利益相反とは?どのような場合に該当するのかをわかりやすい例を交えて説明します

商業登記の基礎知識
投稿日:2024.10.18
利益相反とは?どのような場合に該当するのかをわかりやすい例を交えて説明します

企業の役員が関与する取引において、個人の利益と会社の利益が対立する場面を「利益相反」と呼びます。
会社経営において、役員の利益相反は避けて通れない重要なテーマです。
しかし、利益相反に該当する具体的な状況や適切な対処方法については、多くの経営者や役員が判断に迷い、明確な指針を求めています。
そこで、この記事では、自社のガバナンス強化と健全な経営の実現に向けて、利益相反の定義から具体的な事例、そして適切な対処法まで、わかりやすく説明します。
ぜひ、最後までお読みください。

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そもそも利益相反とは?

利益相反とは、取締役が自己または第三者の利益を図るために、会社の利益を犠牲にするような可能性のある取引や行為のことです。

例えば、取締役が自分の関係会社との取引を行ったり、個人的な利益のための取引を行ったりする場合です。会社法では、取締役と会社との間で利益が対立する可能性のある取引を「利益相反取引」として規制しています。

このように、利益相反取引は、取締役の忠実義務や善管注意義務と相反し、会社や株主の利益を害する恐れがあるため、適切な管理と対処が求められます。

利益相反取引に必要な株主総会・取締役会の承認

利益相反取引自体が完全に禁じられているわけではありません。
一定の条件下で、株主総会または取締役会の承認を得た場合、利益相反取引を認めています。

会社法356条では、取締役が自己または第三者のために会社と取引をしようとする場合、その取引について重要な事実を開示し、取締役会の承認を得る必要があります。取締役会設置会社でない場合は、株主総会の承認が必要です。
出典:会社法第三百五十六条(競業及び利益相反取引の制限) | e-Gov 法令検索

このプロセスは、以下の理由で重要です。

1. 透明性の確保:取引の詳細が開示されることで、他の取締役や株主が取引の妥当性を判断できる

2. 利益相反の管理:承認プロセスを経ることで、会社の利益が適切に保護されているかを確認できる

3. 法的保護:適切な承認を得た取引は、後に問題が生じても法的に保護される可能性が高い

例えば、取締役が自社の製品を個人的に購入する場合、通常の顧客よりも有利な条件で購入できる可能性があります。これは利益相反取引に該当しますが、取締役会で承認を得れば、その取引は有効となります。
このように、法に基づいた適切な承認プロセスを経ることで、利益相反取引は合法的かつ透明性のあるものとなり、会社の利益が不当に損なわれることを防ぐことができます。

承認なしの利益相反取引の効力

株主総会または取締役会の承認を得ないまま行った利益相反取引は、原則として会社は無効を主張することができます。

会社の承認を欠く利益相反取引については、以下の事象が発生する可能性があります。

1. 契約の無効:既に行われた取引について効力を失う

2. 損害賠償:会社に損害が生じていた場合、取締役が個人的に賠償責任を負う

3. 信用の失墜:利益相反取引が表面化することで、取締役個人や会社の信用が大きく損なわれる

例えば、会社が所有する不動産を、取締役会の承認なしに代表取締役が自分に売却した場合、会社はその取引の無効を主張することができます。

利益相反取引を行う際は、事前に株主総会や取締役会の適切な承認を必ず得ておくことが重要です。これは単なる形式的な手続きではなく、会社の利益を守り、健全な経営を維持するための重要なステップなのです。

承認不要の利益相反取引:例外的なケース

利益相反取引に承認が必要となる主な理由は、会社への損害が生じることを防ぐためです。
しかし、取引の性質上、会社に損害が生じる可能性がまったくない場合は、例外的に株主総会や取締役会の承認が不要となることがあります。
以下に例外的なケースの事例を挙げますが、実際の適用には個別の状況や法的解釈が必要です。

例外的なケースの事例


1. 会社に対する無償の財産贈与
例:取締役Aが所有する土地を会社に無償で譲渡する場合
この取引では会社が一方的に利益を得るため、通常、承認は不要とされます。ただし、税務上の影響や将来的な維持コストなどを考慮する必要があります。

2. 無利息・無担保の金銭貸付
例:取締役Bが会社の一時的な資金繰りのために、無利息・無担保で貸し付ける場合
無利息・無担保での貸付の場合、会社として不利益を受けることはないので、通常、承認は不要とされています。ただし、金銭消費貸借契約書等は作成しておくことが望ましいです。

