株式会社の設立にかかる実費の総額は、条件をすべて満たせば16万円台に収まりますが、資本金の額や定款の形式によっては20万円を超えることもあります。一律の金額はありません。
総額の大半を占めるのは、公証役場に支払う定款認証手数料と、法務局に納める登録免許税という2つの実費です。この2つはどちらも「資本金の額」や「発起人の人数・条件」によって金額が変わるため、他人の体験談の金額をそのまま自分に当てはめると、実際の負担額とズレが生じます。
この記事では、実費の内訳と早見表、認証手数料が最も安くなる条件、登録免許税を半額にする制度、設立後に毎年かかる維持費までを整理します。自分の条件をあてはめて総額を確認してください。
会社設立の費用の総額はいくら?かかる費用の内訳早見表つき
会社設立の費用 投稿日:2026.09.24
会社設立でかかる費用は「実費」と「依頼費用」の2種類
会社設立の費用は、誰に頼んでも必ず発生する「実費」と、書類作成や申請の手間を減らすために支払う「依頼費用」の2つに分かれます。
実費は主に、公証役場に支払う定款認証手数料と、法務局に納める登録免許税です。この2つは自分で手続きしても、司法書士に依頼しても、金額は変わりません。一方、依頼費用は「誰にどこまで頼むか」で0円から数万円、数十万円まで幅が出ます。依頼先ごとの料金と対応範囲の違いは「会社設立サービス比較6選 料金と対応範囲の違いで選ぶ(準備中)」で整理しています。
まずは、誰が申請しても変わらない実費から確認します。
株式会社設立の実費内訳と早見表
実費は「定款認証手数料」「定款の謄本手数料(約2,000円)」「登録免許税」「印紙税(紙の定款の場合のみ)」の合計です。条件によって、総額は次のように変わります。
条件 | 定款認証手数料 | 登録免許税 | 印紙税 | 実費合計の目安 |
|---|---|---|---|---|
資本金100万円未満・発起人3名以下・取締役会なし・電子定款 | 1万5,000円 | 15万円 | 0円 | 約16万7,000円 |
資本金100万円未満(上記条件に該当しない)・電子定款 | 3万円 | 15万円 | 0円 | 約18万2,000円 |
資本金100万〜300万円未満・電子定款 | 4万円 | 15万円 | 0円 | 約19万2,000円 |
資本金300万円以上・電子定款 | 5万円 | 資本金×0.7%(15万円未満は15万円) | 0円 | 約20万2,000円〜 |
上記いずれか+紙の定款 | 同上 | 同上 | 4万円 | 上記+4万円 |
※定款の謄本手数料(1枚250円、標準5〜8枚程度)は各パターンに約2,000円を含めて計算しています。登録免許税は、市区町村の証明を受ける「特定創業支援等事業」を利用すると半額になります(後述)。
定款認証手数料は、公証役場の窓口で現金払いが原則です。クレジットカードや電子マネーに対応していない公証役場もあるため、事前に管轄の公証役場へ支払い方法を確認しておくと、当日の受け取りがスムーズです。
条件ごとの詳しい内容を、次の項目から順に解説します。
定款認証手数料は資本金と発起人の条件で1万5,000円〜5万円に変わる
定款認証手数料は、2024年12月1日の公証人手数料令の改正で資本金に応じた4区分になりました。最も安い1万5,000円が適用されるのは、次の4条件をすべて満たす場合です。
- 資本金の額が100万円未満
- 発起人全員が自然人(個人)で、3人以下
- 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨を定款に記載
- 取締役会を設置しない旨を定款に記載
1つでも外れると、資本金100万円未満でも3万円になります。資本金100万円以上300万円未満は4万円、300万円以上は5万円です。
例えば、夫婦2人や友人2人で発起人となり、資本金80万円・取締役会を置かない設計で設立する場合はこの4条件を満たすため1万5,000円になります。一方、同じ資本金80万円でも発起人が4人になったり、設立時から取締役会を置く設計にしたりすると、条件から外れて3万円になります。条件ごとの詳しい分岐と資本金別の早見表は「定款認証の手数料は?1.5万円になる条件を資本金で解説」で解説しています。
登録免許税は資本金の0.7%、最低15万円
株式会社の設立登記にかかる登録免許税は「資本金の額×0.7%」で計算します。ただし、この金額が15万円に満たない場合は、一律15万円を納めます。資本金が2,143万円を超えるあたりから、0.7%の金額が15万円を上回り始めます。
多くの株式会社では資本金が2,000万円未満のため、登録免許税は15万円になるケースが大半です。具体的には、資本金100万円なら100万円×0.7%=7,000円となり15万円に満たないため15万円を納めます。資本金300万円なら300万円×0.7%=21万円となり、15万円を上回るため21万円を納めます。資本金がいくらを超えると15万円を上回るかの分岐点は、15万円÷0.7%=約2,143万円です。計算方法と納付のタイミングは「会社設立の登記費用と登録免許税|印紙代の計算と納付手順」で詳しく解説しています。
