定款変更が必要になる場面・手続きと登記申請が必要なケース

会社設立の定款
投稿日:2026.10.15
定款変更が必要になる場面・手続きと登記申請が必要なケース

定款は会社設立時に作成しますが、その後の変更では公証人の認証は不要です。定款変更に必要なのは株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)だけで、変更後の定款を法務局や公証役場に提出する義務もありません。

ただし、商号や事業目的など会社法911条3項が定める「登記事項」に当たる変更は、決議から2週間以内に変更登記を申請する必要があります。定款変更と変更登記を同じ手続きだと思い込み、決議だけで終えてしまうケースや、逆にすべての変更に登記が必要だと思い込むケースがありますが、実際には登記が不要な定款変更も少なくありません。

本記事では、特別決議の要件、登記が必要な変更事項と不要な変更事項の見分け方、手続きの流れ、登記の期限と登録免許税の目安を解説します。

定款変更に必要なのは株主総会の特別決議、公証人の認証は不要

会社法466条は、株式会社が成立後に株主総会の決議によって定款を変更できると定めています。この決議は普通決議ではなく特別決議が必要です。特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款でこれを上回る割合を定めた場合はその割合)を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上(定款で加重した場合はその割合)の賛成によって成立します。


設立時に作成する原始定款は公証人の認証を受けなければ効力が生じません。一方、成立後の定款変更にはこの認証が不要です。株主総会の議事録に変更内容を記載して保管した時点で、定款の効力は発生します。法務局への届出や登記の完了を条件とする規定ではないのです。

定款変更が必要になる主な手続き

定款変更が必要になる代表的な場面・手続きは次のとおりです。


場面

具体例

商号の変更

社名変更、屋号との統一

本店所在地の変更

本社移転、住所表記の詳細化

事業目的の追加・変更

新規事業への進出、許認可取得のための目的追加

発行可能株式総数の変更

増資の準備、株式分割にともなう変更

株式の内容・譲渡制限規定の変更

種類株式の発行、譲渡制限会社への移行

公告方法の変更

官報公告から電子公告への変更

取締役会・監査役の設置に関する定めの変更

機関設計の見直し

事業年度の変更

決算期の変更

登記申請が必要なケースと不要なケースの見分け方

定款変更に伴って登記申請が必要かどうかの見分け方のポイントは、変更した内容が会社法911条3項に列挙された「登記事項」に当たるかどうかです。登記事項に該当する変更は、決議後に法務局への変更登記が必要になります。


登記が必要になる変更

登記が不要な変更

商号

事業年度

目的

株主総会の招集地に関する定め

本店所在地

取締役の員数の定め(具体的な員数を登記していない場合)

発行可能株式総数

株主名簿管理人に関する内部規定

公告方法

取締役会の招集手続の詳細

取締役会・監査役設置の定め

—

株式の譲渡制限に関する規定

—


事業年度など登記事項に当たらない変更でも、税務署や都道府県税事務所、市区町村への異動届出が必要になる場合があります。定款上は変更したのに登記も届出も行っていない、という抜け漏れが起きやすいポイントです。

定款変更・登記申請の手続きの流れ

  1. 株主総会の招集通知を発送する(原則として会日の1週間前まで。非公開会社は定款で短縮できます)
  2. 株主総会で特別決議を行う(議決権の過半数出席、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)
  3. 議事録を作成し保管する(会社法318条により本店に10年間備え置く義務があります)
  4. 登記事項に該当する場合、決議の日から2週間以内に変更登記を申請する(会社法915条1項)
  5. 変更後の定款を最新版に差し替えて自社で保管する


定款の変更自体は3〜5の順に進めますが、登記が不要な変更事項の場合は4を省略してよい点が、実務でつまずきやすいポイントです。

登記が必要な場合の期限と登録免許税

申請期限:決議日(定款の効力発生日)から2週間以内に変更登記を申請します。期限を過ぎて登記を怠ると、代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。


登録免許税の目安:商号変更・目的変更・公告方法の変更・発行可能株式総数の変更などの多くは「その他の変更の登記」という同一区分に分類され、1件あたり3万円です。同じ区分に属する変更であれば、複数の事項をまとめて1回の申請にしても税額は3万円のままです。ただし、登記申請の頻度の高い本店移転では6万円になるケースもありますので、しっかり確認しましょう。


変更事項

登録免許税の目安

商号・目的・公告方法・発行可能株式総数の変更(同一区分内)

3万円(複数事項をまとめても3万円)

本店移転(同一法務局の管轄内)

3万円

本店移転(管轄をまたぐ移転)

6万円(旧所在地・新所在地の双方で申請)

区分が異なる変更を同時申請(例:本店移転+商号変更)

各区分の税額を合算(例:3万円+3万円=6万円)

定款変更で実務上つまずきやすいポイント

定款は法務局に提出する書類ではありません。法務局が保管・発行するのは登記事項証明書(登記簿)であり、定款の原本ではないため、変更後の定款は会社が自社で更新・保管する必要があります。登記簿の記載だけを変更して定款そのものを差し替えていないと、後日、登記簿と定款の内容が食い違っていることに気づく、というケースが起こります。


複数の変更を同時に決議する場合は、登記申請書を変更事項の区分ごとにまとめると登録免許税を節約できます。区分をまたぐ変更を別々に申請すると、その分だけ税額が加算される点に注意が必要です。


事業目的の追加・変更では、許認可業種に該当するかどうかで、目的欄に指定の文言を盛り込む必要がある場合があります。所管の省庁・自治体が公開している様式や記載例を、決議の前に確認しておくと、決議のやり直しを避けられます。


定款変更の効力が発生するのは株主総会で決議した日であり、登記が完了した日ではありません。登記は変更内容を第三者に対抗するための要件であり、決議自体の効力発生を左右するものではない点も押さえておきましょう。


定款そのものに何を記載すべきか、認証を含めた設立時の定款作成の流れを確認したい場合は「株式会社の定款の作り方」を参照してください。


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