資本金1,000万円以上で株式会社を設立すると、設立1期目から消費税の課税事業者になります。1,000万円未満で設立すれば、設立1期目と2期目は原則として消費税の納税義務が免除されます。境目は「1,000万円以上か未満か」で、1,000万円ちょうどは「以上」に含まれます。
ただし、1,000万円未満にすれば必ず免税になるわけではありません。インボイス(適格請求書発行事業者)の登録をすれば資本金にかかわらず課税事業者になり、1期目の上半期の売上や給与の額でも判定されます。法人住民税の均等割も1,000万円を境に年7万円から18万円に変わります。
この記事では、1,000万円を境に変わる4項目、免税にならない4つのケース、設立時の実費への影響、金額を決めるときの判断材料を整理します。
資本金1000万円で設立は損?消費税が免税にならない条件
資本金1,000万円を境に変わるのは4項目
資本金の額で扱いが変わるのは、消費税・法人住民税の均等割・定款認証手数料・登録免許税の4つです。設立時の一時費用と、設立後に毎年かかる費用の両方が動きます。
項目 | 1,000万円未満 | 1,000万円以上 |
|---|---|---|
設立1期目・2期目の消費税 | 原則として免税 | 課税事業者 |
法人住民税の均等割(年) | 7万円 | 18万円 |
定款認証の手数料 | 1万5,000円〜4万円 | 5万円 |
設立登記の登録免許税 | 15万円 | 15万円(変わらない) |
均等割は標準税率、従業者50人以下の場合の金額です。会社法に資本金の上限額の定めはなく、下限も1円なので、1,000万円以上にすること自体に制限はありません。
1,000万円以上だと設立1期目から課税事業者になる
消費税は、基準期間(法人では前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下であれば納税義務が免除されます。設立1期目と2期目には前々事業年度が存在しないため、原則として免税事業者になります。
ただし、その事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上の法人は「新設法人」として扱われ、この免除が適用されません(消費税法第12条の2)。判定するのは期首時点の資本金額です。
つまずきやすいのは1期目の途中で増資した場合です。1,000万円未満で設立した後に増資して1,000万円以上になると、1期目の期首は未満なので免税、2期目の期首は以上なので課税になります(国税庁の例示)。増資自体にも、増加した資本金の額の0.7%(3万円未満は3万円)の登録免許税がかかります。
新設法人に該当する場合は「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を提出しますが、法人設立届出書にその旨と所定の事項を記載して提出すれば、届出があったものとして扱われます。
1,000万円未満でも免税にならない4つのケース
資本金を1,000万円未満にしても、次のいずれかに当てはまれば納税義務は免除されません。
ケース | 内容 |
|---|---|
インボイスの登録 | 登録を受けると、課税売上高にかかわらず納税義務は免除されない |
特定期間の売上・給与 | 1期目の開始から6か月間の課税売上高が1,000万円超だと2期目から課税(給与等支払額での判定も可) |
特定新規設立法人 | 株式等の50%超を保有する者などがいて、その判定対象者の課税売上高が5億円超の場合 |
課税事業者の選択 | 「消費税課税事業者選択届出書」を提出した場合。設備投資や輸出で還付を受けるために選ぶ |
取引先から適格請求書の交付を求められる事業では登録を選ぶ場面が多く、資本金を1,000万円未満にしても申告義務が生じます。免税を前提に資本金を決める前に、登録の必要性を確認しておくと判断がぶれません。
特定新規設立法人は、既存の会社が子会社をつくるときに該当しやすい区分です。令和6年10月1日以後に開始する課税期間からは、課税売上高5億円超に加え、国外分を含む収入金額などの合計額が50億円超の場合も対象になりました。
均等割は1,000万円を境に年7万円から18万円になる
法人住民税の均等割は、資本金等の額と従業者数で税額が決まり、赤字でもかかります。標準税率は次のとおりです(従業者50人以下の場合)。
資本金等の額 | 道府県民税 | 市町村民税 | 合計 |
|---|---|---|---|
1,000万円以下 | 2万円 | 5万円 | 7万円 |
1,000万円超1億円以下 | 5万円 | 13万円 | 18万円 |
差額は年11万円で、設立時の手数料の差より影響が大きくなります。毎年かかる費用の全体像は「法人化の費用と会社設立後の維持費は?赤字でもかかる年7万円(準備中)」で解説しています。
定款認証は5万円区分。登録免許税は変わらない
設立時の実費のうち資本金の額で動くのは定款認証の手数料です。資本金の額等が300万円以上なら5万円で、1,000万円もこの区分です。100万円未満で発起人が自然人3人以下などの条件を満たす場合の1万5,000円との差は3万5,000円です(詳しくは「定款認証の手数料|1.5万円になる3条件と資本金別早見表」(準備中))。
設立登記の登録免許税は資本金の額の0.7%で、15万円に満たないときは15万円です。1,000万円の0.7%は7万円なので、税額は15万円のまま変わりません。0.7%が15万円を超えるのは資本金がおよそ2,143万円からです(会社設立の登録免許税はいくら?計算方法と納付の手順(準備中))。
資本金の額を決めるときの判断材料
資本金に上限はないため、1,000万円以上にするかは負担の増加と必要性を並べて判断することになります。
- 許認可の要件:業種によって自己資本や基準資産額の要件がある(建設業、旅行業、労働者派遣事業など)
- 当初の運転資金:売上が入るまでの支払いを資本金でまかなうか、代表者からの借入とするか
- 取引先や金融機関からの見え方:登記簿と定款に記載され、誰でも見られる
- 消費税と均等割の負担:1期目からの課税と、年11万円の均等割の差
- 次の境目は1億円:法人税の軽減税率や外形標準課税など、中小企業向けの扱いは資本金1億円で分かれる
決め方は「資本金はいくらが目安?平均額と決め方の判断材料5つ(準備中)」、設立費用の総額と内訳は「会社設立の費用の総額はいくら?かかる費用の内訳早見表つき(準備中)」で確認できます。
出典
- 国税庁タックスアンサーNo.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例(令和7年4月1日現在法令等)
- 国税庁タックスアンサーNo.6501 納税義務の免除(同)
- 国税庁タックスアンサーNo.7191 登録免許税の税額表(令和8年4月1日現在法令等)
- 総務省法人住民税(均等割の標準税率)
- 日本公証人連合会会社の定款手数料の改定(令和6年12月1日施行)