法人が発起人になって株式会社を設立する場合、定款認証では、発起人となる法人(親会社)の登記事項証明書と、代表者の印鑑証明書が必要です。どちらも発行後3か月以内の原本で、法務局で取得します。
個人が発起人になる場合と違い、本人確認の書類が「個人の実印と印鑑登録証明書」から「法人の届出印と法務局の証明書」に置き換わります。さらに、親会社の事業目的と新会社の目的が重なっているか、実質的支配者は誰かといった、法人発起人ならではの確認も加わります。
この記事では、法人発起人の必要書類を個人発起人と比べた一覧、親会社の証明書の取り方と手数料、定款認証でつまずきやすい点、設立登記の段階で必要な書類を整理します。
法人が発起人になる場合の必要書類 親会社の印鑑証明を解説
法人が発起人になる場合の必要書類一覧
法人発起人の書類は、定款認証(公証役場)と設立登記(法務局)で必要なものが異なります。 親会社の証明書が必要なのは定款認証の段階です。
段階 | 個人が発起人 | 法人が発起人 |
|---|---|---|
定款認証 | 発起人の印鑑登録証明書 | 法人の登記事項証明書+代表者の印鑑証明書 |
定款認証 | 実印で押印 | 法務局に届け出た代表者印で押印 |
定款認証 | 実質的支配者の申告書 | 同左(親会社の株主までたどって申告) |
設立登記 | 発起人の決定書など(実印) | 同左(代表者印で押印) |
定款認証の窓口は、新会社の本店所在地を管轄する公証役場です。必要書類の全体像は「株式会社設立の必要書類一覧。設立ケース別の早見表つきで解説」で確認できます。
親会社の印鑑証明書と登記事項証明書の取り方
どちらも法務局で取得します。 全国どこの法務局でも請求でき、親会社の本店を管轄する法務局である必要はありません。
印鑑証明書は、印鑑カードがないと請求できません。 親会社の代表者印を法務局に届け出たときに交付されたカードです。経理や総務が保管していることが多いため、所在を先に確認しておきます。取得方法は「法人の印鑑カードと印鑑証明書の取得方法|費用も解説」で解説しています。
手数料は請求方法で変わります(令和7年4月1日改定。法務省「登記手数料について」)。
請求方法 | 印鑑証明書 | 登記事項証明書 |
|---|---|---|
窓口・郵送(書面) | 500円 | 600円 |
オンライン請求・郵送で受取 | 450円 | 520円 |
オンライン請求・窓口で受取 | 420円 | 490円 |
登記事項証明書は、代表者事項証明書・現在事項全部証明書・履歴事項全部証明書のいずれでも構いません。【要確認:認証予定の公証役場】
有効期限は発行後3か月以内です。 3か月を超えたものは使えません(日本公証人連合会「定款認証」)。目的の調整などで認証が延びると期限が切れるため、定款案が固まってから取得します。
定款認証で確認される「親会社の目的の範囲」
法人が発起人になるには、新会社の発起人になることが、親会社の目的の範囲内でなければなりません。 公証人は、新会社の目的のうち少なくとも1つが、親会社の定款の目的と同種であるかを確認します(日本公証人連合会「定款認証」Q4)。
つまずきやすいのは、親会社と別の事業を始めるために子会社をつくるケースです。
- 親会社の目的が「ソフトウェアの開発・販売」だけで、新会社の目的が「飲食店の経営」だけ → 重なりがなく、認証で指摘を受けるおそれがある
- 新会社の目的に「ソフトウェアの開発・販売」も加える → 1つ重なるため確認を通りやすい
重なりがない場合は、新会社の目的に親会社と同種の事業を加えるか、親会社の目的を変更する(変更登記が必要)といった方法が考えられます。どちらを選ぶかは事業計画によるため、公証役場に事前に相談したうえで判断してください。
実質的支配者の申告は親会社の株主までたどる
株式会社の定款認証では、実質的支配者となるべき者の申告が必要です。原則として、新会社の議決権の50%を超えて保有する個人が該当します。
法人発起人の場合、親会社自体は個人ではないため、申告の考え方が変わります。
- 親会社が上場会社(またはその子会社):親会社を個人とみなして、親会社の名称を記入します
- 親会社が非上場会社:親会社の議決権を50%超保有する個人(オーナー経営者など)までたどって申告します【要確認】
申告書の様式は日本公証人連合会のサイトで公開されています。間接保有の計算で迷う場合は、認証予定の公証役場に事前に確認してください。
設立登記の段階で必要な書類と押印
設立登記の申請では、親会社の登記事項証明書と印鑑証明書は添付不要です。 定款認証で確認済みのためです。
ただし、発起人として作成する書類には、親会社の代表者印(法務局に届け出た印鑑)で押印します。
- 発起人の決定書(本店所在地や資本金の額を定款で決めていない場合)
- 設立時取締役の選任に関する書面
- 払込みがあったことを証する書面
親会社は設立時取締役にはなれません。 会社法上、法人は取締役になれないため(会社法第331条第1項第1号)、子会社の取締役には親会社の役員や従業員など個人が就任します。取締役の印鑑証明書は、その個人のものを用意します。
資本金の払込先は、原則として発起人名義の口座です。法人発起人の場合に親会社名義の口座を使えるかは、事前に管轄の法務局で確認してください。
電子定款で認証を受ける場合、親会社の代表者が電子署名するには商業登記電子証明書が必要です。
親会社側で準備しておくこと
子会社の設立書類そのものより、親会社の社内手続きと書類の手配で日数がかかることがあります。
- 社内の意思決定:出資額や会社の規模によっては、取締役会の決議など親会社の社内手続きが必要です。定款認証で議事録の提出を求められるかは、公証役場に確認します【要確認】
- 印鑑カードと代表者印の所在:押印と証明書の取得の両方で必要です
- 親会社の登記内容が最新か:本店移転や代表者変更の登記が済んでいないと、証明書の内容と定款の記載が食い違います 親会社側の準備を含む子会社設立の全体像は「子会社設立の手続きと必要書類|親会社側の準備も解説」、設立の流れは「株式会社設立の流れ9ステップ|登記申請の方法と費用」でまとめています。