レンタルオフィスやバーチャルオフィス、シェアオフィスなどへ会社の本店を移転する場合、オフィスの機能だけでなく、移転の手続きやその影響についても知っておかないと思わぬ失敗の原因となります。
本記事では、安全・確実にレンタルオフィスなどへ移転をするためのポイントや注意点について解説いたします。
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レンタルオフィス、バーチャルオフィス、シェアオフィスそれぞれの違いについて
レンタルオフィス、バーチャルオフィス、シェアオフィス、どれも同じもののように思えますが、以下のような違いがあります。
レンタルオフィスは、固有のデスクとイスを持ち、施設の設備を利用できるタイプのオフィスです。スペースが独立しているため、集中して業務ができるという特徴があります。
シェアオフィスは、施設の設備だけでなくデスクやイスも不特定の人間とシェアするタイプのオフィスです。専用スペースがなく、施設のすべてを共有するところが、レンタルオフィスとの大きな違いとなります。
これに対して、バーチャルオフィスは、事務所の住所のみを提供するサービスです。「スペースはいらないが、自宅を事務所の住所にしたくない」などの場合に便利です。
なお、融資を受ける場合には、シェアオフィスやバーチャルオフィスについては、会社としての独立性がないと金融機関から判断されることがあります。したがって、これら3種類の中では、個人的なスペースがあり、多少、他と分離されているレンタルオフィスを本店移転先として選択した方が無難といえます。
移転の前後で必要となる手続きや流れ
レンタルオフィスなどに移転する場合には、次のような手続きやポイントに注意するようにしましょう。
入居時の手続きの流れと必要書類
施設への入居時には、次のような手続きが必要となります。
- 電話・メールで問い合わせ
- 現地見学
- 入居申し込み
- 審査
- 契約手続き、初期費用の支払い
- 入居
また、その際の必要書類としては、次のようなものがあります。
個人:身分証明書、銀行印、事業内容のわかる資料など
法人:身分証明書、銀行印、印鑑証明書、登記事項証明書、事業内容のわかる資料など
入居時にかかる費用
レンタルオフィスやシェアオフィスへの入居には、通常、賃料・共益費、入会金、その他の初期費用などがかかりますが、入会金や初期費用がないタイプもあります。また、バーチャルオフィスの場合には、これらと比べて費用が安いケースが多く、転送や秘書代行などのサービスを利用しなければ、初期費用なし、月額数千円で利用できるものも少なくありません。
入居前に確認した方がよいこと
レンタルオフィスなどへの移転をする前には、以下のことを確認しておくと安心です。
- 契約期間や解除の条件、その他特別な条件の有無
- 会社の本店登記が可能か?
- 共用スペースは利用しやすいか?使用について制約などはないか?
- コピーや備品の使用など、契約にない料金がどのくらいかかるか?
- 混雑具合や騒がしさはどの程度か?
- 会議室や応接室は予約しやすいか?
- その他自分に必要なサービス(郵便受け取り、秘書代行など)があるか?
- 現在の事務所から移転する場合には、旧事務所の原状回復費用がどの程度かかるか?
入居後の注意点
レンタルオフィスなどには、利用者が共有で使えるスペースが設けられていますが、利用できる時間や禁止事項が決められていることがあります。また、オフィスの使用についても、施設によっては時間や曜日が決められていたり、特別な制限が設けられていることもあるため事前に確認しておきましょう。
入退去の際に気をつけるべき本店移転の手続きについて
会社の本店をレンタルオフィスなどへ移転するときには、本店移転の手続きが必要となりますが、ケースによって手続きの内容が異なります。
本店移転登記とは?
