株式会社と合同会社の違い7項目を解説 どっちを選ぶべきか

会社設立の形態選択 投稿日:2026.10.21

株式会社と合同会社の違い7項目を解説 どっちを選ぶべきか

株式会社と合同会社の違いは、①出資者の責任、②設立費用、③意思決定の仕組み、④役員の任期と決算公告、⑤資金調達と上場、⑥認知度、⑦利益配分の7項目で整理できます。出資者の責任はどちらも出資額までで同じです。差が出るのは、設立費用、運営のルール、将来の資金調達の3点です。

「どっちが得か」の答えが分かれるのは、損得が会社の将来像によって変わるからです。たとえば資本金100万円で設立すると、登録免許税と定款認証手数料だけで10万円以上の差が出ます。一方で、外部から株式で出資を受けたい場合は、株式を発行できる株式会社が前提になります。

この記事では、7項目の早見表、項目ごとの違い、条件別の費用の目安、合同会社のメリット・デメリット、あとから形態を変える方法を整理します。どちらを選ぶかは、判断材料を確認したうえでご自身でお決めください。

株式会社と合同会社の違い7項目の早見表

まず全体像です。各項目の詳細は次のH2以降で、条件や出典とあわせて説明します。


項目

株式会社

合同会社

①出資者の責任

出資額まで(有限責任)

出資額まで(全員が有限責任)

②設立費用

登録免許税は最低15万円。定款認証が必要

登録免許税は最低6万円。定款認証は不要

③意思決定

株主総会と取締役が基本。所有と経営を分けられる

出資者(社員)が経営する。所有と経営が一致

④任期・決算公告

取締役に任期あり。決算公告が必要

任期なし。決算公告は不要

⑤資金調達・上場

株式の発行で出資を募れる。上場できる

株式を発行しない。上場の対象外

⑥認知度

広く知られている

2006年に導入された形態。相手による

⑦利益配分

原則は持株数に応じる

出資額と異なる比率を定款で決められる


なお、会社の種類には合名会社・合資会社もありますが、設立数が少なく、新しく設立する場合に比較の対象になるのは主にこの2つです。

違い①出資者の責任 どちらも出資額までで同じ

株式会社の株主も、合同会社の社員も、会社が債務を返せなくなったときに負う責任は、原則として出資した額までです。合同会社の社員は全員が有限責任と会社法に定められています(会社法576条4項)。合名会社や合資会社には、会社の債務を私財で負う無限責任社員がいる点が異なります。


実務で見落とされやすいのは、金融機関からの借入です。会社の借入に代表者が個人保証をつけると、会社の形態にかかわらず、代表者個人が返済義務を負います。「有限責任だから個人の財産は守られる」とは限らないため、借入の契約内容は形態とは別に確認が必要です。

違い 設立費用 登録免許税と定款認証で差が出る

設立時にかかる主な実費は、登録免許税、定款認証手数料、紙の定款に貼る収入印紙代の3つです。株式会社は公証役場での定款認証が必要で、合同会社は認証の制度がありません。


費用

株式会社

合同会社

登録免許税

資本金×0.7%(最低15万円)

資本金×0.7%(最低6万円)

定款認証手数料

1.5万〜5万円(下の表)

かからない

収入印紙代(紙の定款)

4万円。電子定款は不要【要確認】

同左【要確認】


株式会社の定款認証手数料は、資本金などの区分で変わります。


区分

手数料

資本金100万円未満で、次の3条件をすべて満たす

1万5,000円

資本金100万円未満(上の3条件を満たさない)

3万円

資本金100万円以上300万円未満

4万円

資本金300万円以上

5万円


1万5,000円になる3条件は、次のとおりです。2024年12月1日に施行された改正によるもので、日本公証人連合会が公表しています。


  • 発起人の全員が自然人で、その数が3人以下であること
  • 定款に、発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載があること
  • 定款に、取締役会を置く旨の記載がないこと


