近年、外資系企業を中心に株式会社ではなく、合同会社を設立する例が増えています。合同会社は、株式会社と比べると数が少なく一般的とは呼びにくいものの、出資者である社員が経営に関与できるため、株主と経営層とで意思決定機関が異なる株式会社と比較して、機動的な経営が可能な形式ともいえます。合同会社においては株式会社と比較して様々な手続き面で異同があります。
本記事では合同会社の本店所在地が変更となった場合の必要な手続きについて分かりやすく解説します。
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合同会社の住所変更(本店移転)の手続きの流れ
合同会社の住所変更(本店移転)の手続きは、大きく以下の3つの手続きに分かれます。
1.会社内の手続き
2.法務局の手続き
3.移転登記後の手続き
そこで、まずは各手続きの流れと概要を説明します。
1.会社内の手続き
まず最初にやるべきは、本店所在地の変更について会社内で正式決定する必要があります。株式会社の場合には、取締役会や株主総会で決定しますが、合同会社の場合には、定款に定める本店所在地の変更は、「総社員の同意」で行います(会社法(以下「法」)第637条)
また、本店所在場所や本店移転日は「社員(業務執行社員)の過半数の決定」で行います(法第590条第2項・第591条第1項)。
定款変更の要否によって手続きが異なるため、注意しておきましょう。
登記に際しては、こうした社員の同意を証する書面の添付が必要となります。そのため、手続きが完了した旨を記した同意書・決定書を作成する必要がある点も押えておきましょう。
2.法務局の手続き
会社内で本店移転についての手続きができたら、次は合同会社の住所変更は法務局で「本店移転登記申請」の手続きを行います。
法務局での手続きのポイントは、本店所在地の移転先が、従前の法務局の管轄内か、管轄外によって異なる点です。なお、それぞれの手続き方法については後ほど詳しく解説します。
3.移転登記後の手続き
法務局での本店移転登記が完了したら、その他の手続きを行います。移転登記後の手続きとしては、税務署への移転申請や都道府県税事務所、市区町村への移転申請などの税務面の申請や年金事務所などへの申請など多岐にわたります。
どういった手続きがあるのかについては後ほど詳しく解説します。
管轄内外ごとの法務局の手続き
先ほども少しご説明しましたが、合同会社の住所移転の手続きは移転後の本店所在地が移転前の法務局の管轄の中か外かによって手続きが異なります。そこで、管轄内外ごとの法務局の手続きについて解説します。
本店移転登記は管轄の法務局に申請する
合同会社の本店移転登記は、管轄の法務局に申請する方法で行います。管轄とは、簡単に言うと法務局が管理している区域のことをいいます。
その際に重要なのが、移転先の本店所在地が移転前の法務局の管轄と同じであるかという点の確認です。
法務局の管轄については、法務局 管轄のご案内から確認が可能なので、必ず確認しておきましょう。移転先が管轄内である場合と、管轄外への移転とでは手続き方法が違うため、必ず確認するようにしましょう。
管轄内移転の場合
移転先が法務局の管轄内の場合には、「合同会社本店移転登記申請書」を提出することで手続きが完了します。
この場合には、必要書類は
①本店移転登記申請書
②別紙(登記すべき事項)
③総社員の同意書や業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
が必要となります。
また、移転登記に要する費用としては、登録免許税として30,000円がかかります。
管轄外移転の場合
これに対して、法務局の管轄外に本店所在地を移転する場合には、「合同会社本店移転登記申請書」を新旧両法務局用の2通作成し、移転前の法務局に対してまとめて提出する必要があります。
2通の作成が必要な点が大きく異なるため間違えないようにしましょう。なお、もとの法務局へ提出すれば、新しい法務局へは自動的に移送されるため別々に提出する必要はありません。
この場合の必要書類は以下の通りです。
1.旧本店所在地法務局用のもの
・本店移転登記申請書
・別紙(登記すべき事項)
・総社員の同意書や業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面
2.新本店所在地法務局用のもの
・本店移転登記申請書
・別紙(登記すべき事項)
・印鑑届書
・印鑑カード交付申請書
以上が必要書類となります。なお登記すべき事項については、CD-Rでの提出や、OCR用紙、通常の用紙へ印刷する方法があります。どの方法でも自由に選択できますが、登記申請書内へ「別紙の通り」と記載するか、「別添のCD-Rの通り」と記載するか変わるため、確認しておきましょう。
なお、管轄外へ移転する場合には、登録免許税が60,000円必要となります。管轄内の移転の場合と金額が大きく異なるため十分注意しましょう。
本店移転登記後の手続きとその他の手続き
本店移転登記が完了したら、後は残った手続きを完了させましょう。提出先や申請先が複数となるため、本記事を参考にあらかじめ必要となる手続きを押えておくのが重要です。
本店移転登記により定款変更が必要になる場合
合同会社の本店を移転する場合、本店移転登記手続きと合わせて、定款変更の手続きが必要となるケースがあります。定款変更が必要な場合としては、定款に本店所在地の番地まで記載してある場合や法務局管轄外の移転の場合には移転登記手続きとは別に、定款変更の手続きが必要となります。
他方で、定款の本店所在地の記載が、市区町村までになっている場合には、本店所在地が変更になっても、定款を変更する必要はありません。
なお、定款変更の手続きには原則として全社員の同意が必要となります。そのため、定款変更が必要なケースでは、特に事前に社員間でコンセンサスを形成しておき、スムーズに同意が得られるようにしておくことが重要です。
住所変更後の手続き
登記と住所変更が完了したら、後は住所変更に伴い必要となる手続きを行いましょう。税に影響する手続きが多いため、漏れなく行える様にしておくことが重要です。
また、こうした手続きは次回に備えて一覧化しておくと今後の業務の役にも立つでしょう。
本店移転登記を忘れてしまった場合は?
ここまで手続きの内容について解説してきましたが、手続きが多いため、そもそも登記をしなければ良いのでは無いかと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、会社法第915条第1項により、会社の登記事項に変更が生じた場合には、その変更の日から2週間以内に登記変更の手続きを行う義務が課せられています。
この登記義務を怠った場合には、最大で100万円の過料を課せられる可能性があります(会社法第976条第1号)ので注意しましょう。
過料の金額は、本店移転から何年ぐらい放置していたかなどの事情によって異なっています。しかし、適法に手続きを行えば負担する必要の無い金銭ですので、必ず本店移転を行ったら速やかに移転登記の手続きを完了するようにしましょう。
本店移転登記の際には、まずは法務局管轄を確認!
本店移転登記はたくさんの手続きを行う必要がありますが、移転後の本店所在地がこれまでの法務局の管轄の中か祖とかによって手続きが異なり、登録免許税の額も異なります。移転先によっては、前回の知識ややり方が使えない場合もありますので、どんな手続が必要になるか前もって確認しておきましょう。
本記事をお読みいたえだき、移転に際してどういった手続きが必要なのか押さえつつ、スムーズな本店移転手続きの参考としていただければ幸いです。
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GVA 法人登記が対応している登記種類
・本店移転(管轄内移転・管轄外移転)
・役員変更(新任、辞任、重任、退任)
・役員の住所変更
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GVA 法人登記で作成できる合同会社の本店移転登記に必要な書類
※手続き状況により、一部作成されない書類もございます
- 総社員の同意書
- 業務執行社員の決定書
- 登記申請書(管轄外本店移転の場合は、管轄外提出分も同時に作成)
- 印鑑届書
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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