子会社を設立する手続きは、親会社が発起人になる点を除けば、通常の株式会社の設立と同じ流れです。違いは、公証役場に提出する親会社の書類(代表者印の印鑑証明書と登記事項証明書)と、出資を決める親会社の社内手続きが加わることです。
個人が発起人なら本人の印鑑証明書で足りますが、親会社が発起人になると、必要な書類も取得先も、有効期間の数え方も変わります。定款認証手数料にも差が出ます。発起人が全員個人の場合にだけ1万5,000円になる区分があり、親会社が発起人の場合は対象外です。
この記事では、子会社設立の流れ、親会社側と子会社側それぞれの必要書類、費用、設立後の期限を整理します。各書類の詳しい扱いは、個別の記事にご案内します。
子会社設立の手続きの必要書類は?親会社側の準備も解説
子会社の設立 投稿日:2026.10.21
子会社設立は「通常の設立」に「親会社側の準備」を足した手続き
子会社設立は、新しく株式会社をつくる通常の設立手続きに、親会社側の準備を足したものです。会社法では、ある会社が他の会社の議決権の過半数を持つなどして経営を支配している場合、前者を親会社、後者を子会社と呼びます(会社法第2条第3号・第4号。支配の細目は法務省令で定められています)。
子会社の設立では、親会社が発起人(設立時に出資して株式を引き受ける人)になるのが基本の形です。例えばA社が資本金1,000万円の全額を出資してB社を設立する場合、B社の発起人はA社1社だけです。
発起人が個人の場合と法人の場合で、手続きがどう変わるかを整理します。
項目 | 発起人が個人 | 親会社(法人)が発起人 |
|---|---|---|
公証役場に出す発起人の書類 | 本人の印鑑証明書 | 代表者印の印鑑証明書と、親会社の登記事項証明書(または代表者の資格証明書) |
出資の決め方 | 本人の判断 | 親会社の社内手続き(機関設計により決議が必要になる場合がある) |
子会社設立の流れと、親会社・子会社の役割分担
設立の流れは、次の6ステップです。会社設立全体の流れは株式会社設立の流れ9ステップ|登記申請の方法と費用で解説しています。
順 | 作業 | 主な担当 | 期限・注意 |
|---|---|---|---|
1 | 商号・本店・事業目的・資本金・出資比率・役員などを決め、出資について親会社内で意思決定する | 親会社と子会社の設立担当者 | 取締役会の決議が必要になる場合がある |
2 | 定款を作成する | 発起人(親会社) | |
3 | 公証役場で定款の認証を受ける | 親会社(代理人でも可) | 親会社の書類は発行後3か月以内 |
4 | 出資金を払い込む | 親会社 | 通帳の写しで払込みを証明する |
5 | 設立登記を申請する | 設立する会社の代表者 | 期限は2週間以内(起算日は後述の一覧) |
6 | 登記完了後に各種届出をする | 子会社 | 期限は後述の一覧を参照 |
定款の認証は、本店所在地を管轄する法務局に所属する公証人が行います(法務省)。登記申請の提出先と期限は、会社設立登記の申請方法における提出先と2週間の期限を解説で詳しく解説しています。
子会社設立の必要書類の全体像
必要書類は、提出先で分けると整理しやすくなります。次の表は、発起人が出資して設立する方法(発起設立)で、出資が金銭のみの場合です。
書類 | 提出先 | 主に用意する側 |
|---|---|---|
定款(公証人の認証を受けたもの) | 公証役場で認証、設立登記で法務局へ | 発起人(親会社) |
親会社の代表者印の印鑑証明書、登記事項証明書(または資格証明書)、委任状(代理人が出向く場合) | 公証役場 | 親会社 |
実質的支配者となるべき者の申告書 | 公証役場 | 親会社と子会社の設立担当者 |
発起人の同意書・決定書(定款に定めがない事項を決める場合) | 法務局 | 発起人(親会社) |
設立時取締役・設立時代表取締役の就任承諾書 | 法務局 | 役員予定者 |
払込みがあったことを証する書面(通帳の写しなど) | 法務局 | 設立時代表取締役 |
設立時代表取締役などの印鑑証明書 | 法務局 | 役員予定者 |