3. 定型的取引
例:取締役Cが、自社サービスを利用するため、利用規約に同意した上でサービスを利用する場合
契約の内容が定型化されており、取締役や会社の裁量の余地がない場合にも承認は不要とされます。

ただし、これらの例外的ケースであっても、以下の点に注意が必要です。

透明性の確保:取引内容を取締役会に報告するなど、情報開示を行うことが望ましい。

継続的モニタリング:一度承認不要と判断された取引でも、状況の変化に応じて再評価が必要とな
          る。

社内規程の整備:どのような取引を承認不要とするか、明確な基準を設けることが望ましい。

さらに、利益相反が発生しないと判断される場合でも、慎重な検討が必要です。
役員が会社に直接的な損害を与えない範囲で自身の利益を追求するようなケースでも、間接的に会社の利益を損なう可能性がないか、十分に検討します。
判断に迷う場合は、安全を期して承認を得る、あるいは法律の専門家に相談することをおすすめします。
このように、承認不要の利益相反取引は非常に限定的であり、その判断には細心の注意が必要です。会社の利益を最優先に考え、疑わしい場合は必ず適切な承認プロセスを経ることが、健全な企業統治の基本となります。

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どのような場合に利益相反に該当するのか?

利益相反取引は、役員が自己または第三者の利益を優先させることで、会社の利益が損なわれる可能性がある場合です。
利益相反取引は大きく分けて、直接取引、間接取引、そして競業避止義務違反の3つに分類されます。
ここでは、それぞれについて具体的な事例を挙げ、どのような状況が利益相反に該当するかを説明していきます。

直接取引による利益相反:具体的事例と説明

直接取引による利益相反とは、役員が自分自身やその関連会社と直接取引を行うことで、会社の利益が損なわれる可能性がある場合を指します。これらの取引は、取締役の個人的な利益が会社の利益と対立するため、特に注意が必要です。

具体的な事例としては以下のようなものがあります。

1. 会社財産の取得
例:取締役Aが会社所有の不動産を購入する。
取締役Aの個人的利益と会社の利益が相反します。

2. 会社への金銭貸付
例:取締役Bが会社に1億円を貸し付ける。
取締役Bは利息により個人的利益を得る一方、会社は利息を負担することとなり、利益が相反します。

3. 会社からの借入
例:取締役Cが会社から3000万円を借り入れる。
取締役Cは有利な条件での借入を受けられる可能性がある一方、会社は適正な利息を得られない可能性があり、利益が相反します。

これらの取引は、他の取締役や株主に不公平感を与える可能性があり、適切な承認を得ていない場合には問題となります。既に述べたように、会社法では、このような直接取引を行う場合、取締役会(取締役会設置会社でない場合は株主総会)の承認が必要です。

承認の際は、以下の点を十分に検討します。

  • 取引の具体的な内容と条件


  • 取引の必要性


  • 取引条件の妥当性(市場価格との比較など)


  • 会社にとってのメリットとデメリット


取締役は、これらの取引について重要な事実を開示し、適切な承認を得る必要があります。承認を得ないまま取引を行った場合、後に無効とされる可能性があるだけでなく、取締役の善管注意義務違反や忠実義務違反として責任を問われる可能性もあります。

見落としやすいケース

利益相反取引で見落としやすいケースとして、役員が第三者のために行う取引や役員のために第三者と行う取引があります。
これらは直接的な取引に比べて見落としやすい傾向にあるため、特に注意が必要です。取締役自身が直接的に利益を得ない場合でも、間接的な利益を享受することがあります。

具体的な事例としては以下のようなものがあります。

1. 関連会社との取引
例:取締役Aが代表を務める別会社Xに業務を委託する。

2. 取締役の債務保証
例:取締役Bの個人的な1億円の借入に対して、会社が債務保証を行う。

これらの取引においても、取締役会(または株主総会)の承認が必要です。

競業避止義務

取締役は、利益相反取引と同様に競業についても制限されています。
取締役には競業避止義務があり、自社と同じ事業を営むことが制限されます。

具体的な事例としては以下のようなものがあります。

1. 同業他社での兼職
例:取締役Aが競合他社の取締役に就任する。

2. 競合する事業の個人経営
例:取締役Bが自社の事業と類似のサービスを提供する別会社を設立する。

これらの行為は、取締役としての信義則に反し、会社や株主の利益を害する可能性があるため、厳重に注意しなければなりません。競業避止義務違反は、企業秘密の漏洩や市場競争力の低下につながる可能性があり、会社に重大な損害をもたらす可能性があります。

