現物出資で会社設立する方法と、出資額500万円の上限と注意点

会社設立
投稿日:2026.10.20
現物出資で会社設立する方法と、出資額500万円の上限と注意点

会社設立において、車や不動産などの現物を資本金の一部として現物出資することが可能です。

会社設立時に現物出資をするには、金銭以外の財産の内容と価額を定款に記載します。「500万円」は出資額の上限ではなく、定款に記載した現物出資の価額の総額が500万円を超えない場合に、裁判所が選任する検査役の調査が不要になる基準です。

500万円を超えても現物出資はできますが、その場合は、検査役の調査か、弁護士・公認会計士・税理士などの証明(不動産は鑑定評価も)が必要になり、準備する書類も増えます。車や不動産のように評価が分かれやすい財産ほど、この線引きが手続きの負担を左右します。

この記事では、現物出資の対象になる財産、500万円の線引きと3つの免除要件、設立登記までの流れと追加書類、価額が不足した場合の責任や現金出資との違いを解説します。

現物出資とは?

現物出資とは、金銭以外の財産で出資することです。例えば車、パソコンなどの機材、不動産、有価証券、売掛金などの債権が対象になります。株式会社の設立時に出資できるのは発起人になります。


現物出資をする場合は、出資する人の氏名、財産の内容、その価額、割り当てる株式の数を定款に記載しなければ効力が生じません。定款の書き方について、法務局の案内では、本文ではなく附則に定める形が示されています。


現物出資は、個人事業主が事業で使ってきた車や機材を会社に出資する「法人成り」で使われることが多い方法です。法人成りの手続き全体は法人化・法人成り手続き 個人事業の廃業届と引継ぎ方法、発起人の役割は発起人とは?役割と責任、誰にするかの決め方を解説も参考にしてください。

現物出資できる財産・できない財産

法務局の資料を参考に、主な財産の扱いを整理します。定款には、第三者が見て特定できる情報と、その価額を書きます。


財産

出資の可否

定款に書く内容・確認点

車

可

車名・年式・車台番号・登録番号などの特定情報と価額。名義変更が必要

パソコン・機材

可

型番など特定できる情報と価額

不動産

可

土地は地番と面積、建物は家屋番号・構造・床面積。登記は設立後でも可(発起人全員の同意が必要)

市場価格のある有価証券

可

価額は、法務省令の方法で算定した市場価格を超えない範囲

売掛金などの債権

可

弁済期が到来していること、帳簿で金額と債務者が確認できること

譲渡できない権利・契約上の地位

不可

会社に移せない財産は出資の対象になりません


株式会社では、労務(労働力)や信用(人脈・ノウハウなど)による出資は認められていません。譲渡できる財産として特定し、価額を示せるものだけが対象です。ローンが残っている車や所有権留保が付いた機材は、名義変更や評価の面で支障が出るため、契約先への確認が必要になります。

「500万円の上限」の正しい意味

現物出資においては「500万円」というキーワードがよく登場しますが、これは現物出資できる金額の上限ではありません。定款に記載した現物出資財産等の価額の総額が500万円を超えない場合は、検査役の調査の規定が適用されない、という基準です。500万円を超えても現物出資は可能で、次のいずれにも当たらない場合に検査役の調査が必要になります。


免除の要件

内容

補足

①総額が500万円以下

定款記載の価額の総額で判定

成立後に譲り受けることを約した財産(財産引受)も合算する

②市場価格のある有価証券

定款の価額が、法務省令の方法で算定した市場価格を超えない

免除されるのは有価証券の部分

③専門家の証明

弁護士、公認会計士、税理士などが価額の相当性を証明。不動産は不動産鑑定士の鑑定評価も必要

発起人、財産の譲渡人、設立時取締役・設立時監査役は証明できない


判定のイメージとしては、

車300万円とパソコン100万円なら総額400万円で、①に当たります。車400万円とパソコン150万円なら総額550万円で、①に当たらないため、③の証明を受けるか、検査役の調査を経ることになります。不動産を含める場合も、他の財産と合わせた総額で判定され、不動産だけで500万円以下でも、合計が500万円を超えれば①には当たりません。


検査役の調査を選ぶ場合は、公証人の認証の後、遅滞なく裁判所に検査役の選任を申し立てます。検査役の報酬は裁判所が定め、成立後の会社が支払います。

現物出資のある設立の流れと、追加で必要になる書類

現物出資がある場合の設立は、次の順で進みます。


  • ①発起人で出資する財産と価額を決め、現物出資を附則に定めた定款を作成する
  • ②公証人の認証を受ける
  • ③現金の払込みと、現物の給付をする
  • ④設立時取締役が、価額の相当性や出資の履行が完了していることなどを調査する
  • ⑤設立登記を申請する


不動産の登記や車の名義変更など、第三者に対抗するための手続きは、発起人全員の同意があれば、会社の成立後にすることもできます。


法務局の資料では、現物出資を定める場合に次の書類が示されています。


  • 財産引継書:発起人が会社あてに作成し、財産ごとに定款記載の価額と日付を記載する
  • 調査報告書:設立時取締役が作成し、価額が相当であることや給付の完了などを確認する
  • 資本金の額の計上に関する証明書:代表取締役が作成し、現金と現物の価額、資本金の増加限度額を示す
  • 免除要件③を使う場合は、専門家の証明書(不動産は不動産鑑定評価書も)


申請書に添付する書類の正式な一覧は、法務局などの最新の様式を確認してください。現金出資の部分の払込証明書は資本金の払込方法とは?払込証明書の作り方と見せ金・預け合いのリスクも解説で説明しています。

価額の不足と、誰が責任を負うかに注意

定款に記載した価額が、成立時点の実際の価値に著しく足りない場合、発起人と設立時取締役は、連帯して不足額を会社に支払う義務を負います。検査役の調査を経た場合や、注意を怠らなかったことを証明した場合は免れますが、現物出資をした発起人本人と財産の譲渡人は、この免責の対象に含まれません。免除要件③で証明をした専門家も、注意を怠らなかったことを証明できなければ、連帯して責任を負うことに注意しましょう。


価額をどのように評価するかについて、法務局は助言をしない扱いです。帳簿価額や時価など、評価の基準が複数ある財産では、税務上の扱いも変わる場合があります。個人事業主が事業用の資産を会社に出資したときの税務(譲渡所得、消費税など)は、財産の種類や状況によって異なるため、専門家に確認しましょう。

現金出資との比較と判断材料

現物出資を選ぶかどうかは、現金出資と比べたときの手続きの差を踏まえて判断します。


項目

現金のみ

現物出資あり

定款の記載

現物出資の定めは不要

財産・価額・割当株数を附則に記載

価額の調査

現物の評価は不要

500万円超は検査役の調査か専門家の証明

追加書類

払込証明書など

財産引継書、調査報告書など

手元の資金

出資した現金が会社に入る

資本金は増えるが、現金は増えない


資本金をいくらにするかは、現物の価額と現金の額で決まります。決め方の判断材料は会社設立時の資本金はいくらが目安?平均額と決め方の判断材料5つで整理しています。


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執筆者

執筆者:GVA 法人登記 編集部(GVA TECH株式会社)/ 監修:GVA 法律事務所 コーポレートチーム

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