募集株式の発行(増資)の3つの方法を比較

募集株式の発行
投稿日:2024.11.25
募集株式の発行

資金調達の方法として一般的なのが、融資と増資です。

融資は金利の違いや返済期間などの違いはありますが、比較的シンプルな方法です。銀行など融資を引き受ける金融機関も多く、中小企業から大手企業まで幅広く利用されています。増資では、一般的に会社の株式を新たに発行し、それを株主となる人(もしくは既存の株主が追加で)が引き受ける(購入する)というかたちで資金調達が行われます。

このように増資目的で株式を発行することを「募集株式の発行(新株発行)」と呼びます。他にも資本金を増やす方法はありますが、一般的に増資といえば「募集株式の発行(新株発行)」を指します。本記事では、募集株式の発行(新株発行)による増資における3つの方法について手法の違いやそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。

また、実際にこれから増資を予定している方向けに、増資にあわせて必要な登記を早く、手間をかけずに申請する方法も紹介。依頼する司法書士を比較したり、打ち合わせの時間をかけたくない、できるだけ安く申請したい、という方はぜひご覧ください。

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増資(募集株式の発行)とは?融資との違いや株価への影響は?

株式会社では設立時に資本金を拠出し、創業以降の必要資金とします。この資金を追加で確保するために行うのが増資です。資金を確保するという点では融資と変わりませんが、その手続きや会社への影響が大きく異なります。

増資と融資では以下のような違いがあります。

①資金調達のコストが異なる

融資におけるコストの中心は金利ですが、増資では株主に対して行う配当や、利益を上げることで株価が上昇すれば株主に還元するキャピタルゲイン(株式の値上がり益)等、株主に対して支払う費用がコストといえます。

もちろんこれらの費用は、会社の業績や会社に対する期待値によって異なってきます。
融資であれば確実な返済が求められますが、増資の場合はそれよりも事業の成長性に期待されることが多くなります。

②会社の所有者に変化がある

融資はお金の貸し借りだけの関係性です。返済が終われば関係は終わります。
増資では、資金拠出の代わりに会社の権利の一部を引き渡し、会社のオーナー(の1人)になるということです。株式を持っている間は会社との関係はずっと続きます。

③納税額への影響

増資をすると会社の資本金額が上がります。資本金が上がると納税額が増えます。
例えば以下のものがあります。

消費税:資本金1000万以下の場合、2年間の免税措置がある
外形標準課税:資本金1億円以下であれば免除される

④登記など事務作業・株価算定や株主総会コストの有無


融資であればその手続は金融機関側で行うことが多くなりますが、増資では新たに発行する株式数や1株あたりの金額算定、株主総会の招集や開催、会社の登記簿の変更などコストや手間が多くなります。


株式会社の増資(募集株式の発行)における3つの方法

この「募集株式の発行(新株発行)」を行うには主に3つの方法があります。自社の状況に応じて最適な方法を選択しましょう。

①株主割当増資

既存の株主に対してそれぞれの持分比率に応じて株式を新たに発行(新株発行)し出資してもらう方法です。事業が成長しており、株主の状況に不都合がなければ比較的スピーディかつ確実に増資ができる方法です。

株主割当増資のメリット:

  • 条件面の合意ができれば手続きは早く行える。
  • 全員に新株を発行できれば、株主ごとの持株比率が変わらず、株価など条件面の調整がしやすい。


株主割当増資のデメリット:

  • 既存株主の資金力に依存するので、金額の大きい資金調達が難しい可能性がある。
  • 既存株主のみが対象でそれぞれの持分比率も変わらないので、出資のモチベーションが上げにくい


②第三者割当増資

特定の第三者に新たに株式を発行(新株発行)して出資を受ける方法です。全体の株式数が増え、その一部を新たな第三者が保有することになりますので、既存株主からみると持分比率が下がりますが、特定の相手に対して機動的な資金調達ができる方法です(もちろん、特定の第三者の合意だけではできず、既存株主との調整は必要になります。)

第三者割当増資のメリット:

  • 新しい株主が増えることで支援が受けやすくなる
  • 特定の第三者のため、交渉をシンプルにできる
  • その時点での株価をもとに、機動的な資金調達ができる(会社再生時など、短期間で大量の資金が必要な時に有効)


第三者割当増資のデメリット:

  • 既存株主の持株比率が下がる。
  • 新株発行時に会社の時価総額が大きく上がらない場合、持株の価値が下がってしまう可能性がある。


③公募増資

新たな株主を特定せずに、新株を発行して広く募る方法です。①や②に比較すると、会社や製品に知名度が必要だったり、資金調達までの時間や新たな株主対応コストが増えますが、大きく資金調達できる可能性もある方法です。

公募増資のメリット:

  • 株主を広く募ることで、調達できる金額が大きくなる可能性がある
  • 公開企業の場合は、株式の流動性が上がり売買数が増える可能性がある


公募増資のデメリット:

  • 株式発行数が多くなることで、1株あたりの価値、株価が下がってしまう可能性がある
  • 持ち株の少ない株主が多数生まれることで対応コストが上がってしまう。


募集株式の発行(増資)の手続きの流れ

増資の手続きでは、株主総会等により募集株式の内容を決定し、株式引受人が出資金を払い込む手続きが必要となります。比較的、頻度の高い第三者割当増資を例に手続きの流れを解説します。

