会社設立時の資本金はいくらが目安?平均額と決め方の判断材料5つ

会社設立
投稿日:2026.09.24
会社設立時の資本金はいくらが目安?平均額と決め方の判断材料5つ

会社設立時の資本金の額に法律上の下限はありません。1円でも株式会社を設立できます。実際に設立されている会社を見ると、国税庁の調査では全法人の87.5%が資本金1,000万円以下です。

ただし「いくらが正解」という金額は存在しません。金額そのものに決まりがない一方で、資本金の額によって設立時に払う定款認証手数料が変わり、1,000万円を境に消費税と法人住民税の扱いが変わり、許認可が必要な業種では財産的な要件を満たせるかどうかが変わります。決めるときに見るべきなのは「いくらにするか」よりも「どの境界を超えるか」です。

この記事では、実際の資本金の分布、1円で設立した場合に何が起きるか、そして金額を決めるときに確認しておきたい判断材料を5つ整理します。

会社設立時の資本金の平均額は?法人の87.5%が1,000万円以下

資本金の「平均額」を示した公的統計はありません。一部の大企業が平均値を大きく押し上げるため、平均を出しても実感とは離れた数字になります。実態は分布で見るほうが参考になります。


国税庁の調査による、資本金階級別の法人数は次のとおりです。


資本金の額

法人数

構成比

1,000万円以下

262万4,605社

87.5%

1,000万円超1億円以下

35万5,853社

11.9%

1億円超10億円以下

1万3,146社

0.4%

10億円超

6,076社

0.2%


1,000万円以下が87.5%、1億円以下まで含めると99.4%を占めます。株式会社に限っても、269万2,201社のうち233万5,573社が資本金1,000万円以下です。


出典:国税庁「令和6年度分 会社標本調査」(令和8年3月公表)。標本調査に基づく推計値です。

資本金は1円でも設立できる

会社法に資本金の最低額を定めた規定はありません。会社法第445条第1項は、設立や株式発行に際して株主となる者が払込み・給付をした財産の額を資本金とすると定めているだけです。


2006年(平成18年)5月1日の会社法施行前は、旧商法に株式会社1,000万円以上、有限会社300万円以上という最低資本金制度がありました。会社法の施行でこの規制は撤廃され、資本金1円での設立が恒久的に可能になっています(法務省「会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A」)。


一方で、1円にすると会社の口座に1円しかない状態から事業を始めることになります。設立時の登録免許税15万円や、当面の家賃・仕入れ・外注費は、会社の資金から支払えません。資本金の額を決めるときは、設立費用と当面の運転資金を会社側でまかなえるかを併せて確認しておくことになります。


なお資本金は設立後に増資して増やすこともできます。ただし増資には変更登記が必要で、登録免許税が増資額の0.7%(3万円未満の場合は3万円)かかります。

判断材料①:100万円と300万円を境に設立費用が変わる

定款認証の手数料は、資本金の額によって4区分に分かれています(公証人手数料令第35条。2024年12月1日施行)。


資本金の額

認証手数料

100万円未満(下記3条件をすべて満たす)

1万5,000円

100万円未満(3条件のいずれかを欠く)

3万円

100万円以上300万円未満

4万円

300万円以上

5万円


1万5,000円になる3条件は次のとおりです。


  • 定款に記載された発起人の全員が自然人であり、その数が3人以下であること
  • 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載があること
  • 取締役会を置く旨の記載がないこと


3条件のうち1つでも外れると3万円になります。発起人が4人になる場合、発起人に法人が入る場合、設立時から取締役会を置く設計にする場合が該当します。この区分は認証を受けた日ではなく、公証役場に認証を嘱託した日で判定されます。


設立登記の登録免許税は資本金の額の0.7%で、15万円に満たないときは15万円です(国税庁「登録免許税の税額表」)。資本金が約2,143万円までは15万円で変わらないため、この範囲では資本金を増やしても登録免許税は増えません。