取締役会を置く設計にすると、資本金が100万円未満でも3万円の区分になります。


登録免許税は、資本金×0.7%が最低額を下回ると最低額になります。計算すると、株式会社は資本金およそ2,143万円まで、合同会社はおよそ857万円まで最低額のままです。資本金1,000万円なら、株式会社は15万円(計算上は7万円)、合同会社は7万円です。


資本金100万円で電子定款を使う場合の目安は次のとおりです。登記事項証明書の取得費用などは含みません。


前提

株式会社

合同会社

発起人1人・取締役会なし

約16.5万円(15万円+1.5万円)

約6万円

取締役会を置く

約18万円(15万円+3万円)

約6万円


費用の全体像は「会社設立の費用の総額はいくら?かかる費用の内訳早見表つき」、手数料の条件は「定款認証の手数料は?1.5万円になる条件を資本金で解説」、税額の計算は「会社設立登記費用と登録免許税(印紙代)の計算と納付手順を解説」で扱っています。

違い③意思決定の仕組み 所有と経営が分かれるかどうか

株式会社は、出資者である株主と、経営を担う取締役が別の立場になる仕組みです。株主総会で重要事項を決め、取締役が日常の経営を行います。ただし、1人の発起人が株主と取締役を兼ねる形も認められており、小規模な会社では実際にそのように運営されることが多くあります。取締役会や監査役を置くかどうかは、非公開会社であれば原則として任意です。


合同会社は、出資者である社員がそのまま経営を担います。定款に別段の定めがなければ、社員全員が業務を執行します(会社法590条)。社員が2人で意見が割れた場合、業務の決定は原則として社員の過半数で行います。定款を変更するには、定款に別段の定めがない限り、総社員の同意が必要です(会社法637条)。


代表者の肩書も異なります。株式会社は代表取締役、合同会社は代表社員です。法人が社員になっている場合は、その法人が選んだ職務執行者が登記に載ります。

違い④役員の任期と決算公告|維持の手間に差が出る

項目

株式会社

合同会社

役員の任期

取締役は原則2年。非公開会社は定款で最長10年

定めなし

任期満了時の登記

再任でも変更登記が必要

任期がないため不要

決算公告

義務あり

義務なし


株式会社の取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結までです。非公開会社は、定款で最長10年まで伸ばせます(会社法332条)。任期を10年にしても、満了のたびに再任の登記が必要で、申請の期限は変更から2週間以内です(会社法915条)。登記を怠ると、過料の対象になる場合があります(会社法976条)。


決算公告は、株式会社が毎事業年度の決算後に、貸借対照表などを官報・日刊新聞紙・電子公告のいずれかの方法で公表する義務です(会社法440条)。どの方法で公告するかは定款で定めます。合同会社には、この義務がありません。

違い⑤資金調達と上場 株式を出せるかどうか

株式会社は、募集株式の発行によって、第三者から出資を受けられます。新株予約権を使ったストックオプションの付与も可能で、上場できるのは株式を発行している会社です。


合同会社は株式を発行しないため、上場の対象になりません。新たに出資を受けるときは、出資者が社員として加わる形になり、定款の変更を伴います。持分を他の人に譲渡する場合は、原則として他の社員の承諾が必要です(会社法585条)。M&Aで会社ごと譲り渡すときも、株式の譲渡で足りる株式会社に比べ、社員全員の意思確認が手順に入る点に違いがあります。


将来、外部の投資家からの出資や上場を視野に入れているかどうかが、この項目の判断材料になります。

違い⑥認知度と取引先の見方

合同会社は、2006年5月の会社法施行で導入された比較的新しい形態です。株式会社に比べると、一般の人や取引先に知られていない場面があります。一方で、アップルジャパン合同会社やアマゾンジャパン合同会社のように、外資系企業の日本法人が合同会社を採用している例もあります。