競業避止義務違反を防ぐためには、以下のような対策が有効です。

1. 取締役就任時に競業避止義務について明確に説明し、同意を得る

2. 定期的に取締役の副業や関連事業の状況をチェックする

3. 新規事業や重要な取引先との関係構築については、取締役会で十分に議論し、承認を得る仕組みを整える

4. 競業避止に関する社内ポリシーを策定し、定期的に研修を行う

役員は常に会社の利益を最優先に考え、公正かつ透明性のある意思決定を心掛けることが重要です。また、不明確な状況では専門家の意見を仰ぐことも一つの方法です。

これらの事例を参考に、自社の状況を客観的に評価し、潜在的な利益相反リスクがないかを精査します。利益相反は、適切な管理を怠ると、企業の評判や業績に深刻な悪影響を及ぼすものであるという認識が重要です。

利益相反取引を回避する方法

利益相反取引の具体例を認識したうえで、適切に管理し回避するための方法を説明します。以下の方策を実践することで、会社の健全な運営と信頼性の維持につながります。

判断困難時の対処法:株主総会・取締役会の活用

利益相反取引の判断が難しい場合、株主総会や取締役会を活用して透明性を確保することが重要です。これによって、取引の妥当性や公正性について多角的な視点から検討できます。

具体的な対処法としては以下が挙げられます。

1. 事前の透明性確保
利益相反の可能性がある取引について、事前に詳細な情報を取締役会や株主総会に提供します。

2. 多角的な議論の促進
他の取締役や株主の意見を積極的に求め、様々な観点から取引の適切性を検討します。

3. 外部専門家の活用
特に複雑な案件や利害関係者が関与する場合は、弁護士や会計士などの外部専門家を招いて客観的な意見を求めることが有効です。

4. 決議プロセスの厳格化
利害関係のある取締役を議決から除外するなど、決議プロセスの公正性を担保します。

5. 事後の報告と監視
承認された取引についても、その後の経過を定期的に報告し、継続的な監視を行います。

これらの方法を通じて、利益相反取引に関する判断の透明性と公正性を高めることは、投資家や取引先からの信頼獲得につながり、長期的な企業価値の向上を実現します。

利益相反に該当しないケース:正しい理解と判断

利益相反に該当しないケースを正しく理解することも重要です。

利益相反に該当しない可能性が高いケースの一般的な特徴:

1. 取引条件の公平性:市場価格や一般的な取引条件に基づいている

2. 会社利益の優先:取引が明らかに会社に有利である

3. 取引規模の小ささ:会社の財務状況に影響を与えない程度の少額取引

4. 取引の定型性:一般的に行われている標準的な取引

しかし、これらの特徴を持つ取引であっても、個別の状況によっては利益相反に該当する可能性があります。そのため、以下のような対策を講じることが重要です。

1. 明確な判断基準の設定
会社として利益相反に関する具体的なガイドラインを策定し、全社に周知する。

2. 透明性の確保
取締役の関連取引について定期的な報告を求め、必要に応じて取締役会で議論する。

3. 外部専門家の活用
判断が難しいケースでは、弁護士や会計士などの外部専門家の意見を求める。

4. 継続的な教育と啓発
役員や従業員に対して、利益相反に関する研修を定期的に実施する。

重要な点は、常に会社の利益を最優先に考え、疑わしい場合は積極的に開示し、適切な承認を得ることです。
ここで紹介した方策を積極的に実践し、組織全体に浸透させることで、利益相反リスクを効果的に管理できます。
このことで、健全な企業統治が実現し、ステークホルダーからの信頼向上と持続的な企業価値の創造につながります。

健全な企業統治の要:利益相反管理の重要性

利益相反管理の本質は、役員が会社の利益を最優先に考え、公正かつ透明性のある意思決定を行うことにあります。

役員一人ひとりが利益相反に対する意識を高め、適切な対処を心がけることで、企業価値の向上と長期的な成功につながるのです。これは、個々の役員の責任であると同時に、組織全体で取り組むべき課題でもあります。

この記事を参考に、自社の利益相反管理体制を改めて見直し、必要に応じて改善を図ることをお勧めします。健全で持続可能な経営を実現するためには、利益相反に対する意識を高め、透明性のある取引を行うことが不可欠なのです。

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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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