株主資本とは、純資産のうち、株主に帰属する部分のことです。株主資本は資本金・資本剰余金・利益剰余金・自己株式に分類されます。この記事では、株主資本の変動について、様々なパターンを解説します。
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株主資本等とは
1.1株主資本
株主資本は以下に分類されます。
・資本金
・資本剰余金
・利益剰余金
・自己株式
1.2資本剰余金
資本剰余金は以下に分類されます。
・資本準備金
・その他資本剰余金
1.3利益剰余金
利益剰余金は以下に分類されます。
・利益準備金
・その他利益剰余金
その他利益剰余金は更に任意積立金と繰越利益剰余金に分類されます。
1.4計算書類
株式会社は各事業年度に、以下の計算書類を作成しなければなりません。
・貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算書
・個別注記表
株主資本等はこのうち貸借対照表及び株主資本等変動計算書に記載され、個別注記表には株主資本等変動計算書に関する注記などがなされます。
計算書類において株主資本等とは、株主資本以外に新株予約権と評価換算差額等のことです。計算書類における評価換算差額等とは、具体的には、その他有価証券評価差額金や繰延ヘッジ損益などのことです。
1.5連結計算書類
また有価証券報告書提出会社である大会社は各事業年度に、以下の連結計算書類を作成しなければなりません。
・連結貸借対照表
・連結損益計算書
・連結株主資本等変動計算書
・連結注記表
株主資本等はこのうち連結貸借対照表及び連結株主資本等変動計算書に記載され、連結注記表には連結株主資本等変動計算書に関する注記などがなされます。
連結計算書類において株主資本等とは、株主資本以外は新株予約権と評価換算差額等と非支配株主持分のことです。連結計算書類における評価換算差額等とは、その他有価証券評価差額金や繰延ヘッジ損益や為替換算調整勘定などのことです。
株主資本の変動
この章では株主資本の変動のうち、下記の6パターンについて説明します。
1.資本金→準備金
2.資本金→剰余金
3.準備金→資本金
4.準備金→剰余金
5.剰余金→資本金
6.剰余金→準備金
準備金とは資本準備金と利益準備金のことを、剰余金とは資本剰余金と利益剰余金のことを指します。
2.1資本金→準備金
資本金の額を減少し準備金とするには、原則として、株主総会の特別決議が必要です(会社法第447条、第309条第2項第9号)。
例外的に、株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合で、資本金の額の減少の後の資本金の額が以前の資本金の額を下回らないときは、取締役会設置会社の場合は取締役会(非取締役会設置会社の場合は取締役の決定)で決議することができます。
債権者異議手続き
次節「2.2資本金→剰余金」をご覧ください。
2.2資本金→剰余金
資本金の額を減少し剰余金とするには、原則として、株主総会の特別決議が必要です(会社法第447条、第309条第2項第9号)。
例外1
定時株主総会において資本金の額の減少を決議し、資本金を減少する額が欠損の額を超えない場合、株主総会の普通決議でも手続きすることができます(会社法第309条第2項第9号イ及びロ)。
例外2
株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合で、資本金の額の減少の後の資本金の額が以前の資本金の額を下回らないときは取締役会設置会社の場合は取締役会(非取締役会設置会社の場合は取締役の決定)で決議することができます。
債権者異議手続き
資本金の額を減少し準備金又は剰余金とする場合は、債権者異議手続きが必要です(会社法第449条)。株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができます。
そして、原則として、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には個別にこれを催告しなければなりません。
・資本金の額の減少の内容
・貸借対照表の要旨や決算公告の実施状況
・債権者が一定の期間(1か月以上)内に異議を述べることができる旨
債権者が定められた期間内に異議を述べなかったときには、当該債権者は、当該資本金の額の減少について承認をしたものとみなします。
債権者が定められた期間内に異議を述べたときは、原則として、株式会社は、当該債権者に対し、弁済・相当の担保の提供・相当の財産の信託のうちのどれかを行なわなければなりません。
ただし、例外として、既に担保を提供しているなどにより、当該資本金の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないときは除きます。
資本金の額の減少の効力発生時期は、株主総会の決議等で定められた効力発生日となることが原則ですが、その日までに債権者保護手続が終了していない場合は効力が発生しません。債権者保護手続が終了していないときは、当初の効力発生日の前日までであれば、効力発生日を変更することができます。
2.3準備金→資本金
準備金の額を減少し資本金とするには、原則として、株主総会の普通決議が必要です(会社法第448条、第309条第1項)。
例外的に、株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合で、準備金の額の減少の後の準備金の額が以前の準備金の額を下回らないときは取締役会設置会社の場合は取締役会(非取締役会設置会社の場合は取締役の決定)で決議することができます。
債権者異議手続き
次節「2.4準備金→剰余金」をご覧ください。
2.4準備金→剰余金
準備金の額を減少し剰余金とするには、原則として、株主総会の普通決議が必要です(会社法第448条、第309条1項)。
例外的に、株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合で、準備金の額の減少の後の準備金の額が以前の準備金の額を下回らないときは取締役会設置会社の場合は取締役会(非取締役会設置会社の場合は取締役の決定)で決議することができます。
債権者異議手続き
準備金の額を減少する場合は、原則として、債権者異議手続きが必要です(会社法第449条)。
例外1
減少する準備金の額の全部を資本金とする場合、債権者異議手続きは必要ありません。
例外2
定時株主総会において準備金の額の減少を決議し、準備金を減少する額が欠損の額を超えない場合、債権者異議手続きは必要ありません。
欠損とは分配可能額がマイナスになった状態のことです。
債権者異議手続きとして、株式会社の債権者は、株式会社に対し、準備金の額の減少について異議を述べることができます。
そして、原則として、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、一定の債権者には個別にこれを催告しなければなりません。
・準備金の額の減少の内容
・貸借対照表の要旨や決算公告の実施状況
・債権者が一定の期間(1か月以上)内に異議を述べることができる旨
債権者が定められた期間内に異議を述べなかったときには、当該債権者は、当該準備金の額の減少について承認をしたものとみなします。
債権者が定められた期間内に異議を述べたときは、原則として、株式会社は、当該債権者に対し、弁済・相当の担保の提供・相当の財産の信託のうちのどれかを行なわなければなりません。
ただし、例外として、既に担保を提供しているなどにより、当該準備金の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないときは除きます。
準備金の額の減少の効力発生時期は、株主総会の決議等で定められた効力発生日となることが原則ですが、その日までに債権者保護手続が終了していない場合は効力が発生しません。債権者保護手続が終了していないときは、当初の効力発生日の前日までであれば、効力発生日を変更することができます。
2.5剰余金→資本金
剰余金の額を減少し資本金とするには、株主総会の普通決議が必要です(会社法第450条、第309条第1項)。
2.6剰余金→準備金
剰余金の額を減少し準備金とするには、株主総会の普通決議が必要です(会社法第451条、第309条第1項)。
まとめ
ここまで株主資本等の概要と株主資本の変動について説明しました。株主資本の変動について6パターンを挙げて具体的に解説したので、しっかりとイメージできたという方もいらっしゃることでしょう。
実務において株主資本の変動の手続きにあたる際は、会社法の条文をよく読み手続きを理解した上で行うことが重要です。
今回の記事が皆様の株主資本等についての理解を深めるきっかけとなれば幸いです。
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