募集株式の発行における有利発行とは?

募集株式の発行
募集株式の発行における有利発行とは?

募集株式の発行については、会社法(以下「法」)において手続きが定められており、公開会社においては原則として取締役会決議により募集株式の発行が可能となっています(法第201条第1項)。


しかし、取締役会決議だけで常に新株発行が行われると、発行する新株の価格が市場の価格より低い場合には株式の価値が棄損され、既存の株主が不利益を受ける可能性もあります。


そこで、法は有利発行と呼ばれる場合には新株発行手続きについて別個のルールを定めています。そこで、今回は有利発行について手続きの内容やどのようなケースが有利発行に該当するのかについて解説していきます。

募集株式の有利発行手続き

1.1通常発行と有利発行

公開会社の募集株式発行の手続きは、取締役会による募集事項の決定を経て行われます(法第201条第1項)。この募集事項の中では引き受ける新株の対価について定められますが、法第199条第3項で以下のように定めています。


3 第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。


この第199条第3項に該当する場合が一般的に有利発行と呼ばれているものです。


1.2募集株式発行のための手続き

募集株式発行の手続きは、公開会社の場合は原則として以下のような手続きを経て行われます。


①募集事項の決定(取締役会)

②株主への募集事項の通知または公告

③申込をしようとする者へ、申込み

④募集株式の割当ての決定および通知(取締役会)

⑤出資金の払込み


募集事項の内容を決定する①や誰にどのくらいの数を割り当てるかを決定する④についても原則として取締役会決議により行われるため、株主はこうした決定に関与することができない点が特徴となっています。


なお、募集株式発行についての詳細はこちらの記事もご参考ください。


1.3有利発行にあたる場合の募集株式発行手続き

これに対して、有利発行に該当するケースでは、①の募集事項の決定は株主総会決議により行われることになります(法第201条第1項参照、法第199条第2項)。


また、この株主総会において取締役は「特に有利な金額」で募集を行うことを必要とする理由について説明する義務を負います(法第199条第3項)。


このように手続きの最初の時点から決定機関が異なる点や、株主総会は招集手続きを法に従って行う必要(法第296条以下)があるため、実務的には取締役会決議となるか株主総会決議となるかで必要な準備が異なることになります。


なお、有利発行に該当する場合に、会社が該当しないと判断し、通常どおりの取締役会決議で新株発行を行おうとすると、株主総会決議を経ていないという点で会社法違反となるため、新株発行の差止事由となってしまう可能性があるため注意が必要です(法第210条第1号)。


「特に有利な金額」について

必要な手続きが異なる有利発行に該当するか否かについては、払込金額が「特に有利な金額」に該当するかどうかによります。そこで、「特に有利な金額」について解説していきます。


2.1「特に有利な金額」の判断基準

「特に有利な金額」とは、公正な発行価額よりも特に低い金額で、既存株主の利益や資金調達の必要性などの諸事情を考慮した上で判断されるものとされており、「公正な発行価額」は発行条件を決定する直前の株価を基準に判断されるものと考えられています。

ただし、株式の買占めなどにより、株価が急騰しているような事情がある場合は、一定期間内の株価の平均から判断する場合もあるようです。


2.2日本証券業協会の基準について

発行価額の決定として、参考となるのが、証券会社が加入する日本証券業協会が出している「第三者割当増資の取扱いに関する指針」(以下「日証協指針」といいます)という証券会社向けの指針です。同指針は公表されており、こちらから確認することもできます。


同指針では、株主総会の特別決議を経ないで行われる新株発行については、原則として払込金額は、株式の発行に係る取締役会決議の直前日の価額(直前日における売買がない場合は、当該直前日からさかのぼった直近日の価額)に0.9を乗じた額以上の価額であることを求めています。


2.3日証協会指針の例外の適用

日証協会指針は常に取締役会決議の直前日の価額0.9を乗じた金額であることを求めるものではなく、例外として次のような定めを置いています。


ただし、直近日又は直前日までの価額又は売買高の状況等を勘案し、当該決議の日から払込金額を決定するために適当な期間(最長6か月)をさかのぼった日から当該決議の直前日までの間の平均の価額に0.9を乗じた額以上の価額とすることができる。


直前の日の価額に0.9を乗じた金額と、6か月間の平均価額に0.9を乗じた金額とでは全く金額が異なるケースも多いため、この例外ルールがどのような場合に適用できるのかは非常に重要です。


しかし、これについて日本証券業協会は「直近日又は直前日までの価額又は売買高の状況等を勘案」としか定めておらずどのような場合に例外が適用されるのかについて明言していません。


どういった、事例でこの例外ルールが適用可能となるかは明らかではありませんが、買い占めが会社に対し株式を高値で買い取らせることを目的にしている場合など、異常な投機によって市場価格が企業価値から乖離していると認められる場合には直前の株価を基準から排除することが認められると考えるのが一般的な理解のようです。


有利発行となる可能性のある事例

ここまでの判断基準や日証協会指針を踏まえると、取締役会決議の日の直前の株価の90%を下回る払込価額を設定する場合には有利発行となる可能性があります。


したがって、


・特に買い占めなどが行われていない状況で、一株500円の会社が300円を払込価額として募集株式発行を行った


というようなケースでは450円を下回っているため、有利発行と判断される可能性があります。


まとめ

有利発行に該当するケースでは募集新株に関する事項の決定機関が異なるなど手続きが大きく異なります。発行価額の決定については、専門家に相談するなど、慎重な対応が必要となるでしょう。


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執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)

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