会社の特別清算とは?特別清算の流れと破産との違いについて解説

株式会社の基礎知識
投稿日:2024.08.23
会社の特別清算とは?特別清算の流れと破産との違いについて解説

債務超過で経営が行き詰った会社が廃業する際の手続きとして「破産」が知られていますが、株式会社にはもう1つ、「特別清算」という手続きがあることをご存知でしょうか。
いずれも弁済しきれない負債を抱える会社が清算し法人格を消滅させる手段ですが、その2つにはさまざまな違いがあり、特定の場面では特別清算が有効に機能する可能性があります。

そこで今回の記事では、特別清算の流れや破産との違いについて詳しく解説します。会社の清算に興味をお持ちの方は、ぜひ最後までお読みください。

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会社の廃業手続きは資産超過・債務超過により異なる

そもそも会社の清算とは、「解散した会社の資産や負債をすべて処分する手続き」です。法人格である会社は、組織が消滅する際に財産を残しておくことができません。このためすべての資産を処分して現金化し、残っている債務を弁済する必要があります。

しかし、自社の資産ですべての負債を解消できる会社ばかりとは限りません。
資産が債務を上回っているか否か、つまり資産超過か債務超過かによって、廃業に際して取るべき手続きが異なるのです。

資産超過の場合は通常清算

会社の資産が債務を上回っている状態、つまり資産超過であれば特に問題は生じません。この場合には通常清算という手続きを行います。
株式会社を例に挙げれば、廃業に至る最初のステップは「解散の決議」です。株主総会の特別決議(議決権を行使できる株主の過半数の出席、その3分の2以上の賛成)によって解散します。

清算は解散後に行うプロセスで、所有する不動産や在庫品などの売却、売掛金の回収などによって資産を現金化し、借入金や未払金などの債務を弁済するのです。
すべての債務を弁済してもなお資産が残る場合には、株主に分配して残余財産がゼロの状態にします。
これが資産超過の会社が行う解散から通常清算の流れです。

債務超過の場合は特別清算または破産

会社の解散に際しては、負債が資産を上回る状態、つまり債務超過のケースも少なくないでしょう。この場合は自社の資産ですべての債務を解消できず、「債権の一部を放棄してもらう」など、債権者の協力がなければ清算ができません。
このような場合に行う手続きが特別清算、もしくは破産です。

いずれも裁判所が関与して行われる手続きですが、特別清算は株主総会で選任した、もしくは定款で定めた清算人が財産の管理処分権限を持つのに対し、破産の場合の財産管理処分権は、裁判所が選任した破産管財人に帰属します。

また、特別清算は「債権者集会で可決を得た協定」もしくは「それぞれの債権者との和解」によって清算していきます。

一方の破産では破産管財人による換価処分、破産債権者への配当が行われます。

特別清算のメリット・デメリットとは?

破産と特別清算を比較すると、破産は「第三者主導の厳格な手続き」、特別清算は「清算会社主導で行う比較的柔軟な手続き」といえます。
その特徴に基づいたメリット・デメリットがありますから、それぞれを把握しておきましょう。

特別清算のメリット

特別清算は債務超過やその疑いがある会社の清算手法の1つではありながら、破産に比べると手続きに柔軟性があり、要する期間も比較的短いことがメリットです。
破産の場合は裁判所が選任した破産管財人が手続きをするのに対し、特別清算の場合は会社が選任した清算人(多くの場合は代表取締役など)が財産の管理処分を行います。もちろん法律上の知識が必要ですから、会社が選んだ弁護士などの専門家に依頼することも可能です。
また、特別清算で和解がスムーズに進んだ場合などは破産に比べ、短期間で手続きが終了するケースもあります。
このように、特別清算は「会社が主体となって行う清算手続き」であることから、破産に比べて周囲に与えるマイナスの印象が穏やかなこともメリットといえるでしょう。

特別清算のデメリット

さまざまなメリットがある反面、特別清算にもデメリットが存在します。
そもそも特別清算を行えるのは「すでに解散した株式会社」に限られるため、合同会社など他の法人格では採用できない仕組みです。つまり、この手続きを利用できる組織が限定されているというデメリットがあります。