①募集事項の決議

「発行する募集株式の内容」を決定するための決議を行います。ここでは、

  • 今回新たに発行する株式の数
  • 1株当たりの払込金額、増加する資本金の額
  • 払込期日等
  • 現物出資の場合は、その旨及び当該財産の内容、価額


が対象となり、原則として株主総会の決議によって決定されます。
※公開会社では取締役会の決議によることが原則となります。

②募集株式の引受けの申込み

①で決定した内容をもとに、発行する株式を引受ける人が申し込みをします。

実務上は未上場や知名度の低い段階では、不特定多数の出資希望者から株式引受の申込を募るのは現実的ではありません。一般的な募集株式発行では、特定の出資希望者と協議を重ね、引き受ける株式を個別に確定させることが多くなります。

③新株割当の決議

発行する株式の内容が決まったら、株式引受人と誰にどれだけの株式を割り当てるか確定する手続きを行います。

引受人の決定は取締役会(取締役会非設置会社の場合は株主総会)の決議によって行います。この株式引受人を確定させる手続きを「割当決議」と呼びます。

なお、増資前に新株の引受先が決まっていることもよくあります。その場合は①の決議の際に、引受け予定の人から申込みがあることを条件に割当決議をすることもできます。①のタイミングで③も同時に行うことになります。

④出資の履行(代金の払い込み)

割当決議を経た後は、株式引受人は払込期日に代金を払い込みます。これをもって新たな株主としての権利を行使することができるようになります。

⑤増資の登記申請

増資が完了したら、会社の登記簿に株式数や資本金額の変更を反映するための登記申請を行います。完了後、2週間以内に登記する必要があるので速やかに申請しましょう。

関連記事:募集株式の発行(増資)の登記申請における必要書類を解説します

⑥その他書類の更新

登記申請以外にも、株主名簿や定款の変更が必要な場合があります。これら書類も忘れずに更新しておきましょう。

募集株式の発行(新株発行)で増資したら登記申請が必要

募集株式の発行による増資が完了したら登記簿に反映するための登記申請を行います。

会社がいくつの株式を発行しており、資本金がいくらなのかは登記簿に記載されます。関係者に会社の状態を示すことで取引や許認可などをスムーズにするために法律で定められており、増資完了後2週間以内の申請が必要です。
(ちなみに融資による資金調達では登記の必要はありません)

登記申請書に、募集株式により増加した「資本金の額」及び「発行済株式の総数」の他、会社の基礎情報など必要事項を記載し、添付書類として「資本金の額」及び「発行済株式の総数」に変更があったことを証明できる書類を一緒に提出します。

法務局に提出した申請が受理され、登記簿に反映されることで、増資に関する全ての手続が完了となります。


募集株式の発行(新株発行)による増資を登記申請する3つの方法

登記申請には、申請書類や添付書類の様式や項目には厳密なルールがあります。記載方法や書類を間違えるとやり直しとなり時間がかかってしまうため念入りな準備が必要です。

①自力で申請方法を調べる

書籍やネットで登記申請方法を調べ、必要な書類を作成し郵送もしくは持参して法務局に申請します。未経験者にとっては苦痛の伴う作業となるでしょう。
なお、法務省が提供するオンラインサービスもありますが、確実な書類を独力で準備するのは難しく、修正や法務局への訪問が必要になる場合もあります。

②司法書士にまるごと依頼する

最も一般的な方法です。司法書士に依頼し、数万円~程度の報酬とひきかえに必要書類を準備してもらいます。知識がなくても丸投げできるのがメリットですが、見積もりを取ったり打ち合わせの時間が必要です。

③ネットで登記書類作成できるサービスを使う

サービスのWebサイトに会員登録し、登記内容を入力すると申請書類やその他の必要書類を一括で自動作成できます。その後は印刷、押印して郵送するだけです。スピードが早く、夜や週末など作業タイミングを選ばず、費用も安くすみます。本Webサイトを運営するGVA 法人登記もこのようなサービスの一つです。

GVA 法人登記なら、増資(募集株式の発行)の登記書類を自分で作成、法務局に行かずに申請できます

株式会社の増資の登記は、本店移転などに比べると手間がかかる印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか?資本金額や株式数に変化が生じたりと、専門知識が求められることもあります。

とはいえ、士業など専門家にお願いするとしてもやりとりに意外に手間がかかるもの・・・でも社内では自分(=代表者や役員)が対応するしかない、という方も多いのではないでしょうか?

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書類作成だけでなく、印刷や製本、登記反映後の登記簿謄本(登記事項証明書)の取得をサポートするオプションプランも充実。申請に必要な収入印紙もセットで購入できるので、増資額が大きい場合の印紙購入があっても安心です。


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ステップに沿って入力するだけで必要書類の作成ができます

登記書類を作成する為には、現在の登記情報を確認し正確に入力する必要があります。

本来であれば、法務局にて有料で書類を取得し確認する必要がありますが、GVA 法人登記の、「登記情報自動反映サービス」をご利用いただきますと、システム内で現在の登記情報を無料で取得し、会社基本情報が書類作成画面に自動反映されます。登記知識のない方でもステップに沿って変更情報を入力するだけで簡単に登記書類の作成ができます。


GVA 法人登記で作成できる変更登記書類(募集株式の発行の場合)

  • 登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 払込証明書
  • 取締役会議事録
  • 総数引受契約書
  • 資本金の額の計上を証する書面
  • 会計帳簿(DESの場合)


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おわりに

募集株式の発行による増資の登記申請は、他の申請と比べて数字を扱うことが多く、専門性の高い領域です。できるだけ効率化できる方法で、ミスの可能性を減らし、スピーディに登記申請できるようにしましょう。

執筆者

執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

本Webサイト内のコンテンツはGVA 法律事務所の監修のもと、BtoBマーケティングおよび司法書士事務所勤務経験者が所属する編集部が企画・制作しています。

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