紛失した定款を再発行する手続きや必要書類

株式会社の基礎知識
投稿日:2024.11.05
紛失した定款を再発行する手続きや必要書類

会社を設立する際には、必ず定款を作成する必要があります。定款とは、会社の組織(取締役・監査役、取締役会など)や業務などについて規定したもので、会社を国に例えれば、定款は「憲法」に当たるものだと言えます。

したがって、会社設立後は、社内で大切に保管し、必要な時に内容を確認できるようにしておかなければなりません。もし定款を紛失した場合には、役員変更登記や申請手続きに支障が出る場合があります。

ここでは、定款を紛失した場合の対処方法をご紹介します。

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定款の備置義務と定款の紛失 

1.1定款の備置義務

会社に関する事項を定めた会社法の「第31条第1項」では次のように規定されています。

「発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)は、定款を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店及び支店)に備え置かなければならない。」

上記の条文を整理すると「株式会社は、設立後に会社の本店・支店に定款を備え置かなければならない。」ということになります。つまり、常に定款を会社内に置いておかなければ、会社法に違反するということです。

1.2 定款の紛失が問題となるケース

同じく「会社法第31条第2項」では、以下のように規定されています。

「発起人(株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第2号又は第4号に掲げる請求をするには、発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めた費用を支払わなければならない。
一 定款が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧の請求
二 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 定款が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求」

つまり、会社の取引先や金融機関などから、「貴社の定款を閲覧したい、(又は)コピーがほしい。」と言われた場合には、営業時間内であれば、定款を見せたり、そのコピーを渡したりしなければならないということです。

もし定款を紛失していた場合には、これらの請求に応じることはできませんから、会社法に違反することになります。それだけでなく、取引先や金融機関などからの信頼を損なうことにもなりかねません。

定款を紛失した場合の対応方法

定款を紛失した場合の最も簡易な方法は、自分で再作成することです。

ほとんどの場合、会社設立時に定款はパソコンで作成されているはずですから、データが残っていれば、そのデータを基に再度プリントアウトすることで、再作成できるはずです。もし司法書士や行政書士などに定款の作成を依頼されている場合には、連絡を取り送ってもらえば良いと思います。

ただし、ここで注意したいのは、会社設立後に定款を変更した場合です。このような場合には、司法書士や行政書士が関与することなく、会社内で変更手続きをしたはずですから、変更したデータを探すしかありません。

なお、会社設立時の原本の定款を「原始定款」、変更後の最も新しい定款を「現行定款」と言います。

定款を紛失した場合の対応方法については以下の記事で4つ紹介しています。
関連記事:定款を紛失したらどうする?

定款の再発行の手続き・必要書類

3.1原始定款なら公証役場で再発行する

今まで定款の変更をしていない場合で、「原始定款」のデータが会社に残っておらず、作成した司法書士や行政書士からも入手できない場合には、認証を受けた公証役場で「謄本の再発行」をしてもらう方法を取ります。

定款認証の際に、「紙定款」で行った場合には、公証役場が20年間保管しています。したがって、認証後20年以内であれば、再発行の手続きを取ることで、「原始定款」の謄本を入手することができます。

この場合、請求できる人は、作成者又は利害関係者に限られます。利害関係者とは、会社の代表取締役、役員、株主、債権者などです。

手続きの際には、会社の登記事項証明書(発行から3か月以内)、会社の印鑑登録証明書(交付から3か月以内)が必要です。また、代理人が請求する場合には、委任状も必要です。

一方、定款認証の際に、「電子定款」で行った場合には、法務省のオンラインシステムを使い「同一の情報の提供の請求」の手続きを行うことで、「原始定款」の書面又はデータを入手することができます。この手続きができるのも、作成者又は利害関係者に限られています。

なお、この請求の際にも、会社の登記事項証明書、会社の印鑑登録証明書、委任状が必要です。加えて、「登簿管理番号」も必要です。これは、定款が認証された際に、公証役場から発行された「領収書」に記載されています。

3.2 現行定款なら法務局で閲覧する

以上の方法は、「原始定款」の場合です。もし「現行定款」のデータが見つからない場合には、法務局での「閲覧」という方法を取ります。

「原始定款」を変更した後に、役員変更登記などを行う際に、申請書の添付資料として、定款を法務局へ提出しているはずです。その提出済みの定款を手続きによって、閲覧するという方法です。

手続きの方法ですが、最後に登記申請を行った法務局に対して、「付属書類閲覧申請」を提出します。この手続きも、当事者、利害関係者、代理人が行うことができます。

ただし、再発行ではなく、あくまでも閲覧ですから、スマホやカメラなどで、定款を撮影することになります。また、保存期間は5年間ですから、この期間を過ぎていれば、閲覧することはできません。

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まとめ

定款は会社によって、最も重要な文書の一つです。もし取引先などから閲覧を求められて、備えていないことが分かれば、信頼を失墜することになります。また、会社法で規定されている「定款の備置義務」に違反することになります。

したがって、定款を紛失した場合には、早急に準備する必要があります。会社にデータが残っていない場合には、公証役場での再発行の手続きや法務局での閲覧手続きを取ることになります。

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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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