商業登記・会社変更登記のオンライン申請とは?基礎知識から申請の流れ、電子証明書や電子署名の準備について紹介します

オンライン申請・ 電子申請 投稿日:2024.08.28

商業登記のオンライン申請とは?基礎知識から申請の流れ、電子証明書や電子署名の準備について紹介します

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大を背景にビジネスシーンで注目されたのが、「押印や書類手続きのために出社する」という論点です。

コロナ前は不便とは感じていても疑問を抱くことはなかったのが「会社など特定の場所に行かないとできない手続き」です。当初はビジネスシーンが起点になりましたが、2020年も後半になるにつれ、行政や補助金、許認可など、公的な手続きにおいてもオンライン化、電子化が注目され、政治関連のニュースで取り上げられることも増えました。

様々な公的な手続きがありますが、そのひとつが商業登記(会社変更登記)です。従来からオンライン申請自体はありましたが、このコロナ禍以降、オンライン申請をしたいという意向は増えてくることが想定されます。

オンライン申請は便利で申請自体のスピードは早いですが、利用前の準備に知識が必要だったり手間がかかるのが特徴で、それが普及の妨げになっています。本記事ではオンラインでの商業登記(会社変更登記)に必要な基礎知識や、申請に必須な商業登記電子証明などの取得方法、費用についてまとめ形式で紹介します。

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そもそも電子証明書とは?電子署名とは何が違うのでしょうか?

昨今、税務申告に続いて、申請頻度の高い人事労務分野でも電子申請が当たり前になりつつあります。これら手続きのために企業が電子申請を利用するのに必要となるのが法人向けの電子証明書ですが、なんとなくは理解できるけど詳しくはわからないという方は意外に多いのではないでしょうか?

それぞれ、以下のようなの違いがあります。

電子署名

PDFなどの文書ファイルに添付することでその文書の正当性を証明するために行う処理です。今まで行っていた契約書などへのサインや押印を電子的に行うことを指します。

電子証明書

申請する文書ファイルなどに電子署名をした人が本人であるかを証明するもので、電子ファイル形式で利用します。イメージとしては印鑑証明書に近いもので、証明書の正当性の確保のために第三者による認証が必要になります。

それぞれの詳しい違い、対応する手続きについて、こちらの記事で詳しく紹介しています。

商業登記(会社変更登記)のオンライン申請とは?

現在のところ、本店移転や役員変更などの商業登記(会社変更登記)の申請方法には2つの選択肢があります。

①登記申請書類を作成し、添付書類を添えて法務局に持参もしくは郵送で申請(書面申請)
②法務省のオンライン申請システムを使い、申請データをPCから送信して申請(オンライン申請)

1は従来からある方法です。登記申請の頻度の少ない企業ではまだ主流です。
2は比較的新しい方法ですが、登記申請頻度の少ない企業が使うには準備に手間がかかるため、どちらかというと司法書士などの専門家でよく利用されている方法です。

オンライン申請は、以前より電子証明書の取得などの準備が必要で、時間や費用がかかること、取得した電子証明書の定期的な更新など、登記すべき変更(本店移転や役員変更など)の発生頻度を考えると使いづらいという事情がありました。言ってしまえば「たまにしか発生しない登記なら書面申請でいいや」となっていたわけです。

しかし、このコロナ禍の中で、あらためてオンライン申請のニーズの高まりや、登記申請に必要な書類(各種議事録など)に使える民間の電子証明書サービスが増えたことで、利便性の向上が期待されています。

現時点では利便性を向上する新しい制度の予定などはありませんが、以前に比べれば、がんばってオンライン申請に対応しよう、というモチベーションが上がってきている状態といえます。

※オンライン申請のために必要な電子証明書のうち「商業登記電子証明書」は民間事業者では取得できず、登記所(法務局)への取得申請が必要になります。

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登記申請するならオンライン申請と書面申請、どちらにすべきでしょうか?

では、この2つの申請方法のうち、どちらを選ぶべきでしょうか?

それぞれに明確なメリット・デメリットがありますので、自分に合う方法を選択するのがおすすめです。

例えば、オンライン申請するメリットとして以下があります。

  • PCからデジタルデータ形式で申請できる
  • 申請のために法務局に出向く必要がない
  • 登録免許税を電子納付することができる


書面申請するメリットは、

  • あらかじめ電子証明書を取得していなくても登記申請ができる
  • 専用ソフトのインストールが不要
  • 自分で調べて書類を作成すれば費用をかけずに申請ができる
  • 郵送申請なら法務局に出向く必要がない


この2つを比較してみると、どちらも法務局に行く必要はないこと、オンライン申請ではPCやソフトのインストールが必要なことがわかります。コロナ禍でとにかく避けたいのは外出したり、混雑する法務局に窓口に行かないで済ませることであれば、書面申請でも問題ないとなります。反面、すでにPCで申請する環境があったり、電子証明書を取得しており、一定期間内に複数回の登記申請することがわかっている場合はオンライン申請を選んだほうがいい場合もあります

以下の記事では、上記以外にもそれぞれのメリット・デメリットを紹介していますので比較してみてください。


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オンライン申請には商業登記電子証明書が必要です

商業登記申請においては、法人・会社を証明する商業登記電子証明書と個人を証明する電子証明書(取締役会議事録などの添付書類への電子署名に使用)の2種類の電子証明書の取得が必要となります。

この2つのうち、特に重要なのが「商業登記電子証明書」です。この商業登記電子証明書は法務局でしか取得できませんのでご注意ください。

地方公共団体が運営する公的個人認証局が発行する法人代表者に係る電子証明書やその他民間認証局等が発行する電子証明書は、商業登記における法人・会社を証明する電子署名の電子証明書としては利用できません。商業登記をオンライン申請する場合は「法務局で商業登記電子証明書を取得する必要がある」と覚えておいてください。

以下の記事でも詳しく解説しています。

商業登記電子証明とは?どんな手続ができる?

