会社の本店に自宅住所を登記すべきでない6つの理由

本店移転
投稿日:2024.07.30
会社の本店に自宅住所を登記すべきでない6つの理由

会社を設立する際には、本店として登記する住所を決定しなければなりません。

しかし、会社設立前には事務所を借りるようなお金がないので、「本店登記は自宅の住所で良い」と、自宅住所を登記しようとしている人も多いのではないでしょうか?法律上も自宅住所にすることは禁じられてはいないので可能ではあります。

そのため会社設立時などには「後から本店移転すれば良い」というような安易な気持ちで自宅住所で登記しがちですが、自宅は本店住所として登記すべきではない場合もあります。

自宅を登記すべきではない理由としては以下の6点をあげることができます。

  • 物件の管理規約に抵触してしまう可能性がある
  • 住宅ローンの審査に通過できない可能性がある
  • 特定事業の許認可が下りない可能性がある
  • 賃貸住宅の契約違反になる可能性がある
  • 法人の融資審査の際に不利になる可能性がある
  • まわりの住民に迷惑になってしまう可能性がある


自宅住所を本店登記したことによって、自宅の退去を迫られたり、事業の営業ができなくなる可能性もあるので本店登記の住所は慎重に決定する必要があります。

本記事では自宅の住所で会社の本店登記してはいけない6つの理由を詳しく解説していきます。

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物件の管理規約に抵触してしまう可能性がある

自宅住所を本店登記すると、自宅の賃貸住宅の管理規約に抵触してしまう可能性があります。

物件の管理規約とは、マンション等の管理組合の根本規約です。

管理規約の中には、住宅の用途を「専ら住居として使用する」と明記している場合が多く、居住の用にしか利用できない住宅の住所を本店登記するということは、居住用と定められた物件を事業用に使ってるということであり規約違反に該当する可能性があります。

判例でも事務所利用は不可とされている

マンションの1室を事務所として使用した税理士の事務所利用について、マンションの管理組合が利用禁止を訴えた裁判があります。

この裁判の平成23年の東京高裁の判決によると、以下のような判決となっています。

『「区分所有者は,その専有部分を専ら住宅として使用するものとし,他の用途に供してはならない。」と記載された管理規約の元で、税理士事務所を営むことは区分所有法57条にいう「区分所有者の共同の利益に反する行為」であることから、税理士は建物を税理士事務所として使用してはならない』

簡単に言えば、住居として使用すると記載された建物を事業の用途として利用することはダメだと裁判所は判断しています。

このように、せっかく自宅住所を本店登記しても、事務所として使用できなくなってしまう可能性があり、本店移転登記をしなければならない可能性があります。

物件の管理規約に「住居専用」と記載されている場合は、自宅住所を本店登記することは避けましょう。


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住宅ローンの審査に通らない可能性がある

本店登記した住所の自宅を建て替えるために住宅ローンを組む場合、住宅ローンの審査が通らない可能性があります。

本店登記しているということは、「自宅は会社の事務所である」または「自宅兼会社である」と判断できます。

しかし、住宅ローンでは会社の事務所の購入資金を融資することはありません。

住宅ローンが融資するのは個人の居住用の物件だけです。

自宅住所が本店登記されていることによって「住宅ローンで融資したお金が事業の設備資金に利用されるのではないか?」と疑われて審査に通過することができない可能性があります。

