会社法では、会計監査の専門性を考慮した上で会計監査をより充実させるために、株式会社との契約で会計監査について委任を受ける会計監査人の制度を設けています。
会計監査人制度は社会的影響が大きいものです。また監査対応を行わなければならないので、会計監査人の存在は当該株式会社で働く役員・従業員にも大きな影響を与えます。
この記事では、会計監査人の概要、任期、選任・解任、報酬等について説明します。
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会計監査人とは
会計監査人とは、株式会社の委任を受けて会社法により株式会社の計算書類および付属明細書、連結計算書類、臨時計算書類の監査証明を行う権限を有する株式会社の役員等のことです。
会計監査人は公認会計士または監査法人でなければなりません。また、会社法上の大会社又は指名委員会等設置会社又は監査等委員会設置会社には会計監査人の設置が義務づけられています。
計算書類とは
貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表のことです。
連結計算書類とは
連結貸借対照表・連結損益計算書・連結株主資本等変動計算書・連結注記表のことです。
臨時計算書類とは
臨時に発行された貸借対照表・損益計算書のことです。
会社法上の大会社とは
最終事業年度にかかる貸借対照表上の資本金が5億円以上もしくは負債が200億円以上の会社です。
指名委員会等設置会社とは
指名委員会・監査委員会・報酬委員会(合わせて指名委員会等)を置く株式会社のことです。
監査等委員会設置会社とは
監査等委員会を置く株式会社のことです。
会計監査人は株主総会の決議によって選任されます。会計監査人の選任・解任・不信任に関する議案の内容については、以下の機関が決定します。
- 監査役(監査役が2人以上の場合は過半数)
- 監査役会設置会社の場合は監査役会
- 監査等委員会設置会社では監査等委員会
- 指名委員会等設置会社では監査委員会
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会計監査人の任期
会計監査人の任期は1年です。株主総会で別段の決議がされない限り、原則として再任されます。ただし会計監査人設置会社が会計監査人をおく旨の定款の定めを廃止した場合は、会計監査人の任期はこの定款変更の効力が発生した時に満了します。
会計監査人の欠格事由(選任基準)
会計監査人には欠格事由があります。
a)公認会計士法の規定により、当該株式会社の計算書類の監査ができない者
b)当該株式会社の子会社もしくはその取締役・会計参与・監査役・執行役から公認会計士又は監査法人業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者またはその配偶者
c)監査法人でその社員の半数以上がb)に掲げる者であるもの
以上のa)〜c)は会計監査人になれません。
会計監査人の解任
会計監査人はいつでも理由によらず株主総会の決議で解任できます。会計監査人の選任・解任を通じて会計監査人に対する株主のコントロールを強化するためです。解任に関する議案については会計監査人の独立性を守るため、先述したように監査役等が決定します。
正当な事由なく解任された会計監査人は、会社に対して解任によって生じた損害を賠償請求できます。
また以下に記載した全員の同意があれば、監査役等は一定の事由に該当する会計監査人を解任できます。より適切な会計監査人による、より適切な会計監査を監査役の側から実現することを可能にするためです。
- 監査役(監査役が2人以上の場合は全員の同意)
- 監査役会設置会社の場合は監査役会全員の同意
- 監査等委員会設置会社では監査等委員全員の同意
- 指名委員会等設置会社では監査委員全員の同意
監査役等が会計監査人を解任できる一定の事由は以下のとおりです。
- 職務上の義務に違反し、または職務を怠った場合
- 会計監査人としてふさわしくない非行があった場合
- 心身の故障により、職務の執行に支障があり、またはこれに堪えられない場合
会計監査人は株主総会において解任・不再任・辞任(選任も)について、意見を述べることができます。
また会計監査人を辞任した者や監査役等により解任された会計監査人は、解任または辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨とその理由又は解任についての意見を述べることができます。
これは会計監査人の独立性を確保するためです。
会計監査人の権利義務
会計監査人には、会計監査に関する権限が与えられています。
- 会計監査人は、いつでも、会計帳簿およびこれに関する資料を閲覧・謄写し、または監査対象会社の取締役(指名委員会等設置会社では執行役・取締役)及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求めることができます。
- 必要な場合には、会計監査人は子会社に対して会計に関する報告を求め、子会社の業務および財産の状況を調査することができます。(当該子会社は正当な理由がある場合は、当該報告又は調査を拒むことができます。)
一方、会計監査人は会計監査において、取締役・執行役の職務執行に関して不正行為または法令・定款に違反する重大な事実を発見した場合には、以下の機関に報告する義務を負っています。
- 監査役会設置会社では監査役会
- 監査等委員会設置会社では監査等委員会
- 指名委員会等設置会社では監査委員会
- 上記以外では監査役
会計監査人の報酬(監査報酬・監査費用)
会計監査人の報酬は取締役会等が決定します。会計監査人の報酬について、取締役は以下の機関からの同意を得なければなりません。会計監査人の独立性を報酬面から確保するためです。
- 監査役(監査役が2人以上の場合は過半数)
- 監査役会設置会社の場合は監査役会
- 監査等委員会設置会社では監査等委員会
- 指名委員会等設置会社では監査委員会
ちなみに会計監査人側は、一般的には、監査工数×一日当たりの単価で適正な監査報酬の金額を見積もると言われています。監査工数とは、会社を1年間監査し、監査意見を表明するまでに必要な日数×人員数のことです。
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