商業登記電子証明書とは登記所(法務局)が法人の代表者に対して発行している証明書で、会社・法人の代表者名義で行うオンライン申請の電子署名に利用することができます。

法人が使用できる電子証明書には、地方公共団体が運営する公的個人認証局が発行する法人代表者に係る電子証明書やその他民間認証局等が発行する電子証明書などもありますが、会社の登記簿を管理している登記所(法務局)が発行する電子証明書を使用する必要があります。その為、法人を証明する電子証明書=商業登記電子証明書と覚えておけば様々な場面で会社のオンライン申請が可能な手続きに使用することができます。

商業登記電子証明書を取得すれば、会社の様々な行政手続きをオンラインで申請することができます。実際に使用できる業務の一例をご紹介します。

  • 登記・供託オンライン申請
  • e-Tax(国税電子申告・納税システム)
  • eLTAX(地方税電子申告)
  • 社会保険・労働保険関係手続(e-Gov 電子申請システム )


上記で挙げた以外にも様々な申請に使用ができます。くわしくは以下の記事でも紹介しておりますのでご参考ください。

商業登記電子証明書の取得方法

では、商業登記電子証明書はどうやって取得するのでしょうか?

商業登記電子証明書の特徴は、商業登記情報が証明の根拠になっているという点です。「その会社が実在すること(法人格の存在)」「会社代表者本人であること」といった、会社代表印によって証明されていた事項はこの商業登記電子証明書でしか証明することができません。

最近は民間の認証事業者が電子証明書のサービスを提供していますが、これらは企業ではなく自然人としての本人の証明(個人向け)、もしくは法務局でなく各事業者が認証する法人向け電子証明書です。ですので、事業者が提供する法人向けの電子証明書では登記申請をすることはできません。

登記申請を予定している場合は必ず法務局で取得する必要があります。この取得には大きく分けて以下のステップが必要です

①専用ソフト「商業登記電子認証ソフト」をインストールする
②申請用ファイルの作成
③電子証明書の発行申請
④電子証明書の取得(ダウンロード)

「また専用ソフトが必要なのか・・」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、操作自体は難しくありませんのでご安心ください。

詳しい取得方法については以下の記事もご参考ください。

オンライン申請には専用ソフトのインストールが必要です

商業登記電子証明書が取得できたら、商業登記のオンライン申請ができるようになります。申請の前にまず専用ソフトをPCにインストールします。現時点ではWindowsにのみ対応しています。(上記の電子証明書取得用のソフトとは異なるので注意してください)

ソフトのインストール方法、登録方法について、以下の記事で詳しく紹介していますのでぜひ試してみてください。


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法人の電子申請の義務化が進んでいるのはご存知でしょうか?

2020年4月から、特定の法人において労務手続きの電子申請が義務化されたことはご存じでしょうか?すでに電子化されていた税務申告に続いて、申請頻度の高い人事労務分野でも電子申請が当たり前になりつつあります。

主な対象は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労働保険に関する各種申請で、従業員を雇用している会社であれば必ず発生する手続きです。

従来から確定申告など一部の手続きで電子化は進んでいましたが、これだけの規模で義務化されるというのは初の試みで、頻度の高い人事労務手続きを電子化することで行政関連の手続きのコストを大きく削減することが目的となっています。

今回、すべての法人がいきなり対象になるのでなく、以下の条件に該当する法人からとなります。

  • 資本金、出資金額が1億円を超える法人(いわゆる大企業に相当します)
  • 相互会社
  • 特定目的会社
  • 投資法人


ただし今後を考えると対象でない企業でも可能な限り準備しておくことが望ましいでしょう。

この制度についての詳細や対象法人時について、こちらの記事でまとめましたのでご参考ください。

電子証明書にはいくつかの種類があり、対応できる手続きが異なるので注意ください

新型コロナウイルス感染拡大を背景に、書類そのものや押印が不要な電子契約が注目されています。電子契約において、本人を確認するために必要なのが電子証明書です。この電子証明書、一つあればどんな申請にも対応できると思ってしまいがちですが、さまざまな種類があることに注意が必要です。

  • 法人を証明する公的な電子証明書
  • 個人を証明する電子証明書(おなじみマイナンバーカードもこの1種です)
  • 民間事業者による各種証明書サービス


などなど、さまざま種類があり、対応できる手続きも異なります。

例えば、商業登記申請は法務局の登記データに関わるもなので、必要な証明書も限定されます。一般的に重要度の高い手続きほど必要な証明書が限定されるといえます(例外もあります)

このような背景を理解し、自分が行う手続きをカバーできる電子証明書を準備しましょう。
以下の記事では電子証明書の種類を紹介していますのでご参考ください。

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・株主リスト
・印鑑届出書
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・辞任届(役員辞任)
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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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