本店移転登記とは、会社の本店、つまりは登記簿上の会社所在地を移転する場合に行う手続きのことをいいます。
それまで、自宅を本店として登記していた会社がレンタルオフィスへ移転する場合や、他のオフィスから新たなオフィスへ移転する場合などに必要となります。
なお、この登記手続きは、本店を移転した日から2週間以内に行う必要があります。もし、この期間を経過した場合には、最大で100万円以下の過料が科される可能性もあるため、忘れずに手続きをするようにしてください。
移転先で異なる本店移転手続き
本店を同一の管轄地域内(同じ市町村や区内)で移転する場合(例えば、新宿区内から新宿区内への移転)は、現在の会社所在地を管轄する法務局に対して本店移転登記申請書を提出します。
これに対して、他の管轄地域(例えば、新宿区から渋谷区内への移転)へ本店を移転する場合には、現在の事務所所在地を管轄する法務局に対して、「現在の事務所(新宿)を管轄する法務局宛の申請書」と「移転先の事務所(渋谷区)を管轄する法務局宛の申請書」が必要となります。
この場合、それぞれ別々の法務局へ提出するのではなく、現在の本店を管轄する法務局にまとめて提出することにご注意ください。
本店移転の手続きの流れ
本店移転手続きの流れは、①同一の管轄地域内での移転か、②他の管轄地域への移転かにより異なります。
①の場合(①新宿区内→新宿区内への移転の例)
新宿区を管轄する法務局へ登記申請
②の場合(②新宿区内→渋谷区内への移転の例)
新宿区を管轄する法務局へ登記申請→新宿区を管轄する法務局で審査完了後、渋谷区を管轄する法務局へ登記申請書が送付される→渋谷区を管轄する法務局で手続完了→新宿区を管轄する法務局で手続完了
登記完了までにかかる時間は、提出の時期や法務局の混雑状況により異なりますが、通常、同一管内の移転の場合は7~10日程度となります。しかし、他の管轄への移転登記の場合には2ヶ所の法務局で手続きをするため、2週間程度の時間が必要となることが多いようです。
本店移転登記にかかる費用
本店移転登記に必要な手数料(登録免許税)は、収入印紙を申請書に貼付して納めます。同一管轄内の移転の場合には3万円、他管轄への移転の場合には6万円の登録免許税が必要となります。(この場合には、それぞれの申請書に3万円ずつ収入印紙を貼付します)収入印紙は、消印や割印をしてしまうと、納付したことにならなくなってしまうため注意しましょう。
なお、登記手続きを専門家に依頼した場合には、一般的に3~5万円程度の報酬(と収入印紙代)がかかるといわれています。
本店移転登記の必要書類
本店移転登記の際には、以下の書類を登記申請書と一緒に提出します。
- 株主総会議事録 1通
- 株主の氏名又は名称,住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト) 1通 ※本店移転に伴い、定款を変更する必要があるときは(定款に規定されている本店の所在地の市区村町が変わる場合(目黒区から渋谷区)や、定款に本店の詳細な番地まで規定している場合)、株主総会議事録と株主リストが必要となります。
- 取締役会議事録(又は取締役の過半数の一致を証する書面) 1通
- 委任状 1通(代理人に登記申請を委任した場合)
本店移転登記申請書の記載例は、以下の法務局Webサイトからダウンロードすることができますのでご参考ください。
同一管内での移転:https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252660.pdf
他の管轄への移転:https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001252661.pdf
本店移転登記のその他の注意点
他に本店移転の登記申請時に注意すべき項目としては以下があげられます。
- 登記申請書に記載する本店移転の日付は、変更の決議をした議事録に記載されている移転の時期(実際に移転した日)となりますので、移転日から2週間以内に忘れずに申請を行いましょう。
- 登記申請書に必要な書類が不足している,申請書やその他の書類に記載した内容に誤りがあるなどの場合には,その不備を自分もしくは代理人により訂正しなければなりません。この手続きをしないといつまでも手続きが止まったままとなってしまいます。記載する内容に不安がある場合は初めから専門家に依頼したり、法務局相談窓口で確認するのもおすすめです。
本店移転登記と融資の関係
本店移転の内容が影響する重要なポイントとして融資時の審査があります。会社経営への影響も大きいので十分注意しましょう。
頻繁な移転や登記忘れに注意
融資を受けるときには、金融機関により登記内容についての確認が行われますが、そのときにあまり頻繁に移転をしている場合には、「何か特別な事情があるのでは?」と思われてしまうことがあります。移転したのに登記申請していない期間がある場合も同様です。
移転先により利用できる融資制度が異なる
制度融資(信用保証協会の保証のついた融資の一種)は、会社所在地の都道府県または市町村の制度しか利用することができません。そのため、移転先によっては、自分が利用したい制度がないこともあるため、事前に確認しておく必要があります。
さいごに
レンタルオフィスなどにはさまざまな種類があり、その使い勝手も施設ごとに異なりますが、見た目や立地などだけで選ぶのではなく、現地を確認した上で自分に必要な機能やサービスがあるかを考えて選ぶようにしましょう。なお、本店の登記ができるかどうかはオフィスを選ぶうえでとくに重要なポイントとなりますが、これが認められていないオフィスもあるため、必ずあらかじめ確認してください。
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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