会社や法人の役員の任期は、会社の種類によって異なります。株式会社や一般社団法人などでは法律で任期が定められていますが、特例有限会社や合同会社などでは法律上の任期設定はありません。
法律で任期が定められていれば迷うことはありませんが、自由に決められる場合は、任期を何年に設定すればいいかわかりにくいかもしれません。役員の任期には、長すぎると経営の刷新が難しくなる一方、短すぎると中長期的な視点を持ちにくくなるなどのメリット・デメリットが存在しており、会社の規模や役員の年齢・役割などを踏まえて、会社に合った任期を設定することが重要です。
この記事では、会社・法人種類ごとの役員任期の設定ルールと、任期の長短によるメリット・デメリットについて解説します。
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会社・法人における役員任期とは?
会社や法人において、取締役や監査役などの役員には任期が設定されています。ここでは、役員の任期の意味とその長短のメリット・デメリットについて解説します。
取締役や監査役など役員の任期を指す
役員とは、取締役や監査役などを指します。その任期については、
- 法律で上限が決められている
- 法律の範囲内で定める
- 定款で自由に決定できる
- そもそも任期に定めがない など
会社や法人の種類によってさまざまです。
株式会社や一般社団法人では法律上、任期が決められており、任期が終了すると、役員は任期満了により退任となりますが、留任する場合は、重任の手続きを経れば、役員を継続できます。
また、合同会社などの持分会社では、株式会社や特例有限会社とは異なり、役員の概念はありません。代わりに、同じような役割を担う「社員」がいます。また、「社長」「CEO」「専務」などの肩書がついていても、法律上の役員でなければ、任期規定の対象にはなりません。
役員の任期設定は、会社の種類や規模、役員の役割などを考慮して、適切に行われるのが一般的です。任期の長短にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、よく検討する必要があります。
役員任期の長短のメリット・デメリット
役員の任期の長短には、それぞれメリットとデメリットがあります。
任期を長くすることのメリットは、将来を見据えた会社経営を考えられる点です。一方で、デメリットとしては、経営体制を変更しにくくなることがあげられます。また、役員に権限が集中してしまう弊害や、不正の遠因になる可能性もあります。
逆に、任期を短くすることのメリットは、経営体制の変更がしやすくなることです。しかし、デメリットとしては、短期的な業績にとらわれてしまい、中長期的な展望が持ちにくくなることがあります。また、任期満了に伴う重任などの登記申請手続きが増えることで、手間や費用の負担が生じます。
具体的には、たとえば、資本金額1億円以下の会社が役員の重任(退任と就任)を登記する場合、登録免許税として登記申請ごとに1万円かかります。任期が短い場合はそれだけ登記申請の費用の負担は大きくなります。
そのほかのメリット・デメリットとあわせてまとめると、次の表になります。
<役員任期の長短によるメリット・デメリット まとめ>
任期 | メリット | デメリット |
---|
長い | - 会社の将来を見据えた経営判断が可能
- 長期的な成長戦略の立案と実行に適している
- 会社運営の一貫性と安定性が維持されやすい
- 役員の知識と経験が豊富になる
| - 経営陣の交代が難しくなり、変革が遅れる
- 役員への権力集中により、不正のリスクが高まる
- 新しい発想や革新的なアイデアが生まれにくくなる
- コンプライアンス上の問題が発生するリスクがある
|
短い | - 経営体制の刷新がしやすい
- 新しい視点とアイデアを取り入れやすい
- 役員の業績意識が高まる
| - 近視眼的な経営判断に陥りやすく、長期的な成長が犠牲になる
- 任期満了に伴う手続きの増加により、事務負担とコストが増大
- 目先の利益を優先するあまり、会社の持続的発展が阻害される
- 役員の頻繁な入れ替わりにより、組織の安定性が損なわれる
|
※それぞれのメリット・デメリットは可能性であり、必ず発生するわけではありません。
会社の状況や役員の役割などを踏まえ、バランスの取れた任期を設定することが大切です。一律に長くしたり短くしたりするのではなく、それぞれのメリット・デメリットを十分に検討し、自社にふさわしい任期を定める必要があります。
会社・法人種類ごとの役員任期
会社や法人の種類によって、役員の任期設定のルールが異なります。ここでは、会社・法人の種類ごとに異なる役員の任期について詳しく解説します。
株式会社の役員任期
株式会社の役員は、会社の業務執行を担う「取締役」、取締役の職務執行を監査する「監査役」、会計書類等の作成を行う「会計参与」です。代表取締役は取締役に含まれますが、執行役員などは法律上の役員ではないため、任期設定の対象にはなりません。
