取締役の任期は原則2年ですが、公開会社でない株式会社は、定款に定めれば最長10年まで伸ばすことが可能です。10年が適しているかどうかは、一律に決まるのではなく会社の状況によって変わります。
任期を伸ばすと登記の回数は減りますが、任期が満了するたびに、同じ人が続けて務める場合でも重任登記が必要で、忘れると過料の対象になります。任期を伸ばすには定款への記載が必要で、あとから変えるには定款変更の手続きが要ります。
この記事では、設立時の取締役の人数、任期の原則と10年にする仕組み、原則の2年と10年の判断材料、任期満了時の重任登記、役員構成の注意点を解説し、決算期から任期の満了時期を計算する具体例も示します。
取締役の任期は10年でいい?設立時の人数と任期の決め方
設立時取締役は何人必要?取締役会の有無で変わる人数
株式会社には、取締役を1人以上置く必要があります。取締役会を置く場合は、取締役は3人以上でなければなりません。設立時は取締役会は置かないという会社がほとんどです。
機関設計 | 取締役の最低人数 | 根拠条文 |
|---|---|---|
取締役会を置かない会社 | 1人 | 会社法326条1項 |
取締役会設置会社 | 3人 | 会社法331条5項 |
取締役会設置会社は、原則として監査役も置く必要があります(公開会社でない会計参与設置会社を除く)。取締役会を置くかどうかは設立時に決める機関設計の一部で、選び方は取締役会は設置すべき?機関設計の選び方を比較表で解説で扱います。
取締役になれるのは個人に限られ、法人は取締役になれません(株主にはなれます)。また、取締役は株主である必要もありません。公開会社でない会社であれば、取締役を株主に限る旨を定款で定めることもできます。
取締役の任期は原則2年、非公開会社は定款で最長10年
取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。定款や株主総会の決議で、最長10年までの期間とすることもできます。
公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社を除く)は、定款に定めれば、任期を「選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」に伸ばせるのです。
なお、監査役の任期は原則4年で、同じく公開会社でない会社は定款で10年まで伸ばせます。
任期の終わりは「就任2年後の同じ日」ではなく、定時株主総会の終結の時と決まっています。そのため、実際の満了時期は、決算期と総会の開催月によって前後します。
任期2年と10年の判断材料
10年にするかどうかは、会社の状況によって異なります。どちらが適しているかを示すのではなく、比較できる材料を並べます。
項目 | 任期2年(原則) | 任期10年(定款で定める) |
|---|---|---|
重任登記の回数(20年間の目安) | 約10回 | 約2回 |
登録免許税の累計(資本金1億円以下) | 約10万円 | 約2万円 |
定款への記載 | 不要 | 必要 |
後から任期の定めを変える場合 | 10年に伸ばすには定款変更が必要(株主総会の特別決議) | 2年に戻すには定款変更が必要(株主総会の特別決議) |
満了時期の管理 | 2年ごとに確認する | 次の満了まで10年空く |
回数と金額は、任期が満了するたびに全員が重任する単純な場合の目安です。登録免許税は重任登記だけの金額で、資本金が1億円を超えると1回3万円、1億円以下なら1万円です。書類の作成費用や専門家への報酬は含みません。
任期の長さにかかわらず、取締役は任期中に辞任したり、株主総会の決議でいつでも解任できます。ただし、正当な理由なく任期の途中で解任した場合は、取締役から損害賠償を請求される可能性があります。特に解任は適法に行うために準備が必要なので行う場合は専門家への確認もするべきでしょう。
任期が満了時の重任登記の期限と必要書類
任期が満了したら、同じ人が続けて取締役を務める場合でも登記が必要です。これを重任登記といいます。
申請の期限は、任期の満了など変更が生じた日から2週間以内です。期限を過ぎると、代表者が100万円以下の過料に処される可能性があります(同976条)。登録免許税は、資本金が1億円以下なら1万円、1億円を超えると3万円です。
必要書類は会社の機関設計によって異なります。取締役会設置会社で役員の全員が重任する場合の例は、次のとおりです。
- 株主総会議事録(役員の改選と、選任された人が就任を承諾した旨を記載)
- 株主リスト
- 取締役会議事録(代表取締役を選定した場合)
- 就任承諾書(新たに就任する人がいる場合)
任期を10年にしても、重任登記は10年に1度は必要になります。株式会社は、最後の登記から登記申請せずに12年が経過すると休眠会社の整理の対象となり、手続きがなければ、登記官の職権で解散の登記がされる可能性があります。
任期満了の時期は決算期で決まる
決算期が3月、定時株主総会を6月に開き、会社の成立が2026年10月の場合に、任期の満了がどうなるかを計算します。起算点を会社成立の日として計算した例です。
任期の定め | 基準になる事業年度 | 満了時期 |
|---|---|---|
2年(原則) | 2028年10月までに終了する最終の事業年度(2028年3月期) | 2028年6月の定時株主総会の終結の時 |
10年(定款で伸長) | 2036年10月までに終了する最終の事業年度(2036年3月期) | 2036年6月の定時株主総会の終結の時 |
このように、満了時期は「○年後の同じ月」ではなく、決算期と定時株主総会の開催月で決まります。重任登記の2週間は、この満了の日から数えます。決算期の決め方は決算期はいつがいい?事業年度の決め方と判断材料4つで扱います。
設立時の役員構成と定数で押さえる3つの注意点
1. 員数に余裕があるか
取締役会設置会社で取締役がちょうど3人の場合、1人が辞任すると法律で定められた人数を欠きます。欠けた場合は、後任が就任するまで、退任した取締役が取締役としての権利義務を引き続き負います。定款で取締役の員数を「1名以上5名以内」のように幅をもたせて定めておくと、人数を増減するときに定款変更が不要になります。
2. 後から加わる人の任期がずれる
あとから取締役が加わると、任期の満了時期がほかの取締役とずれることがあります。満了時期がずれると、そのたびに登記が必要になります。取締役に就任する予定の人がいる場合は、設立時から就任するか、あとから加わるかによって、登記の回数が変わるので注意しましょう。
3. 就任する人の欠格事由
法人のほか、一定の刑に処せられた人など、欠格事由に当たる人は取締役になれません。
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まとめ
設立時の取締役は、取締役会を置かなければ1人から、置く場合は3人以上です。任期は原則2年で、公開会社でない会社は定款で10年まで伸ばせます。2年と10年の違いは、重任登記の回数、定款への記載、満了時期の管理に表れます。
定款に任期や員数を書く場合の全体像の決め方や定款の作成方法については株式会社の定款の作り方・記載事項の全項目とひな形を解説も参考にしてください。
執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム
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