取締役会設置会社においては、原則として監査役が置かれます。監査役は、取締役会において、どのような役割があり、どのような義務を負っているのでしょうか。
監査役としての機能を果たすためには、監査役の役割・義務について正確に理解しておくことが必要です。
今回の記事では、監査役の基本的事項に触れたうえで、監査役の取締役会における役割と義務について解説します。
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監査役とは?
監査役とは、株式会社において、取締役の職務執行状況を監督・監査する役職のことをいいます。
取締役に不正がないかを調査し、不正が発覚した際には是正します。
不正とは、たとえば粉飾決算・脱税や労働基準法違反などです。
監査の内容は、「会計監査」と「業務監査」の2つに分けられます。
「会計監査」と「業務監査」とは?
業務監査とは
業務監査とは、企業の業務活動全般および組織・制度を対象とした監査です。経営目標の達成に向けて合理的に業務が行われているか、法令や各種規定に沿って業務が遂行されているかなどを評価・報告することが目的です。
会計監査とは
会計監査とは、企業の財務諸表が適正に作成されているかどうかを評価する監査です。財務諸表が法令や会計基準に準拠しているかどうか、また、重要な誤りや不正がないかどうかなどを検証します。
監査役の地位
取締役会設置会社では、公開会社でない会計参与設置会社でない限り、監査役の設置義務があります。(会社法327条2項)。
株式会社と監査役とは委任の関係にあり(会社法330条)、監査役は、会社に対して善管注意義務などの義務を負います(民法644条)。
そして、監査役に任務懈怠が認められる場合には、会社に対して、損害を賠償する責任を負います(会社法423条1項)。
(株式会社と役員等との関係)
第三百三十条 株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。
(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
第四百二十三条 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用:e-Gov法令検索
監査役の職務権限と義務
監査役は、株式会社において、取締役が不正を行わないよう取締役の職務執行や計算書類の監査を行う業務監査・会計監査の役割を担う機関です。
そして、会社法では、監査役がその役割を果たすための職務権限・義務を規定しています。
会社法において、監査役の職務上の権限として規定されているものは、次のとおりです。
- 取締役の職務の適法性監査権限(会社法381条1項前段)
- 取締役等への事業報告の請求権限(会社法381条2項前段)
- 会社、子会社の業務、財産状況の調査権限(会社法381条2項後段、3項)
- 取締役の行為の差止め請求権限(会社法385条1項)
- 取締役との間の訴えにおける訴訟代表権限(会社法386条)
- 取締役会の招集権限(会社法383条3項)
そして、監査役が負う義務については、次のとおり規定されています。
- 監査報告の作成義務(会社法381条1項後段)
- 取締役会への出席義務・意見陳述義務(会社法383条1項)
- 取締役会への取締役の不正行為等の報告義務(会社法382条)
- 株主総会への取締役の不正行為等の報告義務(会社法384条)
取締役会への出席義務
監査役設置会社では、監査役に対しても、取締役会の招集通知が発せられます(会社法368条1項)。そして、招集通知を省略する場合には、取締役だけでなく監査役の同意も必要です(会社法368条2項)。
そのため、監査役設置会社では、監査役は、取締役会への出席義務を負います(会社法383条1項)。
(取締役会への出席義務等)
第三百八十三条 監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。ただし、監査役が二人以上ある場合において、第三百七十三条第一項の規定による特別取締役による議決の定めがあるときは、監査役の互選によって、監査役の中から特に同条第二項の取締役会に出席する監査役を定めることができる。
引用:e-Gov法令検索
ただし、監査役が取締役会を欠席したとしても、出席義務の違反に対する罰則などはなく、任務懈怠を理由とする損害賠償請求を受ける可能性があるということにとどまります。
また、監査役は取締役会の構成員ではありませんので、欠席しても決議の効力には何ら影響を与えません。ただし、監査役への招集手続を欠いて取締役会を開催した場合には、取締役会が無効と判断される可能性もあります。
取締役会の招集
監査役は、取締役会を開催する必要があると考える場合には、取締役に対して、取締役会の招集を求めることができます(会社法383条2項)。
そして、取締役が、監査役による請求のあった日から5日以内に、請求のあった日から2週間以内の日を開催日とする取締役会の招集通知を行わない場合には、監査役自らが取締役会を招集することができます(会社法383条3項)。
これは、監査役が、取締役の業務監査・会計監査という役割を果たすため、監査役自身にも取締役会の招集権限を認めたものです。
(取締役会への出席義務等)
第三百八十三条
2 監査役は、前条に規定する場合において、必要があると認めるときは、取締役(第三百六十六条第一項ただし書に規定する場合にあっては、招集権者)に対し、取締役会の招集を請求することができる。
3 前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監査役は、取締役会を招集することができる。
引用:e-Gov法令検索
取締役会の会議における役割・義務
取締役会に出席した監査役は、必要がある場合には、意見を述べなければなりません(会社法383条1項)。
さらに、取締役が不正行為を行うなどしたときには、その内容を取締役会に報告する義務を負っています(会社法382条)。
そして、取締役会の内容についても、当然に業務監査の対象となるため、会議の内容を記録した取締役会議事録の監査も行うことになります。
なお、監査役の取締役会への報告事項については、取締役全員に対して事前の通知を行っていれば、取締役会での報告を省略することが可能です(会社法372条1項)。
(取締役への報告義務)
第三百八十二条 監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に報告しなければならない。
(取締役会への報告の省略)
第三百七十二条 取締役、会計参与、監査役又は会計監査人が取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を取締役会へ報告することを要しない。
引用:e-Gov法令検索
まとめ
監査役の取締役会における役割・義務について解説しました。
監査役の取締役会における役割・義務を理解するためには、前提として、監査役の機関としての役割とその役割を果たすための職務上の権限、義務を理解する必要があります。
この機会に、監査役の役割について、整理して理解しておくようにしましょう。
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