親会社が発起人になる場合の書類は法人が発起人になる場合の必要書類 親会社の印鑑証明を解説、設立ケース別の全体像は株式会社設立の必要書類一覧。設立ケース別の早見表つきで解説で解説しています。
親会社側の準備①:公証役場に出す書類
発起人が法人の場合、公証役場には、代表者印の印鑑証明書と、その会社の登記事項証明書(登記簿謄本)または代表者の資格証明書が必要です。いずれも発行後3か月以内のものに限られます(日本公証人連合会)。
親会社側で揃えるものは、次のとおりです。
- □ 親会社の代表者印の印鑑証明書(発行後3か月以内)
- □ 親会社の登記事項証明書または代表者の資格証明書(発行後3か月以内)
- □ 代理人が公証役場に出向く場合:発起人(親会社)から代理人への委任状(代表者印を押印)と、代理人本人の確認資料
見落としやすいのは次の2点です。1つ目は押印で、委任状には印鑑証明書と同じ代表者印を押します。2つ目は証明書の取得日です。3か月の期間は発行日から数えるため、取得してから定款認証まで日が空くと取り直しになります。親会社内の決議に日数がかかる場合は、定款認証の予定日から逆算して取得します。
定款認証では、公証人が、設立する会社の実質的支配者となるべき者を申告させる取組が行われています(法務省の研究会資料)。【要確認】親会社が発起人の場合の申告書の記載方法は、本記事では一次情報で確認できていません。定款認証を受ける公証役場に、事前にご確認ください。
親会社側の準備②:社内の意思決定と議事録
子会社への出資について、親会社が取締役会設置会社の場合、会社法は、重要な財産の処分及び譲受けなどの重要な業務執行の決定を、取締役に委任できないと定めています(会社法第362条第4項)。
子会社への出資がこれに当たるかは、条文だけでは決まりません。次のような材料を見て判断します。
- 出資額と、親会社の資産・資本の規模
- 親会社の定款の定め
- 取締役会規則や決裁権限規程などの社内規程にある基準額
例えば社内規程に「一定額以上の出資は取締役会の決議事項」とあれば、その基準額を超える出資は取締役会の議題になります。決議が必要となった場合は、内容と日付を議事録に残します。
取締役会を置かない会社の決め方は、定款の定めや取締役の構成によって異なります。個別の事情で変わるため、本記事では一般的な考え方の紹介にとどめます。
親会社側の準備③:出資金と払込み
出資金は設立登記の前に、定款に記載した出資額のとおり払い込みます。払い込んだ事実は、預金通帳の写し(または取引明細票)と、設立時代表取締役が作成する証明書で示します。通帳の写しは、払込日と金額が分かる箇所を示して、証明書と一体にします(法務省)。
子会社設立で見落としやすいのは、この証明書を作るのが親会社ではなく、設立する会社の設立時代表取締役である点です。出資するのは親会社でも、証明書には役員予定者の署名が必要になります。
【要確認】払込先の口座の名義について、法人が発起人の場合の取扱いは一次情報で確認できていません。管轄の法務局または司法書士等にご確認ください。
子会社側で作る書類
子会社側の書類は、取締役会を置くかどうかで変わります。次の表は、法務省の2つの記載例(取締役会を置かない会社、取締役会と監査役を置く会社)をもとにしています。
書類 | 取締役会を置かない場合 | 取締役会を置く場合 |
|---|---|---|
設立時取締役の選任を決める書面(定款に定めがない場合) | 必要 | 必要(設立時監査役の選任も含む) |
設立時代表取締役を選定したことを証する書面(定款に定めがない場合) | 発起人が選定 | 設立時取締役が選定(2名以上の署名) |
就任承諾書 | 設立時取締役、設立時代表取締役 | 設立時取締役、設立時代表取締役、設立時監査役 |
払込みがあったことを証する書面 | 設立時代表取締役が作成 | 設立時代表取締役が作成 |
出典:法務省
親会社が発起人の場合に注意したいのは、就任承諾書です。法務省の記載例(オンライン申請)では、取締役が発起人かつ定款の作成者として署名している場合は就任承諾書が不要とされますが、発起人が親会社(法人)のときは、設立時取締役が発起人本人ではないため、この省略の対象になりません。
定款に定めのない事項を発起人が決める書面は、発起人の決定書はいつ必要になる?記載事項やひな形も解説で解説しています。