標準的な役員の任期は、取締役が2年、監査役が4年となっています。ただし、厳密には「選任後2年以内に終了する最終事業年度に関する定時株主総会の終結の時まで」などと表現されます。役員の任期は、定款で変更することができますが、非公開会社であれば、最長10年以内で定めることも可能です。
任期満了時には、役員は退任となりますが、引き続き留任する場合は、株主総会での重任決議が必要です。任期中の辞任や解任については、定款や法律の定めに従って行われ、役員の任期満了後は、退任か重任かにかかわらず、2週間以内に登記申請を行う必要があります。
特例有限会社の役員任期
特例有限会社では、取締役のみの場合でも、代表取締役を選任する場合でも、役員の任期は法律上定められていません。監査役についても同様です。
ただし、特例有限会社は定款で役員の任期を設定することが可能です。特に、外部から役員を招聘する場合などでは、任期がないことで役員の変更がしにくくなるのを避けるために、定款で任期を定めるケースもあります。
合同会社の役員任期
合同会社では、法律上、取締役や監査役などの役員は規定されていません。
ただし、合同会社には、会社の代表権や業務執行権を持つ立場として、「代表社員」や「業務執行社員」という役割があります。これらは、実質的に株式会社の役員と同じような役割を担っています。
代表社員は合同会社を代表し、業務執行社員は業務を執行する権限を持ちます。
これらの役割についても、法律上の任期規定はありませんが、定款や社員間の契約で任期を定めることは可能です。
合資会社・合名会社の役員任期
合資会社や合名会社においても、法律上、取締役や監査役などの役員は規定されていません。
合資会社は、無限責任社員と有限責任社員で構成されます。無限責任社員は、会社の債務について無限連帯責任を負い、有限責任社員は、出資額を限度として責任を負います。合名会社は、無限責任社員のみで構成されます。
合資会社や合名会社においても、会社の代表権や業務執行権を持つ立場として、「代表社員」や「業務執行社員」という役割があります。これらの役割についても、法律上の任期規定はありませんが、定款や社員間の契約で任期を定めることは可能です。
一般社団法人の役員任期
一般社団法人の役員は、業務執行を担う「理事」と、理事の職務執行を監査する「監事」を指します。
理事の任期は、原則として2年となっています。ただし、定款の定めや社員総会の決議によって、その任期を2年より短くすることができ、2年を超えて任期を延長することはできません。一方、監事の任期は、原則として4年となっています。
一般社団法人の役員の任期は、株式会社と同じように、厳密には「選任後2年以内に終了する最終事業年度に関する定時社員総会の終結の時まで」とされています。
<会社の種類ごとの役員任期 まとめ>
会社の種類 | 役員の種類 | 任期 |
---|
株式会社 | 取締役 | 2年 ※定款で変更可能 (非公開会社の場合は10年以内) |
監査役 | 4年 ※定款で変更可能 (非公開会社の場合は10年以内) |
会計参与 | 2年 ※定款で変更可能 (非公開会社の場合は10年以内) |
特例有限会社 | 取締役 | 法律上の定めなし ※定款で設定可能 |
監査役 | 法律上の定めなし ※定款で設定可能 |
合同会社 | 法律上の役員の規定なし (代表社員・業務執行社員) | 法律上の任期規定なし ※定款や社員間の契約で任期設定可能 |
合資会社 合名会社 | 法律上の役員の規定なし (代表社員・業務執行社員) | 法律上の任期規定なし ※定款や社員間の契約で任期設定可能 |
一般社団法人 | 理事 | 2年 ※定款や社員総会の決議で2年以下に短縮可能 |
監事 | 4年 ※定款で2年を限度に短縮可能 |
この表は、会社の種類ごとに役員の任期設定ルールがどのように異なるかを簡潔にまとめたものです。会社の種類ごとにどれほどの違いがあるか確認してください。
会社の規模や役員の年齢などによって適切な任期設定を
会社や法人の役員の任期は、会社の種類によって法律で定められていたり、定款で自由に決められたりします。具体的には、株式会社や一般社団法人では法律で任期が定められている一方、特例有限会社や合同会社などでは任期設定が任意となっています。
役員の任期設定は、会社の規模や役員の年齢、役割などを踏まえて適切に行うことが重要です。任期が長すぎると役員の交代が難しくなり、短すぎると目先の業績にとらわれたり手続きの負担が増え、持続的な成長を犠牲にしてしまうおそれがあるなど、それぞれにメリット・デメリットがあります。
会社の実情に合わせて、役員の任期を適切に設定することが、会社の健全な運営につながります。一律の判断ではなく、自社の状況を考慮しながら、最適な任期設定を行うといいでしょう。
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