記のほかに、発起人の同意書や設立時代表取締役を選定したことを証する書面、資本金の額の計上に関する代表取締役の証明書などが必要になるケースがあります。

本店移転に必要な書類

本店移転にはおもに次のような書類が必要です。

必要書類

概要

登記申請書

本店移転の登記を申請する書類

株主総会議事録

定款変更を伴う移転の場合

株主リストも必要

取締役会議事録

取締役会設置会社の場合

取締役決定書

取締役会を設置していない場合

印鑑届出書

管轄外への移転の場合

前述のとおり、最小行政区画内での本店移転で、定款にも最小行政区画しか記載がなければ、定款に変更はないため、株主総会の決議は不要です。管轄外への移転の場合は印鑑届出書が必要となります。

このように会社の状況や移転内容によって必要書類が異なる点に注意が必要です。

役員変更(就任、辞任、退任、重任)に必要な書類

役員変更にはおもに次のような書類が必要です。

役員変更に伴う必要書類は、誰が役員になるか、取締役会があるかなどによって異なります。

必要書類

概要

登記申請書

役員変更の登記を申請する書類

株主総会議事録

役員変更を決議した株主総会の記録

株主リストも必要

取締役会議事録

取締役会設置会社で代表取締役の選定などで必要

就任承諾書

新任の場合に必要

印鑑証明書

代表取締役や取締役の就任や変更の場合

上記のほか、役員が辞任する場合の辞任届や新任の本人確認のための本人確認書類などが必要なケースがあります。

目的変更に必要な書類

目的変更にはおもに次のような書類が必要です。

必要書類

概要

登記申請書

目的変更の登記を申請する書類

株主総会議事録

目的変更を決議した株主総会の記録

株主リストも必要


増資(募集株式の発行)に必要な書類

増資にはおもに次のような書類が必要です。

必要書類

概要

登記申請書

増資の登記を申請する書類

株主総会議事録

増資を決議した株主総会の記録

株主リストも必要

取締役会議事録

取締役会設置会社の場合

払込みがあったことを証する書面

払込金の保管を証明する書類

株式申込証や総数引受契約書

募集株式の引受けの申込みを証する書面

資本金の額の計上に関する証明書

増加する資本金の額が適正に計算されたことを証明する書類

上記の書類は、会社の状況や増資の方法によって変わることがあります。具体的な状況に応じて、必要書類を確認しましょう。

減資に必要な書類

減資にはおもに次のような書類が必要です。

必要書類

概要

登記申請書

減資の登記を申請する書類

株主総会議事録

減資を決議した株主総会の記録

株主リストも必要

債権者異議申述公告

債権者への公告を証明する書類

債権者異議申述催告書面

債権者への個別催告を証明する書類

上記の書類は、会社の状況や減資の方法によって変わることがあります。具体的な状況に応じて、必要書類を確認しましょう。

商号変更に必要な書類

商号変更にはおもに次のような書類が必要です。

必要書類

概要

登記申請書

商号変更の登記を申請する書類

株主総会議事録

商号変更を決議した株主総会の記録

株主リストも必要

上記のほかに、新しい商号で印鑑を変更する場合には代表取締役の印鑑証明書や印鑑届出書も必要になります。

代表の住所変更に必要な書類

代表の住所変更にはおもに次のような書類が必要です。

必要書類

概要

登記申請書

代表者住所変更の登記を申請する書類

正確な住所移転日を確認するために、住民票を取得しておくといいでしょう。

役員の氏名変更に必要な書類

役員の氏名変更にはおもに次のような書類が必要です。

必要書類

概要

登記申請書

役員氏名変更の登記を申請する書類

なお、婚姻前の名字を併記する場合には、戸籍謄本等の添付が必要です。

持分譲渡(合同会社)に必要な書類

持分譲渡(合同会社)にはおもに次のような書類が必要です。持分譲渡で必ず登記が必要なわけではありませんが、持分譲渡によって業務執行社員や代表社員を変更する場合は、社員の変更登記が必要となります。

必要書類

概要

登記申請書

持分譲渡の登記を申請する書類

総社員の同意書

持分譲渡に対する社員全員の同意を示す書類

持分譲渡契約書

持分譲渡の内容を記した契約書

必要書類は、業務執行社員や代表社員の選定方法、会社の状況によって異なります。

社員の変更(合同会社)に必要な書類

社員の変更(合同会社)にはおもに次のような書類が必要です。

必要書類

概要

登記申請書

社員変更の登記を申請する書類

就任承諾書や辞任届

社員の変更を証明する書類

総社員の同意書または

業務執行社員の互選書(定款)

定款で業務執行社員から代表社員を選んだ場合

または業務執行社員の互選で選んだ場合

印鑑証明書

印鑑届出書

新たに選定された代表社員が印鑑登録する場合

必要書類は、変更内容によって異なりますので、注意が必要です。

法人登記に必要な書類のポイント

ここまで法人登記の種類ごとに必要書類をまとめてきましたが、会社の状況によって必要書類は変わってきます。たとえば、登記申請を司法書士に依頼する場合には、委任状の添付が求められます。

また各登記申請で、登録免許税を納付しなければなりません。収入印紙貼付台紙に収入印紙を貼り付けて、必要書類と一緒に提出します。税額は法人登記の種類によって異なりますので、必要書類を準備する際に合わせて確認しておくといいでしょう。

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・印鑑届出書
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執筆者

執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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