また、特別清算は債権者の協力が得られてはじめて成立する手法であり、債権者集会に出席した債権者の過半数の同意、かつ総債権額の3分の2以上を有する債権者の同意を得た協定、または裁判所の許可を得た上で、債権者ごとに和解案を示して個別に同意を得ることが必要とされ、これらの同意が得られなければ結果的に破産手続きに移行せざるを得ません。

特別清算手続きの流れ

「債務超過に陥り、事業の継続が不可能」と判断した会社が、会社を解散して特別清算を行うには、会社法の規定によって手続きを進めなければなりません。

特別清算には様々な手続きが必要

会社が事業を終了するという意思決定をしても、法人格を消滅させるまでにはさまざまな手続きを要します。財産の処分、つまり清算もその1つです。
特別清算は「解散する会社が所有する資産では、すべての債務を弁済できない」というケースで用いられる清算手法のため、債権者の権利を害することになります。
このため特別清算では、裁判所の監督のもとに清算手続きを進めていく必要があるのです。以下に手続きの流れを紹介します。
参考:e-Gov法令検索・会社法 第2編第9章第2節「特別清算」

株主総会で会社の解散と清算人の選任決議

株式会社がすべての事業を廃止して法人格を消滅させる手続きの第一歩は、株主総会における解散決議です。
解散には、株主総会の議事の中でも特に重要な事項を決議する「特別決議」が必要です。
普通決議は定足数・表決数いずれも過半数ですが、特別決議では「3分の2以上」と定められています。つまり、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、その3分の2以上の賛成をもって決議する必要があるのです。


解散を決議した株主総会では、同時に清算人を選任します。通常清算の場合は代表取締役が選任されるのが一般的ですが、債権者との交渉や裁判所での手続きが必要な特別清算では、弁護士が選任されるケースも珍しくありません。

解散・清算人の登記

解散と清算人がいずれも決定したら、清算人は2週間以内に解散登記と清算人選任登記の申請をしなければなりません。営業活動を停止し清算手続きに入る会社であることを、第三者に知らしめる必要があるからです。

申請先は会社の本店所在地を管轄している法務局で、解散登記には30,000円、清算人選任登記には9,000円の登録免許税が掛かります。
解散登記義務違反には罰則規定も設けられており、2週間の期限を過ぎたときには100万円以下の過料が科される恐れがあります。
参考:e-Gov法令検索・会社法 第915条「変更の登記」、第976条「過料に処すべき行為」

解散時の財産目録、貸借対照表の作成と株主総会での承認

会社の清算に際しては、保有する資産と負っている債務を正確に把握しなければなりません。このため清算人が財産目録と貸借対照表を作成し、株主総会で承認を受ける必要があります。

財産目録には、現・預貯金、不動産や有価証券、在庫品、売掛金などのプラスの財産のほか、借入金や買掛金などのマイナスの財産もすべて記載します。
なお、財産目録と貸借対照表は、清算手続きがすべて完了するまで保存しなければなりません。
参考:e-Gov法令検索・会社法 第492条「財産目録等の作成等」

官報公告の申込み

清算人は、会社が解散することを債権者に対して周知し、債権の申し出を促さなければなりません。具体的には、2カ月以上の期間を定めて「その期間内に債権を申し出るべき旨」を、官報に公告する必要があるのです。
なお、官報公告には1行辺り3,589円の料金が掛かります。掲載日の3週間前には申し込む必要があることも知っておきましょう。
参考:e-Gov法令検索・会社法 第499条「債権者に対する公告等」

債権者への個別催告

官報公告以外にも、会社が認識している債権者に対しては個別に催告をしなければなりません。
参考:e-Gov法令検索・会社法 第499条「債権者に対する公告等」

特別清算の申立て

特別清算を行うには、会社の本店所在地を管轄する地方裁判所に対して特別清算開始の申立てをします。申立てができるのは、清算人のほか、債権者・監査役・株主です。
会社法第511条には、「清算会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人は、特別清算開始の申立てをしなければならない」と定められています。
申立てに際しては、所定の申立書に下記の書類を添付するほか、予納金の納付などが必要です。

1. 清算株式会社の登記事項証明書

2. 清算財産目録・清算貸借対照表

3. 清算貸借対照表等に関する株主総会の承認決議の議事録写し

4. 貸借対照表及び損益計算書(直近2期分)

