会社定款の事業目的の書き方・注意点を解説

商業登記の基礎知識
投稿日:2024.08.08
会社の定款の目的の書き方・注意点を解説

この記事にたどり着いた方は、定款内に記載される目的の書き方について調べている、または悩んでいる方が多いのではないでしょうか。


会社を設立(起業・開業・創業)するときには定款の作成が必要となりますが、そのときに記載しなければならない項目の一つに事業の「目的」があります。

「目的」は会社が何をするのかという業務の内容を決める他、許認可の取得にも関係する重要事項となります。

そのため、これをいい加減に決めてしまうと、その後の経営に大きな支障を及ぼすデメリットがあります。


この記事では、定款の目的の書き方や事業別の記載例、変更時の手続きなどについてのコツなどを詳しく解説しています。

また、定款の目的を変更した際には目的変更登記が必要となりますが、専門家に依頼するほど難しい手続きではありません。

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定款に記載する「目的」の意味やポイントは?

定款に記載する「目的」の意味や、これを決める際のポイントは以下のとおりとなります。


「目的」の意味とは?

「目的」とは、定款で必ず定めなければならない項目(絶対的記載事項)の1つで、これから会社がどんな事業をするのかを記載したものです。「事業目的」と呼ばれることも多いです。この目的の内容が不明瞭や違法な場合には公証人の認証を受けることができず、定款そのものも効力が生じません。


株式会社の定款の絶対的記載事項(会社法第27条)

「目的」

「商号」

「本店の所在地」

「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」

「発起人の氏名又は名称及び住所」


また、「目的」は、会社の設立をする際にも必ず登記しなければなりません。

なお、会社は原則として、定款で定められた目的の範囲内でしか事業をすることができないため、これをしっかりと決めておかないと、税務や融資、許認可の取得などに影響する場合があります。


「目的」で必要な3つのポイント

「目的」を適切に決めるためには、以下の3点が特に注意をする必要があります。

なお、目的の内容については、公証人が定款認証の際に確認しますが、最終的に登記の審査を行うのは法務局の登記官です。


したがって、定款の認証はできたけど、登記は受理されないということも考えられなくはないため、目的の内容が不安な場合には、定款の認証を受ける前に法務局にも相談しておくと安心です。


・適法性

適法性とは、「目的」が違法ではないことを意味します。たとえば、犯罪行為や公序良俗に反する内容を会社の目的とすることはできません。また、弁護士業や税理士業などといった有資格者のみができる事業についても、資格者でない者は目的とすることができません。


・営利性

株式会社が営利を目的とする法人であるため、利益を獲得できる可能性のない事業については「目的」に定めることはできません。ただし、公益的な活動であっても収益の上がる可能性がある事業については、「目的」に定めることが容認されています。


・明確性

「目的」は、誰が見てもその内容が理解できるよう明瞭な内容でなければなりません。そのため、特殊な専門用語や造語・新語などのみでは「目的」として定めることができない場合もあり、国語辞典や現代用語辞典などに記載されている語句を用いた説明もあわせて記載する必要がある場合もあります。

業種別の事業目的の記載例

「目的」を定めるときには、その会社が行う業種や営業の内容を記載する必要がありますが、とくに許認可が必要となる事業では、その内容や決まった文言が記載されていない場合には、その許認可が得られないという場合もありますので、注意が必要です。


許認可や届出が必要な業種(一例)

飲食店

飲食店の営業をする場合には、保健所の営業許可が必要となります。目的の記載は、「飲食店の営業」が最もオーソドックなものとなりますが、許認可申請の際にはさらに具体的な記載が求められる場合もありますので、申請先の保健所等に確認しましょう。


(目的例)