金額別の詳しい計算は「会社設立登記費用と登録免許税(印紙代)の計算と納付手順を解説」、認証手数料の条件は「定款認証の手数料は?1.5万円になる3条件と資本金別早見表」で解説しています。

判断材料②:1,000万円を境に税金の区分が変わる

消費税:事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上の法人は、設立1期目から消費税の納税義務が免除されません(国税庁「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」)。1,000万円「超」ではなく「以上」なので、1,000万円ちょうどは課税事業者になります。ただしインボイス発行事業者に登録する場合は、資本金の額にかかわらず納税義務は免除されません。


法人住民税の均等割:資本金等の額が1,000万円以下かつ従業者数50人以下の場合、標準税率で年7万円です。1,000万円超1億円以下・50人以下になると年18万円に上がります(総務省「法人住民税」)。均等割は赤字でも課税されます。超過課税を行っている自治体もあるため、実額は所在地によって異なります。


均等割の判定は「資本金」ではなく「資本金等の額」で行われます。資本金1,000万円ちょうどに加えて資本準備金がある場合、1,000万円以下の区分から外れます。


消費税の論点は「資本金1000万円以上は損?消費税の免税との関係を解説」、設立後に毎年かかる費用は「会社設立の維持費は年間いくら?赤字でもかかる7万円」で整理しています。

判断材料③:許認可業種は財産的要件を満たせるか

許認可が必要な業種では、財産的な要件が設けられています。多くは「資本金」ではなく純資産や基準資産額(資産の総額から負債の総額を差し引いた額)の要件です。ただし設立直後の会社には決算がないため、実務上は設立時の資本金の額で判断されることになります。


業種

財産的要件

一般建設業

自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力

特定建設業

資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上

労働者派遣事業

基準資産額2,000万円以上(事業所ごと)、現金預金1,500万円以上

有料職業紹介事業

基準資産額500万円以上(事業所ごと)、現金預金150万円以上

旅行業(第3種)

基準資産額300万円以上


要件が「資本金」で定められているのは特定建設業です。ほかは純資産・基準資産額の要件のため、資本金を積めば必ず満たせるというものではありません。許認可を取る予定がある場合は、所管官庁の要件を先に確認したうえで金額を決めることになります(国土交通省「建設業許可の要件」ほか)。

判断材料④:資本金の払込みに融資は使えない

日本政策金融公庫の融資は事業資金(設備資金・運転資金)が対象で、資本金の払込みに充てる資金は対象外です。法人を設立して創業する場合、融資の対象になるのは設立登記後の法人です(日本政策金融公庫「よくあるご質問」)。


つまり資本金は自己資金で用意する必要があります。公庫の新規開業実態調査では、創業資金の調達総額1,177万円のうち自己資金は282万円で、割合は24%でした(日本政策金融公庫「創業計画Q&A」)。


なお現在の創業融資(新規開業・スタートアップ支援資金)に、自己資金の下限を定めた要件はありません。手元資金のうちどこまでを資本金に入れ、どこから運転資金として残すかという配分の問題になります。

判断材料⑤:資本金の額は登記されて誰でも見られる

資本金の額は登記事項です。登記事項証明書を取得すれば誰でも確認できるため、取引先の与信判断や金融機関の審査で参照される情報のひとつになります。


ただし、どの程度重視されるかは相手によって異なります。金額が大きいほど有利になると言い切れるものではなく、事業内容や取引の規模との釣り合いで見られる情報です。公開される情報である点だけ、前提として押さえておくとよいでしょう。


資本金の額が決まったら、定款に記載し、発起人の口座への払込みに進みます。払込みの手順と証明書の作り方は「資本金の払込方法|払込証明書の作り方と見せ金の注意点(準備中)」、設立前に決めておく項目の全体像は「会社設立前に決めること10項目(準備中)」で確認できます。条件別の費用の総額は「会社設立の費用の総額はいくら?(準備中)」の早見表にまとめています。


執筆者

執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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