5. 株主名簿(解散時)・債権者名簿・債務者名簿

6. 債権申出催告の官報公告写し

7. 債権者の申立同意書

8. 定款

9. その他関連書類

清算会社の状況や裁判所によって必要書類が異なり、これ以外の書類の添付を求められる可能性があります。
参考:e-Gov法令検索・会社法 第511条「特別清算開始の申立て」

特別清算開始の命令

申立てを受けた裁判所は、「債務超過の疑いがあるか」「清算の遂行に著しい支障があるか」など開始原因の有無を判断し、手続きの開始を決定します。
「予納金の納付がない」「特別清算によっても清算を終わらせる見込みがない」など特定の事由がある場合には、申立てが棄却されます。
仮に清算会社に資産がまったくない状態で、債権者に対して弁済できる見込みがない場合などには、特別清算を行うことはできません。
参考:e-Gov法令検索・会社法 第514条「特別清算開始の命令」

協定型と個別和解型

特別清算には、協定型と個別和解型の2種類があります。
債権者集会に対して協定の申出を行い協定案を作成します。協定の可決には債権者集会に出席した債権者の過半数の同意、かつ総債権額の3分の2以上を有する債権者の同意が必要となります(協定型)。
または、債権者ごとに個別に和解し、裁判所の許可を得ることになります(個別和解型)。

会社法が規定している特別清算は協定型によるもので、債権者に対する弁済率や弁済期日を定め、残る債務の免除などを盛り込んだ協定案を作成し、債権者の同意を得ます。
つまり債権者が平等になることが原則で、債権者集会で法に定められた割合の承諾が得られれば、全員の合意までは必要ありません。

一方の個別和解型は、債権者全員に共通する協定案ではなく、個別の債権者ごとに和解案を作成する方法です。
全債権者の同意が必要とされるため、債権者数が少なく協力が見込まれる場合に用いられる手法です。「グループ内の子会社を整理する」などが分かりやすい事例でしょう。

協定案の作成・提出

基本的な仕組みである協定型の特別清算では、一定の割合の弁済額を減免することや、当初契約上の弁済期日を変更することを承諾してもらわなければなりません。
参考:e-Gov法令検索・会社法 第563条「協定の申出」、第564条「協定の条項」、第565条「協定による権利の変更」

債権者集会による協定案の決議

清算会社が提出した協定案について、債権者集会で決議します。協定の可決には債権者集会に出席した債権者の過半数の同意、かつ総債権額の3分の2以上を有する債権者の同意が必要となります。
債権者の同意が得られず、協定の見込みがないときは、破産手続きに移行します。
参考:e-Gov法令検索・会社法 第567条「協定の可決の要件」

裁判所へ協定案認可の申立て

協定が可決されたときは、清算会社は裁判所に対して協定の認可の申立てをしなければなりません。
「特別清算の手続または協定が法律の規定に違反」「協定が遂行される見込みがない」「協定が不正の方法によって成立した」などの不認可事由に該当しない場合は、裁判所は認可を決定をします。
参考:e-Gov法令検索・会社法 第568条「協定の認可の申立て」

債権者への弁済

認可後は協定に従って債権者へ弁済します。清算会社が持つ資産の売却や債権の回収で現金化し、それを弁済に充当します。
弁済は清算人が主体となって行い、協定通りの弁済が完了すれば、特別清算の結了となります。

特別清算終結決定

清算が終了したときは、裁判所が特別清算終結の決定をし、職権によって特別清算終結登記を行います。
これによって特別清算の手続きが完了します。
参考:e-Gov法令検索・会社法 第573条「特別清算終結の決定」

特別清算には大口債権者の協力が不可欠

特別清算は、債権者の数が少なく、かつ大口債権者の協力が得られる場合に有効な手法といえます。清算会社が弁済に充てられる一定の資産が持っていることも重要な要素となるため、特別清算手続きが効果的に機能するケースは限定的ともいえるでしょう。

仮に多数の小口債権者が存在し「債権者の過半数」「債権額の3分の2」の同意が得られる確実性が低い状況であれば、途中で特別清算を断念して破産に移行することになり、結果的に二重の時間と労力を要する恐れも否めません。このような場面では、むしろ最初から破産を選択したほうが有効なケースも考えられるのです。
しかし一方で、条件に当てはまる場面では、スムーズに清算を完了できる可能性もあり得ます。

清算会社や債権者の状況を踏まえたうえで、特別清算か破産かを適切に選択することが大切です。

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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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