  • 飲食店及び喫茶店の経営
  • コンビニエンスストアの経営
  • フランチャイズシステムによる飲食店の経営
  • 深夜酒類提供飲食店営業


建設業

請負代金が500万円以上の建設工事(建築一式工事の場合は1,500万円以上)を行う場合には、都道府県知事または国土交通大臣の許可が必要となります。


とくに、建設業において注意しなければならないのが、建設業は全部で29業種あることです。そのため、新規申請・追加申請などの際、定款の目的から許可を受ける業種が読み取れない場合は、目的を変更することが求められる場合がありますので、具体的に行う工事の業種を明確に記載する必要があります。


(目的の記入例)

  • 土木一式工事
  • 建築一式工事
  • 大工工事業
  • とび・土工工事業
  • 屋根工事の請負
  • 電気工事業


宅地建物取引業

「不動産業」とは、不動産に関する取引を全般的に扱う業種であり、「不動産売買業」や「不動産賃貸業(土地や建物の大家さん)」「不動産管理業」などがこれにあたります。


これに対して「宅地建物取引業」は、宅地建物取引業法にもとづき、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けて行うものとなります。そのため、しっかりとこの区別をして目的を決める必要があります。


(目的例)

  • 宅地建物取引業
  • 不動産の売買、賃貸、管理及びそれらの仲介


リサイクルショップ

リサイクルショップや中古品の買取・販売をする場合には、警察に届け出て公安委員会から古物商の許可を取得する必要があります。また、最近はやりの貴金属製品の買取りや中古品のせどりをする場合にも、この許可が必要となります。


(目的例)

  • 古物営業法に基づく古物営業
  • 古物の買取、販売及び輸出入
  • 古物の売買及びリサイクル店の経営


許認可などを必要としない業種

その他、許認可などを必要としない業種としては、以下のようなものがあります。


出版業

・書籍の企画、編集、制作、出版及び販売事業

・電子出版物の制作、販売及び仲介


コンサルティング業

・コンピュータプログラムの企画、制作、コンサルティング

・ホームページコンテンツの企画、デザイン、ページ・画像の制作及びコンサルティング

・経営コンサルタント業


その他の業種

・学習塾の経営

・通信販売業(古物や飲食物の取り扱いを除く)

・便利屋業

・ネイルサロンの経営


目的変更の手続きには株主総会と変更登記手続きが必要

一度決めた「目的」を追加・変更・削除する場合には、単に定款の変更をするだけでなく、目的変更の登記手続きも行う必要があります。なお、これらの手続きは、定款を紙で作成したか、電子定款で作成したかにかかわらず必要となります。


1.目的変更のための株主総会決議

定款変更は、定款の内容を書き換えるだけとお考えの方もいるようですが、定款の内容を変更するためには、原則として株主総会による決議が必要となります。


株主総会の決議にはいくつかの種類がありますが、目的の変更をする場合には特別決議(総議決権の過半数を有する株主が出席、そのうちの議決権3分の2以上の賛成)が必要です。


なお、この決議を行った後には、定款の変更部分を書き換えるとともに、決議内容を記載した議事録をあわせて保存する必要があります。


2.変更登記手続き

「目的」の変更をした場合には、「目的変更」の登記手続きもする必要があります。


注意点として、登記すべき事項には、変更後の目的のすべてを記載します。変更された目的だけではなく、変更のない部分も記載します。


また、登録免許税は1回の変更登記申請ごとにかかります。したがって、目的変更後にさらに追加の変更をする場合にはあらためて30,000円の登録免許税が必要となります。


この他にも目的変更をした場合には、役所への届出(税務署への異動事項に関する届出など)が必要となる場合もあるため注意してください。

まとめ

事業の「目的」は、定款の絶対的記載事項の中の一つのため、これを定めなかったり、その内容が登記できないような場合には、定款そのものに効力が生じません。

また、この「目的」を定める場合には、適法性・営利性・明確性の3つの要件を満たす必要があるため、これらについて問題のない目的を定める必要があります。

したがって、目的の内容に疑問や不安があるときには、専門家にアドバイスをもらうことなども検討しましょう。


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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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