株式会社では、株式を所有することと、役員として会社を経営することは別個の問題とされています。そのため、株式を所有する役員が役員を辞任したとしても、株式は引き続き所有し続けるのが原則です。
しかし、役員が会社とのトラブルが原因で辞任したような場合には、役員が引き続き株式を所有し続けることは会社にとって不都合と言えます。
そこで、この記事では、辞任した役員から株式を回収するための方法について具体的に解説していきます。役員から確実に株式を回収するためには、トラブルになる前の事前の準備も重要です。自分の会社ではトラブルも起こってないし関係ないという方も、事前の防衛策としてぜひ参考にしてみてください。
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辞任した役員から株式を回収する方法の全体像
辞任した役員から株式を回収する方法としては、大きく分けてトラブルになる前からの事前の準備による回収方法と、回収が必要となってから手続を進める回収方法の2パターンがあります。
当然のことながら、手続としては、事前の準備による回収方法の方が簡単なものとなりますので、いざトラブルが起こってからではなく、事前に準備を進めておくことが重要です。
個別の方法について、列挙すると次のようになります。
事前の対策
事後の回収方法
- 株式買取交渉を行う
- スクイーズアウトを行う
- 全部取得条項付種類株式を発行する
- 株式併合を行う
- 特別支配株主の株式等売渡請求を行う
以下では、それぞれの方法について、具体的な手続を解説していきます。
株式を回収するための事前の対策
役員が辞任した場合に株式を回収するための事前の対策としては、役員に対して株式を付与する際に、株主間契約を締結しておく方法と、取得条項付株式を活用する方法があります。
以下、それぞれについて具体的に解説します。
株主間契約を締結する
自身が創業者で、他の役員にも株式を取得させる場合、当該役員との間で、役員退任時には株式を自身もしくは自身が指定する者へ売り渡す旨の株主間契約を締結しておけば、当該役員から株式を買い取ることで株式の回収ができます。
株主間契約の内容は自由に決めることができるため、この方法が確実かつ簡単に株式を回収する方法です。
しかし、契約であるために、相手が契約に応じない場合にはこの方法を採ることはできませんし、いざ事態が起こった場合には買取資金を用意しなければならないという問題点もあります。
取得条項付株式を活用する
次に、取得条項付株式を活用するという方法もあります。取得条項付株式とは、種類株式の一種で、一定の事由が生じたことを条件に、会社が当該株式を強制的に取得することができるという内容のものです(会社法第108条第1項第6号)。
(異なる種類の株式)
第百八条 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、指名委員会等設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
六 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
引用:e-Gov法令検索
役員が所持する株式を取得条項付株式にして、条件として役員を退任したことを設定しておけば、当該役員が退任した際には、株式を強制的に回収することができます。
ただし、会社が株式を有償で回収する場合には、自己株式取得における財源規制の影響を受けるため、この点をクリアできるかについて注意が必要です(会社法第170条第5項)。
(効力の発生等)
第百七十条
五 前各項の規定は、取得条項付株式を取得するのと引換えに第百七条第二項第三号ニからトまでに規定する財産を交付する場合において、これらの財産の帳簿価額が同号イの事由が生じた日における第四百六十一条第二項の分配可能額を超えているときは、適用しない。
引用:e-Gov法令検索
事後に株式を回収するための方法
それでは、株式の回収について事前の対策をしておらず、いざ役員が辞任してから株式を回収するためには、どのような方法があるのでしょうか。
この場合でも、相手が任意の交渉に応じて株式を買取ることができるのであれば問題はありません。
一方で、株式の回収について相手が拒絶している場合には、スクイーズアウトによるのでなければ株式を回収することはできません。
スクイーズアウトとは、少数株主を排除するための手続のことを言います。つまり、スクイーズアウトを行うためには、相手が少数株主であることが必要で、具体的には、スクイーズアウトを実行する側が少なくとも議決権の3分の2以上の株式を所持している必要があります。
以下、それぞれの方法について、具体的に解説します。
株式の買取交渉を行う
まず、退任した役員が任意の交渉に応じてくれる場合には、株式買取交渉を行って、株式を回収することができます。
この場合で、経営者などの既存株主が買い手となる場合には問題ありませんが、会社が買い手となる場合には、事前の対策の際に触れたのと同じく、自己株式の取得における財源規制の影響を受けるため注意が必要です。
全部取得条項付種類株式を発行する
スクイーズアウトの方法の1つとして、全部取得条項付種類株式を発行する方法があります。
全部取得条項付種類株式とは、特定の種類の株式について、株主総会の特別決議でその全てを取得できるという内容のものです(会社法第108条第1項第7号)。
全部取得条項付種類株式を活用してスクイーズアウトを行う具体的な流れとしては、発行済の全株式を全部取得条項付種類株式に変更したうえで、少数株主には株式が渡らないように分配比率を調整して、普通株式を対価として全部取得条項付種類株式を買い上げるというものです。
この方法は、株式の議決権のうち3分の2以上を確保していれば活用することができますが、種類株式発行のための定款変更や、特別決議が必要とされていることで複雑な手続が要求されることになります。
(異なる種類の株式)
第百八条 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、指名委員会等設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
七 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。
引用:e-Gov法令検索
株式併合を行う
スクイーズアウトの方法として、多く利用されているのが株式併合です。株式併合とは、その名のとおり、複数の株式を一株にまとめる手続を言います。
例えば、1万株を1株にまとめる場合、1万株以下の株式は端株となり、端株を所持する少数株主は株主としての権利行使をすることができなくなります。
株式併合は、所定の手続を経たうえで株主総会の特別決議で可決されることで効力が生じることになるため、株式の議決権のうち3分の2以上を確保していれば、株式併合によるスクイーズアウトを行うことが可能です(会社法第309条第2項第4号、同法第180条第2項)
(株式の併合)
第百八十条 株式会社は、株式の併合をすることができる。
2 株式会社は、株式の併合をしようとするときは、その都度、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 併合の割合
二 株式の併合がその効力を生ずる日(以下この款において「効力発生日」という。)
三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類
四 効力発生日における発行可能株式総数
3 前項第四号の発行可能株式総数は、効力発生日における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。
4 取締役は、第二項の株主総会において、株式の併合をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
引用:e-Gov法令検索
特別支配株主の株式等売渡請求を行う
スクイーズアウトを行う側が、株式の議決権のうち90%以上を確保している場合には、特別支配株主の株式等売渡請求を行うことができます(会社法第179条第1項)。
特別支配株主の株式等売渡請求は、議決権の90%以上を確保しなければならないという高いハードルがありますが、取締役会の承認のみで実行することができるため、他の方法に比べて簡単に株式の回収を行うことが可能です。
議決権の90%以上を確保している場合には、特別支配株主の株式等売渡請求の方法でスクイーズアウトを行えば良いでしょう。
まとめ
辞任した役員から株式を回収する方法について解説しました。
株式の回収は、役員が辞任してからも可能ですが、事前に準備できるに越したことはありません。この記事を参考に、いざ自身の会社で株式を回収しなくてはならなくなった場合にはどの方法を採ることができるのか検討してみてください。
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