子会社設立にかかる費用
子会社設立の法定費用は、定款認証手数料と登録免許税が中心です。以下は、発起設立で出資が金銭のみ、電子定款で認証を受ける場合を前提にしています。紙の定款は収入印紙4万円が別にかかります(日本公証人連合会)。
資本金の額等 | 定款認証手数料 | 備考 |
|---|---|---|
100万円未満 | 3万円 | 発起人全員が個人で3人以下、発起人が株式の全部を引き受ける、取締役会を置かない、のすべてに当たる場合は1万5,000円。親会社(法人)が発起人の場合は対象外 |
100万円以上300万円未満 | 4万円 | ― |
300万円以上 | 5万円 | ― |
出典:公証人手数料令第35条
登録免許税は、資本金の額の1,000分の7です。計算した額が15万円に満たない場合は15万円になります(法務省)。資本金がおよそ2,143万円を超えるまでは、15万円です。
資本金別の法定費用の例です。
資本金 | 定款認証手数料 | 登録免許税 | 合計 |
|---|---|---|---|
1,000万円 | 5万円 | 15万円 | 20万円 |
3,000万円 | 5万円 | 21万円 | 26万円 |
このほか、証明書の発行手数料や司法書士報酬などは別にかかります。資本金の額は、許認可の要件などとも関わるため、これらを踏まえてご判断ください。費用の全体像は、会社設立の費用の総額はいくら?かかる費用の内訳早見表つきで解説しています。
設立後の手続きと期限一覧
設立登記のあとにも、新しい会社として各種の届出が必要です。
手続き | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|
設立登記の申請 | 設立時取締役等の調査が終了した日または発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内 | 本店所在地の法務局 |
健康保険・厚生年金保険の新規適用届 | 事実発生から5日以内 | 事務センターまたは年金事務所 |
労働保険の保険関係成立届、雇用保険適用事業所設置届 | 保険関係成立日(一般的には最初に労働者を雇い入れた日)の翌日から10日以内 | 労働基準監督署または公共職業安定所 |
法人設立届出書 | 設立登記の日以後2か月以内 | 納税地の所轄税務署 |
青色申告の承認申請書 | 設立の日以後3か月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日のうち、早い日の前日まで | 納税地の所轄税務署 |
出典:法務省、日本年金機構、愛知労働局、国税庁(法人設立届出書、青色申告の承認申請)
実務でつまずきやすいのは、期限の長さの違いです。登記の期限は2週間ですが、年金事務所への新規適用届は5日以内で、添付する登記事項証明書は発行後90日以内のものが必要です(日本年金機構)。登記の完了日を早めに確認し、証明書の取得を段取りしておきます。
都道府県・市区町村への法人設立の届出は、期限と様式が自治体ごとに異なります。設立後の手続き全体は、会社設立後にやること13項目と提出期限の早見表リストで解説しています。
子会社設立の進め方と、関連する選択肢
手続きの進め方は3通り
子会社設立は、自社で進める、司法書士に依頼する、書類作成を支援するサービスを使う、のいずれでも進められます。違いは、どこまでを誰が担うかです。
進め方 | できる範囲 | 申請の主体 |
|---|---|---|
司法書士に依頼する | 書類の作成から申請の代理まで | 司法書士(代理人) |
書類作成を支援するサービスを使う | 書類の作成・購入・郵送申請のサポートまで | 本人(設立する会社の代表者) |
自社で進める | 書類の作成から申請まで、すべて自社 | 本人(設立する会社の代表者) |
判断材料は、設立までの日数、親会社内で書類対応にあてられる人数、費用です。費用は会社設立を自分でやる手順と依頼した場合との費用比較と、会社設立を司法書士に頼む費用・報酬相場5〜15万円の内訳で比較できます。
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