取締役会設置会社において、取締役会は会社の経営における重要な意思決定機関として、決議すべき事項が会社法において定められています。
しかし、実務的には取締役を招集し取締役会を開催することは事務的な負担や時間的な制約が加わることも多く、スピードやタイミングが重要となる会社経営においては、時として足かせとなってしまう事もあります。
そこで、会社法では一定の事項について、3名以上の特別取締役による決議によって決定する事ができる旨を定めています。
本記事では、こうした特別取締役の権限や要件、選任の手続きについて解説します。
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特別取締役とは?
取締役設置会社では、「重要な財産の処分及び譲受け」や「多額の借財」を行う事を決定するにあたっては、取締役にその決定を委任できない旨が定められています(会社法(以下「法」)第362条第4項第1号、第2号)。
例えば会社の資金調達のために会社の多額の金額の借り入れを銀行から行うことを決定する場合には、取締役会設置会社では原則として取締役会決議により決定する必要があります。
しかし、取締役会は株主総会のような厳格な招集手続きに関する規制はないものの、決議を有効に行うためには、決議に参加できる取締役の過半数は最低でも招集する必要があるため、各取締役の日程調整などが必要となります(法第369条第1項)。
そのため、取締役の人数の多い会社の場合には、取締役会を開催するための日程調整等に時間がかかってしまい、必要なタイミングで資金調達や財産の処分などについて決議を行う事ができないという事態が生じてしまうケースがあります。
こうした事態に対処するために、会社法上取締役会での決議事項とされているもののうち、「重要な財産の処分及び譲受け」や「多額の借財」については、あらかじめ選定された3名以上の特別取締役の決議によって決定できる旨を定めることが認められているのです(法第372条第1項)。
特別取締役を選定するための要件
特別取締役はどのような会社でも選定できるというものではありません。以下の要件を満たす会社が特別取締役を選定することができます。
① 取締役会設置会社であること
② 取締役が6名以上であること
③ 社外取締役が1名以上いること
④ 指名委員会等設置会社でないこと
以上の要件を満たす会社においては特別取締役を選定することができます(法第373条第1項第1号、第2号)。
特別取締役を選定するための手続き
特別取締役による議決の定めの設定や特別取締役の選定は、取締役会の決議によって行われます。
①取締役会の決議
取締役会決議によって、特別取締役による議決の定めの設定や特別取締役の選定をする場合、取締役会の招集手続きを行う必要があります。取締役会の招集手続きについては、以下の手続きにて進みます。
- 取締役会の日の1週間前までに各取締役へ通知(法第368条第1項)
- 取締役会での決議
- 取締役会議事録の作成
株主総会と異なり、取締役会の招集手続では厳格な手続規制はありません。そのため、招集通知の作成や内容について会社法で特段の定めはありません。
また、決議についても、実際に取締役会を開催しないで書面上で決議を行う、みなし取締役会と呼ばれる書面決議(法第370条)も認められていますが、特別取締役制度を導入後の特別取締役による取締役会の決議については書面決議を行うことはできないため注意が必要です。
関連記事:みなし取締役会とは?登記手続きへの影響や活用方法について解説
特別取締役による議決の定めは、通常取締役会で決議されますが、定款の定めに基づき株主総会での決議、定款への規定により定めることも可能とされています。
②株主総会決議による場合
株主総会決議によって定める場合には、普通決議によることになります(法第309条第1項)。そのため、取締役会設置会社の場合には以下の手続きが必要となります。
- 取締役会による株主総会の日時・場所などの決定(法第298条第1項各号)
- 株主総会の日の2週間前(非公開会社の場合は1週間前)までに書面による招集通知の発送(法第299条第1項)
- 株主総会決議
- 株主総会議事録の作成
以上の手続きを踏む必要があります。
株主総会決議による場合には招集手続きについて厳格に定められており、手続きに瑕疵がある場合、株主総会決議自体が効力を否定される可能性もあるため十分に注意して進めるようにしましょう。また、株主総会決議により定める場合には、定款において特別取締役の設置について、株主総会の権限であることを規定しておく必要があります。
③定款によって定める場合
定款によって定める場合には定款変更の手続きが必要となります。定款変更は株主総会の特別決議によって行われます(法第466条、第309条第2項第11号)。
そのため、前述の株主総会決議で決定する場合の手続きを踏む必要があるほか、決議においては議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上が賛成することによって決議をする必要があります。より厳格な手続きが必要とされる点に注意が必要です。
取締役会の権限と特別取締役の関係
会社法では取締役は会社の業務執行機関として、様々な経営に関する事項の決定権限を有しています(法第348条第1項)。しかし、取締役会設置会社においては以下の事項については各取締役へ委任することが認められない結果、取締役会での決議事項とされています(法第362条第4項各号)。
- 重要な財産の処分及び譲り受け
- 多額の借財
- 支配人その他重要な使用人の選任及び解任
- 支店その他重要な組織の設置、変更及び改廃
- 社債の募集
- 内部統制システムの構築
- 定款の定めに基づく取締役の責任の一部免除
以上については原則として取締役会決議を行う必要があります。
特別取締役はこのうち①と②について予め選定された3名以上の特別取締役の決議により決定する制度です。それ以外の事項については特別取締役を設置しても特別取締役のみでは決議することはできませんので注意が必要です。
特別取締役を設置するメリット
特別取締役を設置するメリットは、取締役会の招集手続きを省略することができるため、スムーズかつスピーディーな会社経営が可能となるという点です。
特に多額の借財のように会社の資金調達を急遽必要とする場面では、意思決定にスピードが求められる場面である事が少なくありません。こうした場面で取締役会を招集したり、各取締役のスケジュール調整が不要な特別取締役による決議は非常に重要な意味を持つといえるでしょう。
特別取締役と登記申請
特別取締役に関する事項は会社の登記事項です(法第911条第3項第21号)。そのため、特別取締役に関する定めをした場合や、特別取締役を変更する場合にはいずれも登記が必要となります。
登記手続きについては変更を生じた日から2週間以内に手続きが必要となるため、前述した手続きを完了したらすぐに登記の準備を進める必要があります。
特別取締役によるスムーズな会社決定をいち早く実現するためにも本記事を参考に、スムーズに手続きを進めましょう。
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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