株式会社の設立時に作成する定款には、会社法27条で必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」が5つあり、これに発行可能株式総数を加えた項目を漏れなく記載しなければ、公証人の認証を受けられません。
定款には、このほかに記載しないと効力を持たない「相対的記載事項」や、記載するかどうかが自由な「任意的記載事項」もあり、どれをどこまで書けばよいか迷う方も少なくありません。ひな形をそのまま使うと、自社の機関設計や事業内容に合わない条文が残ってしまうこともあります。この記事では、絶対的・相対的・任意的記載事項の全項目、紙定款と電子定款の違い、ひな形の入手先、作成から認証までの流れを整理します。
株式会社の定款の作り方・記載事項の全項目とひな形を解説
会社設立の定款 投稿日:2026.10.14
定款とは?会社の基本ルールを定める書類
定款は、会社の目的や組織運営の基本原則を定めた書類で、「会社の憲法」と呼ばれることもあります。株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、公証人の認証を受けたうえで、法務局に設立登記を申請しなければなりません。認証を受けていない定款は効力を持たないため、そのままでは設立登記に使えません。
定款の3種類の記載事項
定款に記載する事項は、会社法上、次の3種類に分かれます。
種類 | 内容 | 記載がない場合 |
|---|---|---|
絶対的記載事項 | 会社法27条で定められた5項目 | 定款自体が無効になる |
相対的記載事項(変態設立事項) | 会社法28条の4項目 | その事項自体が無効になる(定款は有効) |
任意的記載事項 | 法令に違反しない範囲で自由に記載できる事項 | 定款・当該事項の効力に影響しない |
3種類のうち、必ず記載しなければならないのは絶対的記載事項だけです。相対的記載事項は該当する事案がある場合にのみ記載し、任意的記載事項は会社の判断で記載するかどうかを決めます。それぞれの内容は次の見出し以降で解説します。
絶対的記載事項の5項目と発行可能株式総数
会社法27条により、株式会社の定款には次の5項目を必ず記載しなければなりません。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
このほか、会社法37条により、発起人は株式会社の成立の時までに、その全員の同意で発行可能株式総数を定款に定める必要があります。設立時発行株式の総数は、公開会社でない株式会社を除き、発行可能株式総数の4分の1を下回ることができません。
目的は、登記した範囲でしか事業を行えません。将来行う予定の事業も含めて記載しておくと、事業を始めるたびに定款変更を行う手間を減らせます。各項目の記載例や記載を誤りやすいポイントは「定款の絶対的記載事項とは?相対的記載事項との違い」で詳しく解説しています。
相対的記載事項(変態設立事項)の代表例
会社法28条は、定款に記載しなければ効力が生じない例外的な事項として、次の4つを挙げています。これらは「変態設立事項」とも呼ばれます。
- 現物出資:発起人が金銭以外の財産(不動産、車両、パソコンなど)を出資し、その対価として株式の割当てを受ける場合の、出資者の氏名・目的財産・価額・付与する株式数
- 財産引受け:会社の成立を条件に、発起人が第三者から特定の財産を譲り受ける契約をする場合の、その財産・価額・譲渡人の氏名
- 発起人の報酬・特別利益:会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益、及びその発起人の氏名
- 設立費用:会社が負担する設立に関する費用
これらは、発起人が会社の財産を実質より大きく見せたり、不当な利益を得たりすることを防ぐための規定です。該当する事案がなければ記載する必要はありません。現物出資を行う場合など、個別の条件によって手続きが変わるため、該当する可能性がある場合は司法書士や公証役場に事前に確認しておくと安心です。
その他の相対的記載事項の例
上記の変態設立事項の他にも相対的記載事項としては以下のようなものがあります。
- 株式の譲渡制限に関する定め(株式を譲渡する際に会社の承認を要する規定など)
- 機関の設置に関する定め(取締役会、監査役、会計参与、監査役会、会計監査人、委員会などの設置)
- 公告方法の定め(官報、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙、または電子公告)
- 株主名簿管理人の設置
任意的記載事項の代表例
任意的記載事項は、法令に違反しない範囲で会社が自由に記載できる事項です。代表的な例として、次のようなものがあります。