形態の違いだけで、口座開設・融資・採用の結果が決まるわけではありません。ただ、取引先によっては、契約の相手方を株式会社に限る社内規程を設けている場合があります。確認の観点は次の3つです。


  • 取引予定先の取引条件に、会社形態の指定がないか
  • 金融機関の口座開設や融資の案内に、形態による違いがないか
  • 許認可が必要な業種では、申請先が法人形態に要件を設けていないか

違い⑦利益配分と定款の自由度

株式会社の配当は、原則として持株数に応じて行います。株主を平等に扱う原則があるためです。非公開会社は、定款で株主ごとに異なる取扱いを定めることもできます(会社法109条2項)が、定款の定めの追加には株主総会の特別な決議が必要です。


合同会社は、利益や損失の分配の割合を、出資額にかかわらず定款で自由に決められます(会社法622条)。たとえば、Aさんが700万円、Bさんが300万円を出資していても、定款に定めれば利益を5対5で分けられます。出資の比率ではなく、経営への貢献に応じて配分したい場合に使われる仕組みです。


ただし、配分の割合を変えるには定款の変更が必要で、原則として総社員の同意を求められます。社員の人数が増えるほど、合意のハードルは上がります。

合同会社のメリット・デメリットと、判断材料の整理

ここまでの7項目をまとめると、合同会社のメリット・デメリットは次のとおりです。


  • メリット:登録免許税の最低額が低い/定款認証が不要/任期と決算公告がない/利益配分を定款で自由に決められる
  • デメリット:株式を発行できず上場の対象外/持分の譲渡に社員の承諾が原則必要/定款変更に総社員の同意が原則必要/相手によっては認知度が低い


どちらを選ぶかは、会社の状況によって変わります。次の条件に当てはまるかどうかが、判断の材料になります。


株式会社の仕組みが活きやすい条件


  • 外部の投資家から、株式で出資を受ける予定がある
  • 将来、上場やストックオプションの付与を検討している
  • 取引先や金融機関から、会社形態の指定を受ける可能性がある
  • 取締役会や監査役を置く機関設計を考えている


合同会社の仕組みが活きやすい条件


  • 設立費用と、設立後の維持の手間を抑えたい
  • 出資者が少人数で、全員が経営に関わる
  • 出資額と異なる比率で、利益を配分したい
  • 外部からの資金調達や上場の予定がない


資本金の額、事業目的、機関設計は、会社ごとに事情が異なります。具体的な内容は、司法書士や税理士などの専門家に相談して決める項目です。個人事業主から法人にするかどうかを先に検討する場合は「個人事業主と法人はどっちが得?違いを10項目で比較」と「会社設立のメリット・デメリット|法人化の損益分岐点」、時期の判断は「法人化のタイミングはいつ?判断基準7つと逆算の手順」が参考になります。

株式会社を選んだあとの手続きと、あとから形態を変える方法

株式会社を選んだ場合の手続きの全体像は「株式会社設立の流れ9ステップ 登記申請の方法と費用」にまとめています。個別の手続きは、次の記事で確認できます。


  • 設立前に決めること:「会社設立前に決めること10項目の印刷できるチェックリスト」
  • 定款の作成:「株式会社の定款の作り方・記載事項の全項目とひな形を解説」
  • 必要書類:「株式会社設立の必要書類一覧。設立ケース別の早見表つきで解説」
  • 資本金の検討:「会社設立時の資本金はいくらが目安?平均額と決め方の判断材料5つ」


形態は、設立後に変えることもできます。合同会社から株式会社への変更は、組織変更という手続きです。総社員の同意と、債権者保護の手続きが原則として必要になります(会社法781条・779条)。債権者が異議を述べるための期間は1か月以上とされているため、手続きには時間がかかります。株式会社から合同会社への組織変更も、会社法上は認められています。


最初の選択で迷っても、後から変更する手段があることは、判断材料のひとつです。


出典・参考:


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