会社設立を自分でやる手順と依頼した場合との費用比較

会社設立サービスの比較
投稿日:2026.10.05
会社設立を自分でやる手順と依頼した場合との費用比較

株式会社の設立は、専門家に依頼しなくても自分で手続きできます。発起人も取締役も1人で設立できるため、一人での起業でも問題ありません。かかるのは実費だけで、電子定款を使えば総額16万7,000円前後から設立できます。

ただし実際に進めると、定款の書き方と登記申請書の記載項目で手が止まりやすくなります。費用を比べるときも、実費は依頼先が変わっても同じなので、金額だけを並べても違いが見えません。差が出るのは、書類作成をどこまで自分でやるかという部分です。

この記事では、自分で進める場合の手順を9ステップで整理し、実費の内訳を電子定款・紙定款別に示したうえで、司法書士や書類作成サービスに依頼した場合の費用とどこで差がつくのかを比較します。

会社設立は自分でできる

会社設立の手続きに資格は必要ありません。発起人(出資者)も設立時取締役も自分1人という構成で設立できます。最低資本金制度が廃止され、取締役会の設置も任意になっているため、一人会社は制度上まったく問題のない選択肢です。


GVA TECHが合同会社経営者228名を対象に行った調査※では、設立手続きを自力で行った割合は71.5%でした。一方で「会社設立の申請方法がわからない」が26.3%、「定款の作成方法がわからない」が26.8%と、つまずく工程もはっきり出ています。

※GVA TECH調べ


会社設立を自分でやる手順9ステップ

発起設立(発起人が設立時発行株式のすべてを引き受ける方式)で進める場合の流れです。日数は目安で、公証役場の予約状況や法務局の混雑によって前後します。


STEP

やること

目安日数

1

商号・本店所在地・事業目的・資本金・機関設計を決める

1〜7日

2

同一商号・類似商号を法務局で確認する

1日

3

会社実印(代表者印)を作成する

3〜7日

4

定款を作成する

1〜5日

5

公証役場で定款の認証を受ける

2〜7日

6

資本金を払い込み、払込証明書を作る

1日

7

登記申請書と添付書面を作成し、製本・押印する

1〜3日

8

法務局に設立登記を申請する

1日

9

登記事項証明書を取得し、税務署・年金事務所などへ届け出る

7〜14日


期限があるのは8です。 資本金の払込日と定款認証日のうち遅いほうから2週間以内に申請しなければなりません(会社法911条1項)。4と7で時間を使うと、この期限に響きます。


登記申請書と添付書面は法務局が公式の様式と記載例を公開しており、取締役会を設置しない発起設立ならそのまま使えます(参照:法務局「商業・法人登記の申請書様式」)。

自分でやる場合にかかる費用の内訳

自分で進める場合に発生するのは実費だけです。金額を左右するのは「電子定款か紙定款か」と「資本金の額と発起人の構成」の2点です。


費目

電子定款

紙定款

定款認証手数料

1万5,000円〜5万円

1万5,000円〜5万円

定款の印紙代

なし

4万円

謄本・同一情報の提供手数料

700円前後〜

2,000円前後(1枚250円×約8枚)

登録免許税

15万円〜

15万円〜

合計(最小構成)

約16万7,000円

約20万9,000円


※合計は、資本金100万円未満・発起人が自然人3人以下・取締役会非設置の場合の目安です。会社実印の作成費用と印鑑証明書代は含みません。

定款認証手数料は資本金と発起人の構成で4区分

条件

手数料

資本金100万円未満+下記3条件をすべて満たす

1万5,000円

資本金100万円未満(3条件を満たさない)

3万円

資本金100万円以上300万円未満

4万円

資本金300万円以上

5万円


1万5,000円の区分は2024年12月1日施行の改正で新設されたもので、(1)発起人の全員が自然人で3人以下、(2)発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載がある、(3)取締役会を置く旨の記載がない、の3条件をすべて満たす場合に適用されます。一人設立や夫婦2人での設立は(1)を満たしますが、発起人に法人が入ると外れます。


定款の書き方で区分が変わる点にも注意が必要です。 「資本金の額」ではなく「設立に際して出資される財産の最低額」と記載すると、資本金の額が記載されていない扱いとなり、手数料は5万円になります。


登録免許税は15万円が下限

登録免許税は資本金の額×0.7%と15万円を比べて高いほうで、資本金が約2,143万円以下なら一律15万円です。市区町村の特定創業支援等事業の証明を登記申請時に添付すれば7万5,000円に軽減されますが、申請後に取得しても差額は戻りません。

依頼先3分類と対応範囲と費用の目安

「依頼する」といっても対応範囲は依頼先で異なります。登記申請の代理ができるのは司法書士で、それ以外の事業者は書類の作成までです。ここを混同すると費用の比較が成り立ちません。


依頼先

対応範囲

実費以外の費用の目安

司法書士

書類の作成+登記申請の代理まで

5万〜15万円【要確認】

書類作成サービス

書類の作成・購入・郵送申請のサポートまで(申請者は本人)

0円〜3万円程度

自力

すべて自分で

0円


司法書士に依頼すると登記申請の代理まで任せられ、法務局とのやり取りも含まれます。報酬は各事務所が自由に定めており、日本司法書士会連合会が報酬アンケート(2024年3月実施)の結果を公表しています。


書類作成サービスは、必要な情報を入力すると定款や登記申請書が作成されるタイプです。申請と補正対応は本人が行うぶん、費用は低めに設定されています。無料をうたうサービスでは会計ソフトの契約が価格の前提になっている場合があるため、条件の確認が必要です。

費用差はどこで生まれるのか

実費はどの依頼先を選んでも原則として同じです。差が出るのは2か所です。


1つ目は電子定款にできるかどうかです。 紙定款には印紙代4万円がかかりますが、自分で電子定款を作るにはPDF変換ソフト、マイナンバーカードとICカードリーダー、電子署名用のソフトが必要です。1回の設立のためだけに揃えると、印紙代4万円との差は大きくありません。


2つ目は書類作成にかかる時間です。 手順の4(定款作成)と7(登記申請書と添付書面の作成)は、調べながら進めると数日かかります。依頼先ごとの料金差は、この工程をどこまで自分でやるかとほぼ対応しています。

自分でやるか依頼するかの判断材料

どちらが正しいということはありません。次の材料で判断できます。


  • 費用を最小にしたいか:実費だけで済ませたいなら自力です。設立時の課題に「お金をかけたくない」を挙げた人は45.6%でした(GVA TECH 合同会社経営者228名調査)
  • 機関設計が標準的か:取締役1人・現物出資なしなら法務局の様式がそのまま使えます。取締役会の設置や現物出資があると添付書面が増えます
  • 設立日に希望があるか:設立日は登記の申請日で決まるため、逆算して書類を準備できるかが判断材料になります
  • 補正に対応できるか:書類に不備があると法務局から補正の連絡が入り、修正して出し直すことになります



関連する費用と手続きは、次の記事で解説しています。


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