定款は、会社の根本規則を定めた重要な書類で、会社設立時に必ず作成されるものです。会社設立後も定款は、様々な場面で必要となります。そのため、定款は紛失しないよう管理・保管しなければなりません。
この記事では、定款の管理・保管方法や定款が必要となる場面、万が一紛失してしまった場合にはどうしたら良いかなどを解説します。定款の管理・保管についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
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定款の管理・保管が必要な理由、保管方法
定款の管理・保管はなぜ必要なのでしょうか。ここでは、定款の作成、備置きについて定めた会社法の規定と、定款の保管方法について具体的に解説します。
作成、備置きの義務
会社法では、会社設立に際しての定款作成を義務付けています(会社法26条)。そして、作成された定款は、会社設立後、会社の本店及び支店に備え置かなければなりません(同法31条1項)。
(定款の作成)
第二十六条 株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
2 前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
(定款の備置き及び閲覧等)
第三十一条 発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)は、定款を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店及び支店)に備え置かなければならない。
引用:e-Gov法令検索
定款の保管方法
会社法では、定款を会社の本店及び支店に備え置かなければならないとするのみで、具体的な保管方法についての規定はありません。
そのため、定款の保管方法は、会社ごとに様々です。定款は、備置きの義務があるだけでなく、会社設立後も様々な手続きで必要となります。そのため、定款の原本については、紛失しないよう、会社の金庫や貸金庫などで厳重に保管することをおすすめします。
定款が必要となる場面
会社設立後、どのような場面で定款が必要となるでしょうか。ここでは、会社設立後に定款が必要となる場面について具体的に解説します。
融資、許認可などの手続き
会社が金融機関で融資を申し込む際や、行政に対して許認可申請を行う際には、ほとんどのケースで定款の提出を求められます。
その他にも、登記申請や助成金の申請などでも定款の提出が求められることがあります。
定款を提出する際は、原本をそのまま提出するのではなく、原本証明が付された写しを提出することで足りることが多いです。
原本証明を作成するには、定款をコピーし、最終ページに、「この写しは、定款の原本と相違ないことを証明する。」との文言を付して、日付や代表者名、代表者印などを記載します。
株主や債権者からの閲覧請求
会社の株主や債権者は、会社の営業時間内は、いつでも定款の閲覧請求や謄本、抄本の交付請求を行うことができます(会社法31条2項)。
会社としては、この請求に対応するため、定款をいつでも提示できるよう備えておくことが必要です。
(定款の備置き及び閲覧等)
第三十一条
2 発起人(株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めた費用を支払わなければならない。
一 定款が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧の請求
二 前号の書面の謄本又は抄本の交付の請求
三 定款が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧の請求
四 前号の電磁的記録に記録された事項を電磁的方法であって発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めたものにより提供することの請求又はその事項を記載した書面の交付の請求
引用:e-Gov法令検索
定款を紛失した場合の対応方法
定款は紛失しないよう厳重に保管しなければなりませんが、万が一紛失してしまった場合、どのような対応が考えられるでしょうか。
ここでは、既存の定款を探し出す方法と定款を変更する方法に分けて、対応方法を解説します。
既存の定款が保管されている場所に問い合わせる
会社設立時に作成した定款は、公証人による認証を受ける必要があります。認証を受けた定款は、公証役場に20年間保管されるため、期間内であれば、閲覧や謄本の請求をすることが可能です。
ただし、公証役場で保管されている定款は設立時の定款のため、設立後に定款変更を行っている場合には、公証役場で現状の定款を取得することはできません。
会社設立時の登記申請は、定款を添付して行われます。法務局では、登記申請の書類を10年間保管しているため、保管期間内であれば、法務局で登記を確認することが可能です。
ただし、登記申請が不要な定款変更を行っている場合には、法務局で現状の定款を取得することはできません。
定款が司法書士などに依頼して作成されたものであれば、データや資料などが保管されている可能性があります。
定款を変更する
定款がどうしても見つからない場合は、定款を新たに作成して、定款変更の手続きを行う方法もあります。
定款変更には、株主総会の特別決議が必要です(会社法309条2項11号)。特別決議の要件を満たせるのであれば、全面的な変更ということで新たに作成した定款を現状の定款として取り扱うことができます。
なお、公証人による認証は、会社設立時の定款につき必要となるものなので、新たに作成した定款については、公証人による認証を受ける必要はありません。
(株主総会の決議)
第三百九条
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
引用:e-Gov法令検索
まとめ
定款の管理、保管方法について解説しました。定款は、厳重に保管しなければなりませんが、万が一紛失してしまった場合でも、この記事で紹介した方法を参考に対応すれば問題はありません。
定款を適切に管理、保管して健全な会社運営を行うようにしましょう。
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