会社の状態を示す登記簿には、代表取締役(社長)の住所が記載されています。
登記簿謄本(登記事項証明書)を見たことのある人、実際に変更の申請をしたことがある人ならご存知だと思いますが、このことを初めて知った方は「え、そうなんですか?ちょっと嫌ですね…」という反応をされることも多いです。
確かに近年、いろんなシーンでプライバシー意識の高まりを感じますよね。
そんな時流の中「社長の家が簡単にわかる」というのはにわかには信じられないという方も多いのではないでしょうか?
本記事では、なぜ会社など法人の代表者の住所が登記簿に記載されるのかの理由や今後の見通しについて解説します。
関連記事:代表取締役の住所を登記簿に記載するデメリット
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商業登記において代表取締役(社長)の住所の記載が必要な理由
「登記に代表の住所記載なんデメリットしかないのでは?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、実はいくつかの点で必要と考えられています。
①信用情報のひとつとして
取引を開始する前の与信調査の一環として代表者の住所を参考にする場合があります。住んでいるエリアを確認する程度の場合もあれば、住所から不動産登記を確認することで持ち家なのか賃貸なのか、抵当権が設定されているのかまで確認ができます。
これは住所の記載が必要な理由である反面、過度なプライバシー情報でもあり、記載に関する議論の争点ともなっています。
②登記懈怠の過料の制裁の通知先
会社において登記に記載が必要な情報に変更が合った場合、必ず変更申請をしなくてはならないことが定められています。この変更を怠ってしまうことを「登記懈怠」といい、過料(罰金のようなもの)の制裁を受ける場合があります。
この際の連絡先の一つとして代表取締役の住所が用いられる場合があります。
③訴訟など万が一の場合の連絡先として
住所の記載が必要な理由としてもっとも重要な理由がこちらと言われています。訴訟や何らかのトラブルで会社と連絡が取りにくくなった場合の連絡手段として代表の住所が使われる場合があります。自宅であれば、本人以外の誰かがいる可能性も高くなりますので、一定の効果はあると考えられます。
ただし、このような理由で住所情報が必要となるのは稀であり、そのためにすべての企業の代表住所の記載が必要なのか?と論点の一つになっています。
法務省も今後はプライバシー配慮していく方針
このように、商業登記における代表取締役の住所表示にはデメリットもあれば理由もあります。
ただし、法務省もプライバシー意識の高まりを背景に今後は配慮していく姿勢を打ち出しています。
具体的には数年後を目処に一般ユーザーが利用できるオンラインで閲覧できる登記情報サービスでは表示しないというものです。とはいえ記載することの効果もありますので、法務局で閲覧する場合は従来通りとなるようです。
また、ドメスティックバイオレンスやストーカーなどの犯罪被害者から申し出があった場合は全面的に閲覧しないといった方針も検討されています。
これにより目的外や悪意を持った代表取締役の住所情報の取得を防ぎつつ、本当に必要な人には手段を残すという運用になっていくことが期待されています。
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監修者:司法書士 小林 哲士(弁護士法人GVA法律事務所 / 東京司法書士会所属)
GVA法律事務所、司法書士。都内司法書士事務所において商業登記を含む企業法務に従事。現在は、コーポレート、ファイナンスを中心とした法務サービスをベンチャー企業に対して提供している。