みなし取締役会とは?登記手続きへの影響や活用方法について解説

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みなし取締役会とは?登記手続きへの影響や活用方法について解説

取締役会設置会社において取締役会は、代表取締役の選定や解職をはじめ、会社の経営上重要な事項について決定権限を有しています。多くの場合、取締役会は現実に取締役が全員出席する会議体によって行われるのが通常です。

しかし、新型コロナウイルスの影響や複数の会社の役員を兼任する社外役員の存在から、現在では常に全員が出席する取締役会を開催するのは困難な場合もあります。

そこで、今回はこのような場合に利用できる決議方法として、みなし取締役会について解説いたします。

みなし取締役会の概要

みなし取締役会とは

みなし取締役会とは会社法第370条の規定に基づき、取締役会の開催、決議を省略し、取締役会決議があったものとみなすことができる制度のことをいいます。書面決議やみなし決議とも呼ばれます。


みなし取締役会は、取締役会で決議する事項について提案され、取締役全員がその提案に同意した場合に取締役会決議があったものとみなすことできます。


通常、取締役会は招集手続(会社法第368条)を経て、決議に加わることのできる取締役会が出席して決議を行うことが想定されています。しかし、決議事項について全員の同意が明らかな場合でも、一堂に会することを義務付けるのは、不合理であり、迅速な意思決定にも支障をきたす結果になりかねません。


そこで、会社法では、みなし取締役会制度を設けているのです。


みなし取締役会の要件

みなし取締役会の要件は、次の3つです。


①取締役全員の同意があること

②定款に定めがあること

③監査役が異議を述べてないこと


①取締役全員の同意があること

「書面又は電磁的記録」によりなされることが必要です。電磁的記録というのは、PDFファイルなどで作成された電子ファイルのことを意味します。そのため、口頭での同意があるだけでは、この要件を満たさないという点に注意が必要です。


また、ここで同意が必要な取締役は、「議決に加わることができるもの」に限られます。


したがって、代表取締役を解職する場合に解職の対象となる代表取締役のように、決議に「特別の利害関係」(会社法第369条第2項)がある取締役は決議に参加できないため、同意を得る必要はありません。


②定款に定めがあること

みなし取締役会は定款においてみなし取締役会(書面決議)を行う事ができる旨を定めておく必要があります。定款の記載例としては次のような記載が考えられます。


「当会社は、取締役の全員が取締役会の決議事項について書面または電磁的記録により同意したときは、当該決議事項を可決する旨の取締役会決議があったものとみなす。ただし、監査役が異議を述べたときはこの限りでない。」


③監査役が異議を述べてないこと

みなし取締役会を行う際に、監査役設置会社である場合には、監査役がみなし取締役会による決議を行うことについて異議を述べていないことが必要となります。


誤解されやすい点として、監査役の同意を得る必要があるということではなく、あくまでも異議を述べていなければみなし取締役会による決議は可能です。


なお実務的には、監査役が異議を述べる期間について特に制限がないため、成立した取締役会決議の効力を覆されることを避けるため、あらかじめ監査役に異議がないことを書面で意見表明しておいてもらう例が多く見られます。


みなし取締役会の効果とWeb会議などとの違い

みなし取締役会が成立すると、その決議事項については有効に取締役会決議があったものとして取り扱われます。


また、報告事項を併せて取締役に通知しておけば、取締役会で行われる報告についても省略が可能となります(会社法第372条第1項)。


なお、詳細は後ほどご説明いたしますが、代表取締役等が取締役会に対して負う報告義務(会社法第363条第2項)については、この手続きでは省略できません(会社法第372条第2項)。全ての報告が省略できる訳ではないという点を押えておきましょう。


このようにみなし取締役会は各取締役が書面により同意を行うことで会議への出席、報告などを省略でき、各取締役の負担を軽減することができます。


現実の会議に参加することによらない方法での取締役会の運営としては、ZOOMやTEAMSなどを用いたWeb会議やテレビ会議などによる方法も考えられます。


しかし、これらの方法はあくまでも出席方法がWeb会議やテレビ会議を利用した方法であり、みなし取締役会のような定款の定めや取締役の同意は必要ありません。


みなし取締役会の活用方法と手続き

必要な手続き

みなし取締役会による場合、概ね以下の手続きを経て行われています。


①取締役による決議の目的の事項への提案

②監査役の異議に関する意見書の提出

③取締役全員の同意書の提出

④取締役会議事録の作成


上記①〜③についてはみなし取締役会を行う場合の特有の手続きとなるので注意が必要です。


①の具体的な方法としては、提案事項の他、同意書のひな型や提出方法、提出期限などを通知します。提案の方法については特に決まりはありませんので、メールやSNSのメッセンジャー機能などでも可能です。


取締役会議事録への記載については、実際に取締役会を開催していないため、以下の事項について記載する必要があります。


  • 取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
  • 提案をした取締役の氏名
  • 取締役会の決議があったものとみなされた日
  • 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名


また、各取締役が同意した日がバラバラの場合には取締役会の決議があったものとみなされた日がいつになるかという問題が生じますが、これについては、全員の同意があった時点で決議があったものとみなされることとなります。


したがって、最後に同意をした取締役の同意の日を決議があったものとみなされた日として記載することとなります。


みなし取締役会の活用方法

みなし取締役会は、取締役会に出席する必要が無く、書面や電磁的記録のみで決議が完結できることから日常的な業務や、社内のルールとして取締役会決議が必要な場合に手続きを簡略化するための方法として非常に有効です。


他方で、みなし取締役会は現実の出席を伴わないため、代表取締役の選定のように取締役会に出席し席上で就任を承諾したという議事録への記載をすることで添付書類を一部省略するという方法が取れない点には注意が必要です。


また、冒頭でも少し触れたように、代表取締役または取締役会決議により業務執行取締役として選定された取締役は3か月に1回取締役会へ報告義務を負いますが、この報告については取締役会の開催を省略することができません。


そのため、3か月に1回は実際の取締役会を開催する必要がある点についても注意が必要です(会社法第372条第2項、第363条第2項)。


そのため、みなし取締役会の活用方法としては、日常的な決議やそれほど議論の必要のない事項について決議を行う際に活用することが考えられます。


みなし取締役会の決議による場合の登記手続き

最後にみなし取締役会の決議によって、登記が必要となる事項について決議を行った場合の登記手続への影響について解説いたします。


代表取締役の選定をみなし取締役会決議により選定する場合を例に考えてみましょう。

代表取締役を現実に開催した取締役会において選定した場合、代表取締役の変更登記を行う際の添付書類は、以下のものとなります。


  • 変更登記申請書
  • 取締役会議事録
  • 就任承諾書(※省略可能な場合があります)
  • 印鑑証明書(※省略可能な場合があります)
  • 印鑑届書


※省略可能な場合は、以下の記事をご参照ください。


関連記事:株式会社の役員変更登記で使う印鑑の種類や使い分けとは?


これに対して、みなし取締役会によって代表取締役を選定した場合には、以下に注意が必要です。


①就任承諾書の省略ができない

②定款の添付が必要


まとめ

みなし取締役会によって決議を行った場合には登記手続きで必要な書類などが異なる点に注意が必要です。みなし取締役会を適切に活用し、機動的な会社経営に役立てましょう。


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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)

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