新型コロナの影響から昨今の株主総会では、総会会場への来場抑制を呼びかける会社が増えています。
しかし、株主総会は会社法上、株式会社の重要な意思決定機関であるとともに、株主と会社との対話の場所であるという側面もあります。
そのため、来場が困難なのであれば、株式会社はそれに代替する方法を提供すべきではないのかといった疑問が生じます。
こうした観点から、昨今注目されているのがバーチャル株主総会です。本記事ではバーチャル株主総会について必要な手続きや注意点などについて解説します。
新型コロナの影響から昨今の株主総会では、総会会場への来場抑制を呼びかける会社が増えています。
しかし、株主総会は会社法上、株式会社の重要な意思決定機関であるとともに、株主と会社との対話の場所であるという側面もあります。
そのため、来場が困難なのであれば、株式会社はそれに代替する方法を提供すべきではないのかといった疑問が生じます。
こうした観点から、昨今注目されているのがバーチャル株主総会です。本記事ではバーチャル株主総会について必要な手続きや注意点などについて解説します。
会社法では株主総会を開催する場合、日時・場所を定めて招集を行うこととなっており、ここでいう「場所」とは、一般的に物理的に存在する場所のことをいうと考えられています(会社法第298条第1項第1号)。
これに対し、バーチャル株主総会とは、株主等がインターネット等の手段を用いて出席等ができる株主総会のことをいいます。
つまり、インターネットによるライブ配信を通じて株主総会へ出席・質問や議決権の行使ができるなど、会場に行くことなく総会に参加や出席ができる総会を総称してバーチャル株主総会と呼んでいます。
バーチャル株主総会は、物理的な場所での株主総会(以下「リアル株主総会」といいます。)の開催の有無や、インターネット上での議決権行使や質問などを認めるのかといった観点から、通常は以下の3つに分類されます。
・ハイブリッド型バーチャル株主総会(参加型)
リアル株主総会を開催した上で、株主はインターネットを通じて株主総会へ参加できるタイプのバーチャル株主総会のことをいいます。
ここでいう参加というのは、あくまでも来場して株主総会の模様を見ることができるという意味にとどまり、いわゆる会社法上の株主総会への「出席」(会社法第309条参照)には当たらない点には注意が必要です。
・ハイブリッド型バーチャル株主総会(出席型)
リアル株主総会を開催した上で、株主はインターネットを通じて株主総会に出席し、質問や議決権行使が可能なタイプのバーチャル株主総会のことをいいます。
・バーチャルオンリー株主総会
2021年6月16日に施行された「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律」によりバーチャルオンリー型の開催が一部の会社は可能となりました。
バーチャルオンリー型は、場所の定めのない株主総会であり、インターネット上で行われる形態で、これまでは会社法上開催できないと考えられていました。
バーチャルオンリー株主総会は、次の4つの要件を満たす場合にのみ開催をすることができます。
①上場会社であること
②経済産業大臣および法務大臣の確認を受けること
③定款で場所の定めのない株主総会を開催できる旨の定めがあること
④株主総会招集時に経済産業省令・法務省令の要件を満たすこと
以上の要件を満たす場合にバーチャルオンリー株主総会は開催が可能となります(産業競争力強化法第66条第1項、第2項)。
なお、③の要件については、同法の経過措置により令和3年6月16日から2年間は②を満たせば、③の定款の定めはあるものとみなされることになっています。
そのため、経過措置期間中は①、②、④を満たす事の出来る会社がバーチャルオンリー総会を開催することができます。
では、バーチャルオンリー株主総会はどのような手続きを踏んで開催する必要があるのでしょうか。
通常のリアル株主総会を開催する場合と異なり、バーチャルオンリー総会を開催するためには、経済産業大臣と法務大臣の確認を受ける必要があります。
この確認は、前述の要件④の経済産業省令・法務省令の要件を満たしているかという点が主な確認内容となります。
この省令の要件は、以下の4つがその内容です。
これらを満たしていることについて、経済産業大臣・法務大臣の確認を得る必要があります。確認を得るための具体的な手続きについては以下の流れとなっています。
1)事前相談
2)正式申請
3)経済産業省・法務省での審査
4)確認書の交付
以上の流れを経て、確認書の交付を受けることができれば前述の②の要件を満たすこととなります。
なお、申請前に開催を考えている会社は経済産業省での事前相談の利用が推奨されています。
申請に必要な書式なども相談の際に用意することが想定されているため、まずは経済産業省への相談を行いましょう。
バーチャルオンリー総会を開催する場合の招集手続では、通常の株主総会招集手続(会社法第298条)にあたっては、以下の事項を決定する必要があります。
また、招集通知へ先ほどの決定事項について記載する事に加えて、以下の記載が必要となります。
バーチャルオンリー総会を開催するにあたって最も注意すべき点は、通信障害などが起きたタイミングや時間によって株主総会自体の効力が否定されてしまう可能性がある点です。
そのため、株主総会が始まったらすぐに通信障害が起こった場合に備えて、延期・続行に関する決議(会社法第317条)を経ておくといった対応を行い、リスクヘッジをしておくことが望ましいといえるでしょう。
バーチャル株主総会のメリットとしては、株主が出席する必要がないため遠隔地でも株主総会へ出席または参加ができるという点が挙げられます。
特にバーチャルオンリー総会では、会場が不要となるため会場を準備するための費用や人件費などを削減できるほか、取締役なども来場する必要がないため、会社の負担を軽減する事ができる点も挙げられます。
バーチャル株主総会のデメリットは通信や配信のための設備や業者への委託などが必要となるため、多くの会社ではリアル株主総会の開催よりも費用がかかる点が挙げられます。
また、経過措置の終了後はバーチャルオンリー総会を可能とするための定款変更が必要ですが、議決権行使助言機関がこうした定款変更議案に反対推奨を行う例もある点にも留意が必要です。
なお、議決権行使助言機関とは機関投資家などに向けて会社が株主総会に上程した議案の賛否を助言する機関のことをいいます。
インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)やグラスルイスなどが有名であり、こうした議決権行使助言機関の賛否は機関投資家の賛否に強い影響があるため、株主総会の事務局としては議決権行使助言機関の動向には注意が必要です。
バーチャル株主総会は現段階では実施数は少ないものの、新型コロナの影響により実施数は増加していくことが予想されます。
登記との関係では、適法に株主総会を成立させることを前提に、株主総会議事録への記載が特に重要となります。
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