登録免許税を半額の7万5,000円にする特定創業支援等事業
市区町村が実施する「特定創業支援等事業」を受け、証明書の交付を受けたうえで登記申請すると、登録免許税の税率が0.7%から0.35%に、最低額も15万円から7万5,000円に半額になります。
証明書の取得には、市区町村が実施する創業セミナーの受講など、事前の手続きが必要です。設立当日に間に合わせるには、資本金や発起人が固まる前から動き出す必要があります。証明書の取得条件と申請の流れは「登録免許税が半額7.5万円に|特定創業支援等事業の使い方」でまとめています。
紙の定款には印紙税4万円。電子定款なら不要
定款を紙で作成すると、収入印紙4万円が必要です。印紙税は紙の文書に課される税金のため、電子定款(PDFデータに電子署名したもの)であれば、この4万円はかかりません。
紙定款と電子定款の実費は4万円差ですが、電子定款には専用のソフトや電子証明書の取得が別途必要です。自分で電子定款を作る場合の手順と必要なものは「電子定款の作り方|自分で作る手順と必要なソフト一覧(準備中)」で解説しています。
定款認証と登記申請以外にかかる少額の実費
早見表の主な費目のほかにも、次のような少額の実費が発生します。合計すると数千円〜1万円程度です。
費目 | 金額の目安 |
|---|---|
会社の実印(代表者印)の作成 | 3,000円〜1万円程度 |
発起人・取締役の印鑑証明書取得(1通あたり) | 300円程度 |
登記完了後の登記事項証明書取得(1通あたり) | 600円程度 |
資本金の払込を証明する通帳のコピー代 | 0円〜数十円程度 |
これらは店舗や自治体によって金額が前後しますが、実費全体から見れば大きな割合ではありません。総額を見積もる際は、早見表の金額に1万円前後を上乗せしておくと実際の支払額に近くなります。
資本金の額は実費だけでなく消費税や信用力にも影響する
資本金の額は、定款認証手数料の区分だけでなく、次の点にも影響します。
- 資本金1,000万円以上だと、設立初年度から消費税の課税事業者になる(免税事業者になれない)。例えば資本金999万円なら原則2期は免税事業者になれますが、1,000万円ちょうどにすると初年度から課税事業者です
- 資本金の額は登記簿謄本に記載され、取引先や金融機関が確認できる
- 資本金が少なすぎると、初期費用や当面の運転資金が不足しやすい
いくらにすべきかは事業の内容や必要な運転資金によって変わるため、この記事では判断材料の提示にとどめます。決め方の考え方は「会社設立時の資本金はいくらが目安?平均額と決め方の判断材料5つ」、1,000万円以上にする場合の注意点は「資本金1000万円で設立は損?消費税が免税にならない条件」で解説しています。
会社設立を司法書士やサービスに依頼する場合の費用相場
自分で手続きをせず依頼する場合、依頼先によって金額と対応範囲が変わります。
- 自分で書類を作成し、自分で申請する:実費のみ
- 書類作成をサポートする事業者を使う:実費+数千円〜数万円程度
- 司法書士に依頼する(申請の代理まで含む):実費+報酬5万〜15万円程度
司法書士報酬の相場は「会社設立を司法書士に頼む費用・報酬相場5〜15万円の内訳(準備中)」、依頼先ごとの費用相場全体は「会社設立を依頼する費用の相場|司法書士と各サービス(準備中)」で解説しています。
出典:日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(2024年3月実施)」
設立後も毎年かかる費用、法人住民税の均等割は赤字でも7万円
会社設立の実費は登記が完了すれば終わりですが、設立後は毎年、法人住民税の「均等割」がかかります。資本金1,000万円以下・従業員50人以下の標準的な株式会社であれば、都道府県民税2万円+市区町村民税5万円の、合計7万円が目安です。
均等割は所得(利益)に関係なく課税されるため、赤字の決算でも納税義務があります。設立後の維持費の全体像は「法人化の費用と会社の維持費|赤字でもかかる年7万円」で解説しています。
会社設立の費用を安く抑える方法
実費(定款認証手数料・登録免許税)は条件を満たす以外に削る方法はありませんが、外注費や時間のコストは工夫の余地があります。電子定款で印紙税4万円を抑える、特定創業支援等事業を使って登録免許税を半額にする、書類作成にかかる時間を圧縮するといった方法です。具体的な5つの方法は「会社設立の費用を安く抑える4つの方法と削れない実費を解説」でまとめています。
まとめ|自分の条件にあてはめて総額を確認する
会社設立の総額は「資本金の額」「発起人の人数・条件」「電子定款か紙の定款か」「特定創業支援等事業を使うか」の組み合わせで決まります。最初に本記事の早見表で目安をつかんだうえで、各条件の詳細記事で自分のケースに当てはめてください。
決めるべき項目を先に整理したい場合は「会社設立前に決めること10項目|印刷できるチェックリスト(準備中)」も参考にしてください。