法務局で定款は取得できるのか?定款の確認方法をわかりやすく解説

商業登記の基礎知識
投稿日:2024.10.25
法務局で定款は取得できるのか?定款の確認方法をわかりやすく解説

自社や取引先の定款が必要となったものの、どこで取得すればいいのか分からずお困りの方はいませんか?

実は定款には原始定款と現行定款の二種類があり、それぞれ取得・閲覧できる場所が異なるため、まずは前提となる知識をしっかりと把握しておく必要があります。

この記事では、定款に関する基本的な知識を解説したうえ、定款を取得・閲覧できる場所や、具体的な方法についてわかりやすく解説します。

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意外と知らない?定款の基本について解説

まずは、定款に関する基本的な知識を解説します。
定款を取得・閲覧するために必要な前提知識となるため、しっかり確認していきましょう。

定款とは?

定款とは、会社の組織と活動に関する根本規則を文書化したもので、『会社の憲法』と呼ばれるほど重要なものです。

会社が成立した後、定款は会社の本店および支店に備え付けることが義務づけられており、会社の株主や債権者は、会社の営業時間中はいつでも定款の閲覧および交付を請求できます(会社法31条1項、2項)。

なお、現在は電子データによる定款も認められており、電子定款の場合にはデータを保存したCD-ROMなどを備え付けていることが一般的です。

定款には会社運営に関するさまざまな事項が記載されていますが、その内容は法的効果に応じて、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の三種類に分類されます。

絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項のことで、会社の商号や本店所在地などが代表例です。

これに対し、相対的記載事項とは、必ずしも定款に記載することは必要ではないものの、記載しなければ効果が発生しない事項のことをいいます。

任意的記載事項とは、株主総会や取締役会が制定する他の規則によっても効力を生じるものの、事項を明確化するためにあえて定款に規定し、法令に反しない範囲で会社や株主等を拘束する事項のことを指します。



定款には原始定款と現行定款がある

株式会社の場合、発起人によって作成された定款は、公証役場にて公証人による承認を受けなければならず(会社法26条1項、30条1項)、この認証を受ける前の定款のことを『原始定款』と呼びます。

もっとも、会社が成立したあと、例えば本店の移転など定款に記載されている内容に変更が生じた際に、株主総会特別決議により定款の内容が変更されることは珍しくありません(会社法466条・309条2項11号)。

このような変更を経て、いま現在最新の定款として効力を有する定款のことを『現行定款』といいます。

定款の内容が一度も変更されていない場合には、原始定款と現行定款は同一となりますが、会社の歴史が長かったり、急成長を遂げたりした場合には複数回の定款変更を経ていることが一般的です。

定款を法務局で取得することはできるのか?

必ずしも現行定款が保存されているとは限りませんが、登記に際して定款が添付された場合にのみ、法務局での閲覧が可能です。

以下からは、具体的な運用について解説します。

定款の取得はできないが閲覧することは可能

登記申請に際して添付された書類は、登記申請の日から10年間は法務局で保存されます(商業登記規則34条4項4号。令和1年10月改正により5年から10年に伸長)。

そのため、定款の添付が必要となる登記手続きが行われた場合には、その登記申請の日から10年以内に限り、第三者でもその定款を閲覧することが可能です。

あくまで『閲覧』が許可されているにすぎないため、複写や交付の請求はできませんが、法務局によってはデジタルカメラによる撮影を認めているところもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

登記簿の附属書類(登記申請書及び添付書面)の閲覧請求の手続きについて

                                                      引用:法務局 


登記簿に添付された定款を閲覧するためには、法務局に設置されている申請書類に必要事項を記入したうえ、手数料として450円分の収入印紙を貼付して提出します(収入印紙は法務局内で購入できます)。

さらに、発起人や役員等以外の人が申請する場合には、閲覧しようとする定款と『利害関係』にあることを示さなければなりません(商業登記法11条の2、商業登記規則21条)。

ここにいう『利害関係』は厳格に解釈されており、単に会社の株主や債権者であるという理由では足りず、例えば法務局に保管されている定款自体の有効性を争う場合など、非常に限定的な場合にのみ該当します(法務省民商第98号民事局長通達・第99号依命通知)。

