取締役といえばこれまでは会社の内部の人間が昇進することで取締役になるケースや、創 業メンバーなどがなるケースが多く、どちらかというと社内の人間が務めるものというの が一般的な認識であったように思います。
しかし、近年は会社法改正において一部の株式会社は社外取締役の設置が義務付けられているほか、東京証券取引所の上場規程では独立社外取締役の設置が義務付けられているなど、 社外取締役の設置は上場を視野に入れている会社にとって必要不可欠といえるところまで来ているといえるでしょう。
しかし、社外取締役を初めて設置する場合には報酬はいくらくらいに設定すればよいのか といった問題に直面される企業の方は多いのではないでしょうか。そこで、本記事では社外取締役の報酬の決め方や相場についてご紹介・ご解説いたします。
社外取締役とは?
社外取締役の概要
社外取締役とは、会社法第2条第15号に定義があります。条文の定義はやや複雑なため、簡単に説明すると、過去10年間を含めて社外取締役となる会社の役員、従業員などの関係者でない人で、その会社の取締役になる人のことをいいます。
なぜこのような人を取締役として選任することが求められるのかというと、会社と利害関係のない第三者を取締役として取締役会のメンバーに加えることで、各取締役の業務執行が適正に行われているかより強く監督できるという点を期待しています。
つまり、社外取締役は会社経営の健全化やコーポレートガバナンスなどの観点から求められる役職であるといえるでしょう。
社外取締役の設置を義務付けられる会社とは?
これまで会社法上は、監査等委員会設置会社などの会社を除き、社外取締役の設置は義務ではなく、上場会社は東証の上場規程により社外取締役の設置が義務付けられるにとどまっていました。
しかし、2021年3月1日に施行された改正会社法では公開会社であり大会社である監査役会設置会社において、有価証券報告書を提出しなければならない会社(いわゆる「上場会社」)は、社外取締役の設置が義務付けられるようになりました。
社外取締役は何人必要 ?
社外取締役は何人必要なのでしょうか。まず、改正会社法により社外取締役の設置が義務付けられる会社は、最低1人は社外取締役を設置する義務が発生します (会社法第327条の2)。
また、上場規程も同様に取締役である独立役員を1名以上確保することを求めています。なお、独立役員とは、一定の条件を満たす社外取締役又は社外監査役のことを指します。
上場規程には、加えて取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するような努力義務、さらにコーポレートガバナンスコード (通称 「CGコード」)では「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すること」が要請されています。
これらは、努力義務や要請であって義務ではないため、論理的には、上場会社でも1名の社外取締役で足りますが、実際には会社の状況や一般株主の保護等を鑑みて、社外取締役の選任を検討する必要があります。
社外取締役の報酬について
社外取締役の報酬を決定するための手続きとは?
社外取締役を設置するとしてその報酬はどのように決定すればよいのでしょうか。これについては社外取締役であってもその他の取締役と同様に株主総会による決議が必要となります(会社法第361条第1項)。
なお、実務的には株主総会では取締役全体の報酬の総額を決議しておき、各取締役の報酬の分配については、任意の報酬委員会や取締役会などで決定するといった方法が採用されているケースが多いように思われます。
社外取締役の報酬を決める際の判断要素とは?
社外取締役の報酬を決定する際にどのような要素を判断要素として金額を決定すれば良いのでしょうか。これについては、以下の様な事項を考慮するべきと思われます。
①社内取締役の報酬額とのバランス
実務的には最も大きな要素となる事項です。社外取締役はあくまでも取締役の業務執行の監督役であるという観点からは経営や業務執行を中心に行う社内取締役の方が高い傾向にあるというのが一般的と思われます。また、現実的に会社が負担できる報酬という意味でも社内取締役の報酬額は一つの基準となるでしょう。
②社外取締役に求めるスキル・知見
社外取締役に選任される方は他業種での経営者としての知見を有する方が多いため、社外取締役に対し積極的にそうした知見を活用して経営への関与を希望される場合には高いスキルや知見、また相応の業務負担を求めることとなります。この場合には、スキルに応じた報酬額を設定しなければ求める人材は得られにくくなるでしょう。
③社外取締役の前職や兼業の収入
社外取締役の多くの方は本業を別に持っている方や前職で大きな功績を残されている方が多いため、前職や現在兼業関係にある職業での収入を考慮する必要もあります。
特に社外取締役として選任される方は他の企業で役員をされている方のほか、弁護士や公認会計士、税理士といった資格を持たれて仕事をされている方が多く、こうした職種で得られている収入を考慮する必要があります。
社外取締役の報酬を決定する際には、以上の様な点を考慮に入れて取締役の報酬を決定すべきといえるでしょう。
社外取締役の報酬の相場は?
具体的にはどのくらいの金額が報酬の相場といえるでしょうか。大手コンサルティング ファームであるデロイトトーマツが発表した2021年度役員報酬サーベイによると、社外取締役の報酬の中央値は800万円となっています。
その他には2019年に行われた朝日新聞と東京商工リサーチが出した調査結果によると、東証一部上場企業の社外取締役の平均年収は663万円という結果も出ています。
社外取締役の報酬額が上昇傾向にあることを考えると600万円〜800万円という金額は相場を考える上で一つの指針となる金額といえるでしょう。なお、相場以上に高額な報酬を支払っている会社もありますが、企業規模が大きい会社にそういった傾向が見られます。
前述の朝日新聞と東京商工リサーチの調査結果によると、最も高額な報酬を支払っていたのが日立製作所で3944万円の報酬額となっており、2位の岩谷産業が3900万円と平均金額を大きく超える金額の報酬額となっています。
こうした金額を支払っている理由としては、社外取締役に対しグローバル視点が求められることを理由としており、高いスキルが求められることが理由となっています。
まとめ
社外取締役の人数は増加傾向にあり社外取締役に求められる役割が増大する中でその報酬額も増加していくことが今後も続くことが予想されます。
各会社で社外取締役に求めるスキルや知見、業務への関与の程度を勘案した上で、本記事で紹介した相場をヒントに適切な報酬額を決定する一助となれば幸いです。
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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