自宅兼事務所を建築する場合は融資額が按分される

自宅兼事務所を建築する場合には、住宅ローンで借りることができるのは、自宅の部分だけで、事務所部分に関しては事業融資の設備資金で借りなければなりません。

そのため、本店登記された住所の住宅ローンを借りられたとしても、居住スペースの部分だけです。

例えば総工費3,000万円で、居住用スペースが2/3、事務所が1/3の場合、住宅ローンで借りることができるのは2/3部分である2,000万円だけです。

自宅住所を本店登記した場合、住宅建築資金全額を借りることができない可能性もあると理解しておきましょう。

特定の事業では許認可が下りない可能性がある

そもそも、自宅に本店登記をした場合、業種によっては行政から許認可が下りない可能性があります。

建設業や飲食業は営業許可が必要な業種ですが、自宅を本店登記したことによって許可が下りずに営業ができないリスクがあるのです。

業種によっては許認可のためにスペース等のルールを定められている場合があり、この場合にはマンションの一室などの自宅では許認可を得ることが非常に困難です。

例えば、建設業の営業許可を得るには以下のような基準を満たす必要があります。

  • 居住部分とは明確に区分した事務スペースを確保すること
  • 玄関に商号を表示しなければならない


賃貸マンションの場合には「居住部分とは明確に事務スペースを確保する」という条件を満たすことは相当に難しいです。

せっかく自宅に本店登記をしたとしても、許認可を得られずに営業を開始できない可能性がかります。

登記前にしっかりと許認可の条件を確認し、許認可を得ることができる物件を用意するようにしてください。

賃貸住宅の契約違反になる可能性がある

賃貸物件で、契約書に事務所利用しない旨の記載がある場合も本店登記は不可です。

大家や管理会社に事務所利用したことが発覚してしまうと、契約違反になり、強制退却となってしまう可能性があります。

居住用の物件と事業用の物件は所有者(大家さん)にとって以下の2点で大きな違いがあります。

  • 固定資産税が居住用と事業用で異なる
  • 居住用の家賃に対する消費税はかからないが事業用であれば消費税がかかる


大家さんにとって事業用か居住用かは大きな違いで、事業用の用途で貸していた家賃の消費税を申告していなかった場合には脱税になってしまうリスクもあります。

賃貸契約書に事業所利用しない旨の記載がある場合には、事業用として利用することはできませんし、本店登記することは不可です。
大家さんにも大きな迷惑がかかってしまう行為だと認識しましょう。

自宅の契約書をしっかりと確認し、契約違反に該当する場合には絶対に自宅住所を本店登記してはなりません。

法人の融資審査の際に不利になる可能性がある

自宅を本店住所をとして登記すると、法人名義で事業資金の融資を受ける際に、審査で不利になってしまう可能性があります。

金融機関が法人を評価する際に重要なポイントが「法人と経営者の会計はしっかりと区分されているか」という点です。

事業資金として融資したお金は事業の用途にしか利用することができません。
しかし、法人と経営者個人の会計がごちゃ混ぜになっている会社は、法人の事業資金として融資したお金が結果的に経営者個人の支出に使われてしまう懸念があります。

例えば、自宅住所が法人登記されている会社が自宅で使用した電気代のうち、どこからどこまでが生活費でどこからどこまでが事業の経費なのかの区分はかなり曖昧です。

自宅を本店登記されている企業は、そもそもが事業と生活が一体になっているので、金融機関にとって「事業資金を個人の消費資金として利用されるリスクがある」と判断される可能性があります。

自宅住所を本店登記している会社は、事業資金融資の審査で不利になる可能性があります。

まわりの住民に迷惑になってしまう可能性がある

自宅を本店登記し、実際に自宅を会社の事務所として使用した場合、会社には様々な人が出入りする可能性があります。

当該物件は居住用としての建物であるならば、当然、居住用として静かな環境でなければなりません。

国土交通省の標準管理規約には住宅の定義として「生活の本拠であるために必要な平穏さを有する」ということが定義とされています。
しかし、事業用途として利用して人の出入りが多くなることで、「生活の本拠であるために必要な平穏」を乱していると判断される可能性があります。

また、荷物の搬送が多い事業なども「生活の本拠であるために必要な平穏」を乱していると判断される可能性があるので注意が必要です。

自宅を本店に登記すると営業活動と日常生活に支障をきたす可能性があることを認識しておく

自宅を本店登記することは、「特定事業の許認可が下りない」「法人の融資審査に不利になる」など営業活動に支障をきたす可能性があります。

また、営業活動だけでなく経営者本人の居住地としても、その場所に住みにくくなってしまう可能性もありますし、最悪の場合、自宅の退去を迫られてしまうかもしれません。
創業当初から営業活動と日常生活双方に支障をきたしてしまう危険性があることを認識した上で本店登記を決めましょう。

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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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