- 株主総会の議長
- 定時株主総会の招集時期
- 取締役・監査役の員数
- 事業年度
- 公告の方法
任意的記載事項は、記載がなくても定款自体の効力に影響しません。ただし、一度記載すると、変更や削除には定款変更の手続きが必要になります。将来変更する可能性が高い事項は、定款ではなく取締役会規程など別の社内規程で定める会社もあります。
定款の作り方の流れ
定款作成から認証までは、おおむね次の流れで進みます。
- 会社の基本事項(商号・目的・本店所在地・資本金・機関設計など)を決める
- 絶対的記載事項・該当する相対的記載事項・必要な任意的記載事項を整理する
- ひな形をもとに定款を作成する
- 紙定款か電子定款かを選ぶ
- 公証役場に事前確認・予約を行う
- 公証人の認証を受ける
- 認証済みの定款の謄本(電子定款の場合は同一情報)を受け取る
- 登記申請の書類に添付する
紙定款の場合、認証を受けた定款の原本は公証役場が保管し、会社は謄本の交付を受けます。電子定款の場合は、原本がデータのまま公証役場のサーバーに保存され、会社は「同一情報の提供」としてデータの交付を受けます。公証役場への予約から認証、受け取りまでの具体的な手順は「定款認証の流れ5ステップを公証役場の予約から受取りまで解説」で解説しています。
紙の定款と電子定款の違い
定款は紙と電子データのどちらでも作成できますが、費用面で違いがあります。
項目 | 紙定款 | 電子定款 |
|---|---|---|
印紙税 | 4万円 | かからない |
認証手数料 | 資本金の額等に応じて1万5,000円・3万円・4万円・5万円 | 紙定款と同じ |
交付手数料 | 謄本の交付手数料(枚数に応じて発生) | 電磁的記録の保存手数料300円+同一情報の提供手数料700円程度 |
作成に必要なもの | プリンター・製本用具 | 電子証明書・PDF作成ソフト・専用ソフト |
電子定款を選ぶと印紙税4万円がかからないため、費用を抑えられます。電子定款の作成手順や必要なソフトは「電子定款の作り方・自分で作る手順と必要なソフト一覧を解説」で解説しています。認証手数料の金額区分については次の見出しで解説します。
定款認証にかかる費用
定款認証には、印紙税(紙定款のみ)に加えて、公証人へ支払う認証手数料がかかります。認証手数料は、2022年1月の改正以降、設立時の資本金の額等に応じて次のとおり区分されています。
資本金の額等 | 認証手数料 |
|---|---|
100万円未満(かつ発起人が自然人3人以下・設立時発行株式の全部を発起人が引受け・取締役会非設置の3条件を満たす場合) | 1万5,000円 |
100万円未満(上記の条件を満たさない場合) | 3万円 |
100万円以上300万円未満 | 4万円 |
300万円以上 | 5万円 |
1万5,000円の区分は2024年12月の改正で新設された条件です。自社がどの区分に該当するかは、資本金の額だけでなく発起人の人数や機関設計にもよるため、条件別の早見表は「定款認証の手数料は?1.5万円になる条件を資本金で解説」で確認できます。
定款のひな形・テンプレートの入手先
定款を一から作成するのは負担が大きいため、公的機関が公開しているひな形を活用すると効率的です。
ひな形はあくまで一般的なパターンを示したものです。自社の事業目的、機関設計(取締役会の設置有無など)、株式の譲渡制限の有無によって記載内容が変わるため、ひな形をそのまま使うのではなく、絶対的記載事項から順に自社の内容に置き換えて確認することが重要です。
定款作成でよくあるつまずきポイント
定款作成では、次のような点でつまずきやすい傾向があります。
- 事業目的に将来行う予定の事業を含め忘れ、事業拡大のたびに定款変更が必要になる
- 発行可能株式総数を定めるタイミングを見落とし、認証直前に慌てて定める
- 取締役会の設置有無によって認証手数料の区分が変わることに気づかず、想定より高い区分で申請してしまう
- 電子定款を選んだのに、電子証明書の準備が間に合わず認証の予約に遅れる
いずれも、絶対的記載事項と発行可能株式総数を先に確定させ、紙定款か電子定款かを早い段階で決めておくことで防げます。
まとめ
定款には、会社法27条の絶対的記載事項5項目と発行可能株式総数を必ず記載し、該当する場合は相対的記載事項を、必要に応じて任意的記載事項を加えます。紙定款は印紙税4万円がかかる一方、電子定款は印紙税が不要になる代わりに電子証明書などの準備が必要です。
ひな形を土台にしつつ、自社の事業目的や機関設計に合わせて絶対的記載事項から順に確認し、公証人の認証を受ける流れを押さえておきましょう。