株式会社では役員には任期があるため、一定期間が経つと必ず役員重任などの登記申請をする必要があります。
しかし、こうした登記をせず放置していると法務局によってみなし解散の登記がなされてしまうことはご存知でしょうか?本記事では、みなし解散およびこれを放置してしまった場合にどうなるのかや対処方法について解説します。
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みなし解散とは
まずは、みなし解散について確認しておきましょう。
長期間登記申請がない会社に対する手続き
みなし解散とは、一定期間登記を放置している会社に対して法務局が会社・法人の解散の登記をすることをいいます。
具体的には、最後の登記申請から12年間登記がない状態が続くと、官報公告後2ヶ月を経てみなし解散とされます。みなし解散となる場合、管轄の登記所からみなし解散の官報公告があった通知書が届きます。官報公告から2ヶ月が経過するとみなし解散、つまり解散したものとみなされることになります。
なお、みなし解散になっている状態になると法務局だけで無く、税務署からも通知がなされます。そのため、税務署からの通知ではじめてみなし解散となっていることを知る事業主も少なくありません。
みなし解散の対象は株式会社となります。株式会社の1種である特例有限会社は任期の規定がないため、みなし解散の対象にはなりません。
みなし解散となると、登記簿には「会社法472条1項による解散」と記載されます。
なお、株式会社以外でも最後の登記から5年を経過した一般社団法人、一般財団法人もみなし解散の対象にはなります。
みなし解散の制度がある理由
こうしたみなし解散の制度はなぜあるのでしょうか?
これは放置しておくと実際には事業を行なっていない、経営実態のない会社が増え続けてしまうため、こうした事態を防ぐために行なわれているのです。みなし解散によってこうした休眠会社を解散させておかないと法人格の売買が行なわれたりと会社の法人格の悪用がなされる可能性もあります。こうした事態を防ぐためにみなし解散があります。
さらに、みなし解散が行われる事を通じて、必要な登記申請が行なわれるようにすることで登記の信頼性を維持するという側面もあります。みなし解散の制度が無ければ、実態のない会社がいつまでも登記上公示されてしまうことになるため、登記制度に対する信頼が落ちてしまうといった事態を防ぐためにもみなし解散は有用な制度なのです。
みなし解散のまま放置するとどうなる?
では、みなし解散となった場合にそのまま登記を放置しておくとどのような事態が起こるのでしょうか。ここではみなし解散を放置するとどうなるかについて解説します。
みなし解散決定後、3年経つと会社を継続できなくなる
みなし解散がなされてから3年以内に限り株主総会の決議によって会社を継続することができます。逆に言うと3年を経過してしまうと会社の復活・継続はできないことになってしまいます。
また、みなし解散から10年が経過すると登記官の職権により登記記録は閉鎖されてしまいます。
みなし「解散」ではあるが「清算」ではないことに注意
みなし解散の制度はあくまでも解散したとみなす制度であり、みなし清算では無い点には注意が必要です。
そのため、みなし解散がなされても清算結了には当たりません。みなし解散後、そのまま清算手続きに入る場合には、別途手続きが必要となります。また、清算が完了した場合には清算結了の登記も必要となります。
解散になってしまうこと以上の罰則はない
みなし解散となっている状態は役員の選任またはその登記を怠っている状態になるため、選任の懈怠または登記の懈怠を理由に過料の支払いが必要となる可能性があります。
解散になった場合、過料に加えてさらに何か必要となるのではないかと心配になる方もいらっしゃるでしょうが、過料以外の罰則は特にありません。ただし、会社の営業ができないため機会損失といった損害が生じてしまう可能性がある点には注意しておきましょう。
みなし解散から復活・継続する方法
では、みなし解散から会社を復活させる方法や事業を継続させる方法にはどのようなものがあるのでしょうか。ここではみなし解散から会社を復活させる方法について解説します。
官報公告から2ヶ月以内に継続申請する
みなし解散は、官報公告から2ヶ月以内に事業を廃止していない旨の届出をしなかった場合にみなし解散となります。そのため、官報公告から2ヶ月以内に事業を廃止していない旨の届出を行えばみなし解散はなされないことになります。
また、その他の方法として新たな役員選任の株主総会決議を行ない、役員変更の登記申請を行なったり、役員重任の登記を行う事でもみなし解散を免れることができます。このように本来すべき登記手続きをすることによってもみなし解散を避ける事ができます。
公告から2ヶ月経過した場合の継続手続き
公告から2ヶ月経過しみなし解散になってしまった場合でも3年以内であれば会社継続の株主総会決議を行う事で会社の継続が可能となります。この場合には以下の手続きが必要となります。
1 清算人の就任・登記
みなし解散によって会社は清算株式会社となるため、清算人を選任し登記をする必要があります。
2 会社継続の株主総会決議
会社を継続することについて株主総会決議を経る必要があります。会社継続の株主総会決議は特別
決議を経る必要があるため注意が必要です。
3 取締役等の役員の選任の株主総会決議
みなし解散によって役員は全て退任となるため、全ての役員について改めて選任する必要がありま
す。役員の選任は株主総会の普通決議を経る必要があります。
みなし解散から3年以上経過してしまったら
みなし解散から3年経過してしまった場合には、株主総会決議によって会社継続をすることはできなくなります。こうなってしまった場合には清算手続を行なうしかなくなります。
清算手続きを行ない、一度清算結了を行なった後に清算結了の登記を抹消することはできますが、解散状態ではあるため、解散になる前の状態に復活するのとは異なります。
清算手続のためには以下の手続きが必要です。
1 清算人の就任
清算人が就任し、その旨を登記します。清算人は原則として取締役がなりますが。定款や株主総会
の決議で別段の定めがある場合にはその定めに従うことになります。清算人になる者が以内場合に
は裁判所が清算人を選任します。
2 財産目録等の作成
清算人は就任後、清算株式会社の財産目録や貸借対照表を作成します。作成した財産目録等は株主
総会に提供しその承認を得る必要があります。
3 清算人による現務の結了
取引先との契約の解除、従業員との労働契約の終了といった現務の結了を清算人が行ないます。
4 取立て・弁済
清算株式会社の債権の取り立ておよび債務の弁済を清算人が行ないます。
債務の弁済を行なうに当たっては、債権申出の公告および債権者への個別催告を行う必要がある点
には注意が必要です。債権の取り立ては自由な方法で行う事ができます。
5 残余財産の分配
債権の取り立てや債務の弁済を行なった後、最終的に残った清算株式会社の残余財産を株主に分配
します。残余財産の種類や割当てについては清算人の決定により行います。
6 決算報告の作成
清算事務が終了したら、清算株式会社は決算報告を作成したうえで、株主総会の承認を得る必要が
あります。
7 登記手続
株主総会による決算報告の承認を得たら、その日から2週間以内に清算結了登記を行ないます。
以上の手続を経ることで清算結了の登記完了となります。
みなし解散後3年以上放置すると会社の復活が不可能になる
登記を放置していると行なわれるみなし解散の登記ですが、それをさらに3年放置してしまうと、会社継続の株主総会決議も行なうことができなくなってしまいます。
事業継続の意思がある場合には可能な限り、みなし解散になる前に公告から2ヶ月以内に対応を行なうようにし、それができなかった場合にはみなし解散から3年以内に会社継続の株主総会決議を行なうようにしましょう。また、それ以前に定期的な登記申請を必ず行えるように日頃から備えておきましょう。
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