100%子会社(完全子会社)とは、親会社が発行済株式の全部を持つ子会社のことです。主なメリットは、少数株主がいないため意思決定が速いこと、事業リスクを親会社から切り分けられること、グループ通算制度を選べることの3点です。
一方で、設立と維持に費用がかかるほか、親会社の資本金が5億円以上の場合は中小法人向けの軽減税率が使えないなど、設立前に確認したい点もあります。どこまでメリットになるかは、出資の形や親会社の規模によって変わります。
この記事では、100%子会社の定義、メリット5つ、設立前に確認したい注意点、100%出資にするかの判断材料、設立後の税務手続きの期限を整理します。設立の流れも手短に確認できます。
100%子会社を設立するメリットを解説 判断基準と注意点
100%子会社(完全子会社)とは? 一般の子会社との違い
会社法では、会社が他の会社の総株主の議決権の過半数を持つ場合、その会社を「子会社」と定めています(会社法第2条第3号)。親会社が発行済株式の全部を持つものが100%子会社です。
税務では「完全支配関係」という言葉を使います。国税庁は、一の者が法人の発行済株式等(自己株式を除く)の全部を直接または間接に保有する関係と説明しています。
出資の形 | 持株割合の目安 | 他の株主 | 完全支配関係 |
|---|---|---|---|
100%子会社 | 100% | いない | あり |
過半数出資の子会社 | 50%超100%未満 | いる | なし |
100%子会社を設立するメリット5つ
1. 少数株主がおらず、意思決定が速い
議決権のない株式などを発行していなければ、議決権はすべて親会社が持ちます。役員の選任や定款の変更も、他の株主と調整せず決議できます。
2. 事業リスクを親会社から切り分けられる
株主は出資額を限度に責任を負う(有限責任)ため、新規事業が失敗しても、親会社の責任は原則として出資額までです。ただし、親会社が子会社の借入を保証した場合は、その範囲で責任を負います。
3. 人事制度・許認可を分けられる
親会社と別の賃金体系や就業規則を設けられます。業種ごとの許認可を子会社の名義で取得すれば、事業を切り離して管理できます。要件は業種で異なるため、所管官庁で確認が必要です。
4. グループ通算制度を選べる
完全支配関係にある親法人と子法人は、所得と損失を通算して法人税を計算するグループ通算制度を選べます。全社が国税庁長官の承認を受ける必要があり、原則として、適用を始める事業年度の開始日の3か月前までに申請します。やむを得ない事情がない限り取りやめられない点も、確認が必要です。
5. 将来の組織再編や売却に対応しやすい
子会社の株式を譲渡すれば、事業ごとグループの外へ移せます。一部を他社や個人に譲渡して出資を受ける形にもできますが、100%でなくなると完全支配関係は終わり、税務上の取扱いも変わる場合があります。
設立前に確認したい注意点
設立と維持にかかる費用
設立登記の登録免許税は資本金の0.7%で、15万円に満たない場合は15万円です。資本金がおよそ2,143万円までは最低額の15万円になり、3,000万円なら21万円です。維持費として、子会社単体の決算・申告の費用がかかり、赤字でも法人住民税の均等割がかかります。
中小法人向けの税制が使えない場合がある
法人税の軽減税率(年800万円以下の部分が19%から15%)は、中小法人だけが対象です。国税庁の資料では、資本金5億円以上の大法人との完全支配関係がある普通法人は、自社の資本金が小さくても中小法人に該当しません。親会社の資本金が5億円以上なら、その100%子会社は軽減税率を使えません。
中小企業向けの租税特別措置も、資本金1億円を超える大規模法人が一定以上の割合(1/2以上など)で株式を持つと、中小企業者に当たらなくなります【要確認:条文・判定表での最終確認】。
100%出資にするかどうかの判断材料
判断軸ごとの違いを並べました。
判断軸 | 100%出資 | 一部を他の出資者が持つ |
|---|---|---|
意思決定 | 親会社だけで決められる | 出資者との調整が必要 |
資金調達 | 親会社が全額を負担 | 他の出資者からも受けられる |
将来の売却 | 株式の全部を譲渡する | 他の出資者との調整が要る |
税務 | 通算制度の対象になる | 完全支配関係にならない |
事業を切り出す方法には新設分割もあります。違いは「新設分割と子会社設立の違い|分社化の使い分けを解説」、拠点との違いは「支店と子会社の違い|設置費用と選び方を比較表で解説」で整理しています。これらを踏まえてご判断ください。
100%子会社の設立の流れと、設立後の税務手続きの期限
流れは、出資額や役員などの決定、定款の作成と認証、親会社による払込み、設立登記の申請、税務署などへの届出の順です。手続きは通常の株式会社の設立と同じで、違いは発起人が法人(親会社)になるため用意する書類が異なる点です。書類は「法人が発起人になる場合の必要書類 親会社の印鑑証明を解説」、全体像は「子会社設立の手続きの必要書類は?親会社側の準備も解説」をご覧ください。
手続き | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|
設立登記の申請 | 発起人が定めた日などから2週間以内【要確認】 | 法務局 |
法人設立届出書 | 設立の日以後2か月以内 | 所轄税務署 |
青色申告承認申請書 | 設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了の日のうち早い日の前日まで | 所轄税務署 |
グループ通算制度の承認申請 | 原則として、適用開始事業年度の開始日の3か月前まで【要確認:新設子会社の場合】 | 所轄税務署長経由で国税庁長官へ |
会社設立全体の流れは「株式会社設立の流れ9ステップ|登記申請の方法と費用」にまとめています。
よくある疑問
個人が100%出資する会社も100%子会社ですか?
会社法上の子会社は、会社が議決権の過半数を持つ会社です。個人が全株式を持つ会社は、通常は100%子会社と呼びません。税務では完全支配関係が成立する場合がありますが、グループ通算制度は通算親法人が前提です。
設立後に株式を一部譲渡するとどうなりますか?
100%でなくなれば完全支配関係は終わり、税務上の扱いが変わる場合があります。詳細は税理士などの専門家に確認してください。
出典
- 国税庁「法人税の申告のしかた」中小法人の軽減税率・特例の対象外となる法人(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2023/pdf/03.pdf)
- 国税庁「グループ通算制度」パンフレット(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/kaisei2020/pdf/01.pdf)
- 国税庁「グループ通算制度に関するFAQ」完全支配関係の定義(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/group_faq/03.htm)
- 国税庁「法人設立届出書」(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/1554_2.htm)
- 国税庁タックスアンサー No.5100「法人を設立したとき」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5100.htm)