会社の事業目的の決め方・書き方の例と許認可における注意点

会社設立の定款
投稿日:2026.10.15
会社の事業目的の決め方・書き方の例と許認可における注意点

会社設立時に決める事業目的は「適法性」「営利性」「明確性」の3つの要件を満たせば、書き方そのものに法律上の大きな制約はありません。2006年の会社法施行により、以前は必要とされていた「具体性」の審査も廃止されています。

一方で判断に迷うのは、「事業目的はいくつまで書いていいのか」「どこまで将来見越して入れるべきか」、そして許認可の取得を予定している場合に「どの文言なら審査に通るのか」という点です。特に許認可が必要な事業では、目的欄の記載が要件を満たしていないと許可自体が下りないことがあるため、通常の事業目的以上に注意が必要になります。

この記事では、事業目的の決め方の考え方、記載時に満たすべき基本ルール、業種別の記載例、そして許認可の取得を予定している場合の注意点について解説します。

事業目的とは?定款に記載されている理由

事業目的は、定款の絶対的記載事項の一つで、会社がどのような事業を行うかを示す項目です。登記事項にもなるため、法務局の登記簿に記載され、登記簿謄本を見れば誰でも確認できます。


取引先や金融機関は、契約や融資の可否を判断する際に登記簿の事業目的を確認することがあります。目的欄に記載のない事業を行っていると、契約の締結や口座開設の審査で説明を求められる場合や手続きに支障が出る可能性があります。

事業目的の決め方〜現在の事業と将来の事業を分けて考える

決め方の基本は、(1)設立後すぐに始める事業と、(2)数年以内に始める可能性がある事業を分けて考えることです。


事業目的の記載数に法律上の上限はなく、複数の事業を並べて記載できます。ただし、登記事項証明書に記載された目的はすべて公開されるため、無関係な事業まで大量に並べると、主力事業が何かを第三者が把握しにくくなる点は押さえておきましょう。何の脈絡もない事業目的が大量に記載されているのを見てどんな印象を持たれるかをイメージするとよいです。


将来始める可能性がある事業を先に記載しておくと、実際にその事業を始める際に定款変更と変更登記の手続きを省略できます。一方、具体的な計画がない事業まで書き込むと目的欄が長くなり、事業内容の把握しやすさが下がる面もあります。何を残し何を省くかは、事業計画の確度を踏まえてご判断ください。その会社の業種を左右するような事業目的の変更はそれなりに変更の確度が高まってから行うのも有効です。


また、事業目的のリストの最後に「前各号に附帯又は関連する一切の事業」という一文を加えておくと、記載した目的に付随する事業を個別に列挙しなくても対応できる範囲が広がります。

事業目的の書き方で満たすべき3つの要件

事業目的の記載には、次の3つの要件があります。


要件

内容

適法性

法令や公序良俗に反する内容でないこと

営利性

会社が利益を得ることを目的とした事業であること(非営利目的のみの記載は不可)

明確性

専門用語・略語・造語を避け、第三者が読んで事業内容を理解できる記載であること


この3要件は現在も審査の対象です。一方で、後述する「具体性」は現在、法律上の必須要件ではなくなっています。

事業目的の「具体性」はどこまで必要か

以前は、事業目的が会社の事業範囲を客観的に確定できる程度に具体的かどうかも審査の対象でした(具体性の要件)。これは、同一市区町村内で類似する商号を同一の営業のために登記できないとする「類似商号規制」と関係していたためです。自社が他社と「同一の営業」ではないと証明するため、定款の事業目的を詳細に具体的に書く必要があったのです。


2006年の会社法施行にともない類似商号規制が廃止されたことを受け、会社の目的の具体性の有無は審査上考慮しないこととされました。そのため現在は、「商業」「商取引」のような抽象的な記載であっても、定款に定めれば登記自体は可能とされています。


ただし、具体性を欠く目的は、取引先や金融機関から見て事業内容が分かりにくいという実務上の不利益は残ります。融資審査や許認可の申請では目的欄の具体性が実質的に見られる場面があるため、登記が通るかどうかとは別に、具体的に記載しておくメリットは大きいといえます。

業種別の事業目的の記載例

事業目的は、業種によって記載の型がある程度定まっています。代表的な例は次のとおりです。


業種

記載例

情報サービス業

ソフトウェアの開発、販売及び保守

飲食業

飲食店の経営

小売業

衣料品の販売

コンサルティング業

経営に関するコンサルティング業務

建設業

建築一式工事の設計、施工及び請負


上記はあくまで一般的な記載の型です。許認可の取得を予定している場合、必要な要件は事業や自治体によって異なるため、記載内容の最終確認は次の項目もあわせてご確認のうえ、許認可を管轄する窓口または専門家にご相談ください。

許認可を取得する予定がある場合の注意点

建設業、古物商、労働者派遣事業、宅地建物取引業、旅行業、酒類販売業などは、事業を始める前に許認可の取得が必要です。これらの業種では、審査の際に定款の目的欄が確認され、許可要件を満たす文言が記載されていないと許認可を受けられない場合があります。


例えば古物商許可では、古物営業法に基づく事業であることが分かる記載(古物の買取及び販売など)が求められます。建設業許可では、建設業法が定める許可業種の名称に沿った記載が求められる運用が一般的です。


許認可の要件を満たさない目的で会社を設立してしまうと、あとから目的を追加・変更する定款変更と変更登記が必要になり、許認可の取得や事業開始が遅れる原因になります。許認可の取得を予定している場合は、設立前に管轄窓口(都道府県庁、警察署、国土交通省の地方整備局など)や行政書士に、必要な文言を確認しておくことをおすすめします。

事業目的を追加・変更したいときの手続きと費用

設立後に事業目的を追加・変更する場合、株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)で定款を変更したうえで、変更登記の申請が必要です。登録免許税は1件につき3万円で、決議の日から2週間以内に法務局へ申請します。


定款変更が必要になる具体的な場面や手続きの流れは、「定款変更が必要になる場面と手続きと登記申請が必要なケース」でまとめています。


事業目的は許認可の要件にも関わります。定款の記載事項と作成の流れは「株式会社の定款の作り方・記載事項の全項目とひな形を解説」も参考にしてください。


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