また、現在はオンライン申請により会社の登記簿を取得することが可能ですが、定款など添付書類は法務局に現物として保管されているため、閲覧するためには会社の本店所在地を管轄している法務局に直接足を運ぶ必要があります。

なお、申請後に書類の検索に時間がかかったり、スペースの都合により他の法務局や倉庫に保管されていたりする可能性があるため、あらかじめ電話等で書類の所在を問い合わせておくことをおすすめします。

附属書類に定款が含まれる登記は、設立登記と役員変更登記

法務局での登記手続きにおいて、定款の添付が必要となるのは主に①会社設立登記②役員変更に関する登記の2種類です。

このうち、①会社設立登記に関しては株式会社であれば必ず登記を行なっているものの、設立登記に際して添付されるのは原始定款であって現行定款とは限らないことや、後ほど紹介するように公証役場でも原始定款を取得できる点に注意が必要です。

次に、②役員変更に関する登記では、取締役会設置会社かどうかなど、会社の組織形態によって登記が必要な場合と不要な場合があるため、場合によっては定款が添付されていない場合もあります。

なお、定款変更を行なったことを登記する際、株主総会議事録の添付は必要となりますが、定款自体の添付は必要ないため、この場合でも現行定款を閲覧できるわけではありません。

以下は、定款の添付が必要な登記手続きをまとめたものです。

これらの登記手続きが最近行われている場合には、法務局に保管されている定款は現行定款である可能性が高いといえるでしょう。



定款を取得するなら公証役場へ請求

公証役場では、会社設立後20年以内に限り、原始定款を取得することが可能です。
以下からは、公証役場での取得手続きについて具体的に解説します。

公証役場へ申請すれば謄本の取得が可能

公証役場で認証を受けた定款は、認証後20年間にわたり公証役場で保管されているため、この期間内であれば、原本の閲覧および謄本の交付を受けられます(公証人法施行規則27条1号、公証人法62条ノ5、60条ノ4、51条ないし56条)。

ただし、公証役場で定款の認証が行われるのは会社設立時だけであり、定款変更の際に認証は不要であることから、公証役場に保管されているのはあくまで原始定款であって、必ずしも現行定款とは限らない点に注意が必要です。

謄本を取得するための必要事項、必要なものを解説

公証役場で定款の閲覧・取得を請求するためには、定款認証をした公証役場に足を運び、申請用紙に必要事項を記入・提出する必要があります。

ただし、例えば新宿区の公証役場で定款の認証を受け、その後本店のある渋谷区の法務局で登記をしたケースや、設立後に本店が移転しているケースもあるため、定款認証をした公証役場あらかじめ確認しておくことをおすすめします。

公証役場での手続きに必要な手数料は、原本閲覧の場合200円、謄本交付の場合用紙1枚ごとに250円です。

公証役場で定款の閲覧・取得を請求できるのは、発起人などの本人か、その代理人に限定されているため、誰しもが閲覧・取得できるわけではありません。

なお、電子定款の交付(この場合、『同一情報の提供の請求』といいます。)を受ける場合には、電子証明書の取得や申請システムを導入するなどの手続きが必要となります。

具体的な請求手続きについては法務省のWebサイトに掲載されているため、詳しくはこちらをご覧ください。

定款は法務局や公証役場で閲覧できるが現行定款とは限らない

今回紹介したように、定款には現行定款と原始定款の二種類があり、現行定款は会社の本店および支店に保管されており、原始定款は法務局と公証役場に保管されています。

定款の添付が必要な登記手続きが行われた場合、その定款は10年間にわたって法務局に保管されますが、そもそも定款添付が必要な手続きは多くないため、法務局に保管されている定款が必ずしも現行定款とは限りません。

公証役場には会社設立後20年間にわたって原始定款が保管されており、閲覧および謄本の取得が可能ですが、設立後に定款変更が行われている場合には現行定款を確認することはできません。

また、法務局・公証役場のいずれにおいても、発起人や会社の役員等ではない第三者による閲覧・取得には厳しい条件が課せられているため、請求が認められない可能性もあります。

自社の定款を紛失してしまい、原始定款からの復元が難しいと思われる場合には、定款の作成を依頼した弁護士・司法書士に問い合わせるか、新たに定款を作成することをおすすめします。

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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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